「近現代文学史ってちょくちょく出題されているけれど,出題数はそんなに多くないし,読解問題よりも配点は低いはずだし,あとで勉強すれば良いんじゃ…」
「近現代文学史は気合いで暗記すれば良い」

そんなイメージを抱かれがちな近現代文学史。
「覚えるだけ」と思ってもなかなか覚えられない近現代文学史。

苦手意識を持ちがちな近現代文学史にフォーカスしたシリーズ「大学受験の近現代文学史を攻略する」第三回。


前回は「写実主義と擬古典主義①」と題して、硯友社の登場までを概観してみました。


今回は、その続きです。

 

浪漫主義


(写真:森鴎外旧宅)

明治十年代の文学界といえば、


こちらの記事でも触れたように「政治小説」や「翻訳小説」といった西洋思想の影響を大きく受けている文学が流行する一方で、江戸時代から続く戯作文学も根強く残っている状況でした。

そんな中、前回見たように坪内逍遥の登場によって写実主義が登場、文学が「知識人の文学」へと押し上げ、二葉亭四迷がそのあとに続きます。
ここまでは前回見た話。

二葉亭四迷によって日本にもたらされたといっても過言ではないリアリズム小説。日本に近代文学がもたらされたといえるでしょう。

そして時期をほぼ同じくして、日本文学界にもう一つ、西洋近代文学の流れがもたらされます。浪漫主義です。

ドイツ留学から帰国した森鴎外は、落合直文らを集めて「新声社」という文学グループを結成。明治二十二年には、共同訳詩集於母おもかげを発表。そこで得た資金をもとに創刊されたのが機関誌「しがらみ草紙」でした。「しがらみ草紙」は主に評論が中心の雑誌であり、のちの明治二十四年からは「早稲田文学」の坪内逍遥と近現代文学史上最大の文学論争とも呼ばれる「没理想論争」を展開していきます。

没理想論争
明治二十四年から二十五年にかけて「早稲田文学」と「しがらみ草紙」を舞台に展開された坪内逍遥(「早稲田文学」)と森鴎外(「しがらみ草紙」)の間の文学論争。
理想や主観といったものを直接表現せずに、事実を客観的に描く没理想を主張した坪内逍遥に対し、森鴎外が理想の重要性を主張した。

森鴎外は明治二十三年に『舞姫』を発表するなどしますが、浪漫主義自体は主に評論や詩などの分野で花開くことになります。
こうして、日本の文学界の主流が西洋近代に基づいた文学へと移り変わっていく……。

 

硯友社


(写真:「金色夜叉」の貫一とお宮の像)

ところが、事態はそう単純ではありません。

忘れてはならないのが、明治十八年の二月に結成された日本初の文学結社、硯友社けんゆうしゃの存在です。

硯友社は尾崎紅葉、山田美妙らを中心として結成された文学結社。彼らは大学予備門に通うエリートたちだったにも関わらず、西洋近代よりもむしろ江戸時代の戯作文学の流れを受け継ぎます。機関誌「らくぶん」を発行するなど精力的に活動していた彼らは、間もなく山田美妙が脱会し、徐々に尾崎紅葉中心の文学結社へとなっていきます。

彼らは坪内逍遥の『小説神髄』の影響も受けながら、もともとの戯作文学的な傾向に写実主義的文学を合わせた形で発展していきます。そして尾崎紅葉が『にん比丘尼びくに色懺いろざん』を発表する明治二十二年ごろから、国粋主義の高まりもあって徐々に文壇の中心へとその地位を高めていくことになるのです。この傾向は日清戦争の前後まで続いていくことになります。

硯友社

二葉亭四迷   『浮雲』(明治二〇年)――「だ」体
山田美妙       『ちょう(明治二二年)――「です」体
尾崎紅葉       『多情多恨』(明治二九年)――「である」体

 

言文一致運動

二葉亭四迷が『浮雲』の中で実践して見せた「言文一致」体。当時は話し言葉と書き言葉の間にあった乖離を埋め、普段の話し言葉を用いて文章を描くことによって写実性を高めていこうとする文体改革運動が「言文一致運動」です。

「運動」と呼ばれるくらいですし、二葉亭四迷が試してみただけでは終わりません。明治二十二年には山田美妙が、明治二十九年に尾崎紅葉が、それぞれ作品内での言文一致を試み、明治四十年代以降はこの言文一致が小説の文体として確立されることになります。

 

言文一致運動

二葉亭四迷   『浮雲』(明治二〇年)――「だ」体
山田美妙       『ちょう(明治二二年)――「です」体
尾崎紅葉       『多情多恨』(明治二九年)――「である」体

 

尾崎紅葉と幸田露伴――「紅露の時代」

尾崎紅葉と同時代に活躍したのが幸田露伴。二人が主役であるかのように活躍したこの時代(主に明治二〇年代)は「紅露の時代」とも呼ばれます。
*「紅」は尾崎紅葉、「露」は幸田露伴。

女性描写の写実的な作風を特徴とする尾崎紅葉に対して、『五重塔』などで知られる幸田露伴は、男性を描く理想主義的な作風として一世を風靡することとなっていきました。

紅露の時代

尾崎紅葉こうよう     『二人比丘尼色懺悔』『じょうこん』『こんじきしゃ
幸田露伴      『ふうりゅうぶつ』『一口剣いっこうけん』『五重の塔』

次回は硯友社の流れを引く人々に焦点を当てたいと思います。


「大学受験の近現代文学史を攻略する」記事一覧
第1回 明治初期の文学
第2回 写実主義と擬古典主義①
第3回 写実主義と議古典主義②

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