[現代文]大学受験の近現代文学史を攻略する①――明治初期の文学

「近現代文学史ってちょくちょく出題されているけれど,出題数はそんなに多くないし,読解問題よりも配点は低いはずだし,あとで勉強すれば良いんじゃ…」
「近現代文学史は気合いで暗記すれば良い」

そんなイメージを抱かれがちな近現代文学史。
「覚えるだけ」と思ってもなかなか覚えられない近現代文学史。

苦手意識を持ちがちな近現代文学史にフォーカスした新シリーズ「大学受験の近現代文学史を攻略する」第一回。


近現代文学史の学習指針――用語→軸づくり→知識の補充→演習

近現代文学史の学習指針について、以前このような内容の記事を更新したところ、


思わぬ反響をいただきましたので、今回から「大学受験の近現代文学史を攻略する」シリーズと題して、近現代文学史の学習法とちょっとした解説を書いていきたいと思います。

こちらの記事の中で、近現代文学史の勉強法として

近現代文学史の学習ポイント
① 用語をおさえる
② 軸を作る
③ 細かい知識を付け加える
④ 問題演習

という4つを紹介しました。
そして、この4つの中でも近現代文学史を学習していく際に最も意識しておきたいのが②の「軸を作る」という部分です。

まずは流れをとらえながら大きな軸を作った上で、徐々に細かい知識を付け足していく。
そのときのポイントとして「文学は社会と密接に関わっている」という意識、つまり当時の社会や風潮との関係を意識しつつ、流れまとまり対立関係に注目して軸をつくっていくことが重要です。

まずは大きな流れと、最初におさえておきたい代表的な作家と作品を数点ずつ見ていきたいと思います。

明治初期の文学①――啓蒙思想と戯作文学


まずは明治初期の文学を見ていきましょう。

明治初期の日本といえば、倒幕~明治新政府樹立の流れの中で近代日本の幕開けの時代を迎えた時代だといえるでしょう。
そんな時代の中で、西洋近代への憧れ、西洋に追いつこうとする社会を反映した「啓蒙思想」が現れるのは当然の流れかもしれません。
こうして、近現代文学史の流れの中に福沢諭吉の『学問のすゝめ」『文明論之概略』、中村正直『西国立志編』に代表される啓蒙思想が登場します。

明治初期の文学①――啓蒙思想

福沢諭吉  『学問のすゝめ』『文明論ぶんめいろんがいりゃく
中村正直まさなお 『西国立さいごくりっへん』(スマイルズの『自助論』の翻訳)
明六社    機関誌「明六雑誌」
明六社――アメリカから帰国した森有礼の発起で明治六年に発足した、啓蒙思想団体。森有礼(社長)、福沢諭吉、西周、西村茂樹、津田真道、中村正直ら十名。開化期に指導的役割を果たした。

とはいえ、時代(政治体制、社会)が変わったからといって、それまでの文化が一瞬にして消え去るわけではありません。
※もちろん、それまでの文化が一瞬にして失われてしまった例もたくさんありますが。

江戸時代までの勧善懲悪思想に基づく「戯作文学」も引き続き庶民たちの間で親しまれていたのです。
これら戯作文学は、江戸時代末期までの伝統的な手法で文明開化に騒ぎ立つ明治時代の社会、風俗を描いていきました。
仮名垣魯文の「安愚楽鍋」「西洋同中膝栗毛」あたりは最初におさえておきたいところです。

明治初期の文学②――戯作文学

仮名かながきぶん 『西洋道中膝栗毛』『安愚楽あぐらなべ

 

[おまけ]明治初期の文学①――文学から見る文明開化

戯作文学者たちは幕末~明治初期の風俗をどう見ていたのでしょうか。成島柳北の『柳橋新誌』を見てみましょう。

一書生学校に入り頗る英語に長ず、一夕柳光亭上に飲む。妓と言ふ、半ば英語を用ふ。妓曰く、郎君独り英語を識る、奴輩解せず、是れ甚だ趣無し。願はくは妓に教ふるに英語を以てせよ。書生意甚だ得て曰く、卿才子卿才子、若し是を学べば数月必ず大家と為らん。僕英語に於いて通ぜざる所無し、知らず、卿学ぶ所何を先にせんと欲するや。妓曰ふ、同輩相呼ぶ、常の語を用ふる、風致無きに似たり、願くは郎君先ず教ふるに奴輩の名を以てせよ。書生曰く、妙々。妓阿竹を問ふ、曰く蛮蒲バンブー、阿梅を問ふ、曰く波林プロム
(中略)
応答響くが如し。妓又美佐吉を問ふ、書生首を伏して百考得ず、又阿茶羅を問ふ、書生益々困す。汗を其の額に拭ふて曰く、今者僕辞書を携へず、近日将に英語箋一部を懐にし来りて、以て卿等百般の問に答へんとすと。

漢文調で書かれた文章なので、なかなか読みづらさを感じるかもしれませんがぜひ挑戦してみてもらいたいですね。
描かれている内容をざっくりまとめると、

学校で英語を学んでいるという書生が妓楼で飲んでいる最中、ところどころ英語を交えながら話をするので、芸妓が「あなた一人が英語に長けていて、私たちには一切わからない。おもしろくない。私にも英語を教えてほしい」と頼む。

そんなことを頼まれた書生は「英語に関して知らないものなどない。何からはじめようかね」と、意気揚々と応じる。
そこで、芸妓は自分たちの名前を英語にしてくれと持ち掛けた。

阿竹→バンブー【bamboo】
阿梅→プロム【plum】
(中略)
美佐吉→??
阿茶羅→???

最初は「響くが如」く順調に英訳していた書生も、「美佐吉」「阿茶羅」を問われると訳すことができなくなる。
そして、「今日は辞書を持ってきていないから、今度は辞書を持ってきて質問に全部答えてあげよう」という言い訳をする。

このように、相手を持ち上げた挙句に恥をかかせる芸妓のしたたかな姿を通して、当時の風俗を皮肉っているわけです。

 

明治初期の文学②――政治小説と翻訳小説


こうした思想は、矢野龍渓の『経国美談』などの政治小説や、川島忠之助の「八十日間世界一周」などの翻訳小説に引き継がれていくことになり、とりわけ政治小説は、自由民権運動の宣伝小説としてその力を発揮するようになります。

 

明治初期の文学③――政治小説

→自由民権運動の政治思想宣伝小説の意味合いを持つ。

矢野りゅうけい  『経国けいこくだん
東海さん      『じん之奇のきぐう
末広てっちょう  『せっちゅうばい

 

明治初期の文学④――翻訳小説

 →西洋事情を伝え、西洋崇拝熱を高めるのに役立った。

織田おだ純一郎    『柳春りゅうしゅん
川島忠之助    『八十日間世界一周』

そしてここから坪内逍遥の「写実主義」へとつながっていくのですが…それはまた次回ということで。

終わりに――第一回目のまとめと次回予告、おすすめの書籍

繰り返しますが、近現代文学史の学習を進めていくうえで大切なのが、当時の社会や風潮との関係を意識しながら流れまとまり対立関係に注目すること。
今回は「社会の風潮との関係」「流れ」に注目して明治初期の文学史を確認してみました。

次回は流れと対立に注目しながら写実主義と擬古典主義小説に焦点を当ててみたいと思います。乞うご期待。

さて、冒頭でも引用したこちらの記事。

この中でも紹介したように、「大学受験」で得点するという観点で考えるなら、少しでもインプットをした後には問題演習をしていきたいところです。
「全範囲を終えてから…」と考えるのではなく、「明治初期」「自然主義と反自然主義」……など、勉強した範囲を確認していきましょう。

こちらの「SPEED攻略10日間国語文学史 [ Z会出版編集部 ]」あたりで演習を積んでいくのが入り口としては良いのではないでしょうか。

学んだ範囲をざっと演習しながら確認し、

などの便覧を活用しながら、少しずつ細かい知識を付け加えていきたいところです。


「大学受験の近現代文学史を攻略する」記事一覧
第1回 明治初期の文学
第2回 写実主義と擬古典主義①
第3回 写実主義と議古典主義②
第4回 浪漫主義から自然主義文学へ――明治30年代の文学

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