[小論文]今からできる「はじめの一歩」④――問題解決スキル

その1、その2、その3の続きです。



六つの問題解決スキル

入試では、具体的な解決策を求める小論文が出題されることがあります。限られた試験時間の中で社会問題などの解決策を導き出すのは簡単ではありません。こうしたときに役に立つ六つの問題解決スキルを紹介します。

六つの問題解決スキル①――ブレーンストーミングとKJ法

問題を解決するうえで重要なのが、できるだけたくさんのアイデアを出し(ブレーンストーミング)、それらを評価してベストなものを選択すること(KJ法)です。
解決策のアイデアを出すときには一つのアイデアで満足せずたくさんのアイデアを出すことを目標にしましょう。また出てきたアイデアはいくつかのグループにまとめると評価しやすくなります。

六つの問題解決スキル②――ゼロベース思考

目的を達成する際の阻害要因をいったんゼロにして解決策を考える方法がゼロベース思考です。何か障害があって問題が解決しないのなら、その障害がなくなれば問題は解決するはずです。「もしその障害がなかったら……」と考えて仮説を立てることによって問題解決への道が切り開かれる可能性が生まれます。

六つの問題解決スキル③――バックキャスティング

入試小論文では、現代社会が抱える問題だけでなく時には未来の社会について考えることも求められます。未来のことを考える際には、あるべき未来の姿を想像し、それを実現するためにはどうすればよいかを考えることがポイントです。こういう考え方をバックキャスティングといいます。
バックキャスティングを用いることで目標指向的な思考ができ、問題を解決しやすくなります。ただし、あるべき未来への道のりは現実的でなければなりません。理想的な未来と現実的なプロセスの両立を意識することが大切です。

六つの問題解決スキル④――弁証法的思考

問題解決系の小論文ではさまざまな障害をクリアするための解決策が求められます。せっかく考えたアイデアが壁にぶつかったからといってあきらめてはいけません。一見すると相反する状況や意見も、その矛盾や対立を乗り越えられることがあります。
対立する二つの意見・考えを同時に満たす解を考えると、矛盾を乗り越えることができます。このような考え方を弁証法的思考といいます。
弁証法的に考える際には、対立する意見・考えのどちらか一方にのみ有利な解決策にしたり、両者の間をとって妥協したりしてはいけません。折り合いをつけることではなく、矛盾や対立を解消することが目的であることを忘れないようにしましょう。

六つの問題解決スキル⑤――アイデアの加減乗除

複数のアイデアを組み合わせることで新しいアイデアを生み出すことができます。

アイデアの組み合わせ
アイデアの+(足し算)……二つのアイデアを統合する
例:携帯デバイス+健康管理=ヘルスケアアプリ

アイデアのー(引き算)
……一つの特徴に特化する
例:メガネーレンズの度数=伊達メガネ

アイデアの×(かけ算)
……別のものに転用・応用する
例:空のペットボトル×筋トレ=水を入れてダンベルとして使用

アイデアの÷(わり算)
……文脈・観点を変える
例:プリクラ÷芸術史=反写実表現による美の追求

六つの問題解決スキル⑥――緊急度・重要度マトリックス

問題解決のために必要ならば、複数のアイデアや解決策を提示することもできます。かといて思いついたアイデアをなんでも盛り込めばよいというわけではありません。複数のアイデアの優劣を評価することが必要になります。
その評価軸として活用できるのが緊急度・重要度マトリックスです。緊急度(すぐにできるか)と重要度(問題の本質的解決につながるか)という二つの軸でアイデアを評価する方法です。
緊急度と重要度で解決策を評価すると、次の四つのパターンが出てきます。

緊急度・重要度マトリックス
緊急度高・重要度高……すぐに行うべき解決策です。

緊急度低・重要度低
……実用性が低く実施すべき策ではありません。

緊急度高・重要度低
……すぐ取り掛かれますが、その場しのぎの策でしかありません。

緊急度低・重要度高
……問題を根本的に解決できますが、実現には時間がかかります

すぐに行える本質的な解決策がない場合には、まずは緊急度高・重要度低のアイデアを実施して当面の間をしのぎ、その間に準備を進めて緊急度低・重要度高のアイデアを実現させるという方法が考えられます。

こうした問題解決スキルを活用すれば、受験生が苦手とする問題解決系小論文にも対応できるようになります。問題解決スキルを身につけて最強の小論文受験生になってください!

おわりに――『身近なテーマで考える力をやしなう 小論文 はじめの一歩』

いかがでしたか? 焦って書くのではなくしっかり考えてから書くようにしてくださいね。
本記事は根岸の著書『身近なテーマで考える力をやしなう 小論文 はじめの一歩』の第4章をもとにしています。より詳しく学びたい人は同書で勉強してください。

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