
こんにちは、羽場です。
今回は第2章の第1節の短文演習、福田恆存『私の幸福論』の本文を読む際に押さえておきたいポイントを解説します。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
今回の記事は問題を解いた上で、本書の解説と合わせてご覧いただくとより効果的です。
目次
現代文の問題を解く大前提
今回の文章を解説していく前に、現代文の文章読解時に意識しておきたいポイントを紹介しておきます。
- 原則、文章全体を読んでから問題を解く
- 「速く読む」より「速く解く」
もう少しだけ詳しく紹介します。
文章全体を読んでから問題を解く
時折「設問を先に見て、関係ありそうなところだけ読む」という解き方をする受験生を見かけることがあります。
この解き方は試験本番にどうしても時間がないときならまだしも、普段の現代文学習を行う際には避けるべきでしょう。
論の展開を意識しながら文章の全体像をつかみ、その上で問題に解答していきましょう。
「速く読む」より「速く解く」
毎年のように受ける相談に「文章を読むのが遅くて……」「時間が足りなくて……」というものがあります。
もちろん、試験本番では制限時間の中で解く必要がありますが、実は大学入試の現代文ではそこまで「速く読む」ことが要求されているわけではありません。
演習形式の授業などで受験生の様子を見ていると、ページをめくる(本文と設問を行ったり来たりする)回数が非常に多いと感じることもあります。
文章を丁寧に捉えた上で、設問に答える速度を上げる練習をする
ではどうすれば良いのでしょう。
簡単に言えば、「文章を丁寧に捉えた上で、設問に答える速度を上げる練習をする」ことです。
普段の現代文学習からこうしたことを意識して訓練を積んでください。
それでは、今回の文章を確認していきましょう。
本文を読み進める
今回の出典は福田恆存(1912―1994)の『私の幸福論』です。
第1の意味段落(①段落):知識と教養
まず、第①段落です。
イギリスの詩人エリオットの言葉を参照し、「文化」のことを「生きかたである」と定義しています。
したがって、第1文にチェックを入れて「エリオットは文化を生きかただと定義しているんだなぁ」と思いながら次の文に進みます。
「文化とは生きかたである」……?
漠然とし過ぎていていまいち意味がつかめないのではないでしょうか。
このような場合、続く部分を通してその内容を理解していけるのではないかと期待しながら読み進めます。
よく「抽象と具体の関係」と呼ばれるアレですね。
端的に表現された「抽象」部分は、詳しく「具体化」されることが多い。
→第2章[第6節]
具体化された部分をもとに理解する
実際、第2〜4文を読んでみると「生きかた」と「文化(的知識)」の関係が示されていますね。
図式化してみるとこんな感じです。
「生きかたの積み重ねの上で文化史的知識が成り立つ、それをエリオットは『文化とは生きかたである』と定義している」と考えていきます。
このようにして具体的に説明されてきたことが、第5文で「私たちの〜生きてくるのです」の形でまとめられています。
※書籍では「教養によって培われた文化」となっていますが、「文化によって培われた教養」の方が適切です。
ちなみに、第6文「そのときにだけ……」からこの段落の最終文までは、この第5文を詳しく説明(具体化)しています。
この「具体と抽象の関係」を把握しながら読み進めていくことが長い文章を読解する際には鍵を握ると思っておきましょう。
第2の意味段落(②③段落):うまを合わせていく方法
続いて第②段落。
まずは2文目の「その『生きかた』とは〜」以降に注目しましょう。
疑問文です。
今回の疑問文に対する答えは直後の部分傍線部Aに書かれていますね。
つまり、「生きかた」=「うまを合わせていく方法」です。
個人が生まれる前から「共同体」において受け継がれてきたものだということですね。
最終段落の読解
そして最終段落。
前段落までで述べていたことが最終文につながっていきます。
この読解結果を踏まえて問題を解いていきます。
- 原則、文章全体を読んでから問題を解く
- 「速く読む」より「速く解く」
- 定義文に注目する
- 具体と抽象の関係を意識する(→第2章[第6節])
- 疑問文が出てきたら答えを探しながら読む
『スマートステップ 現代文』書籍情報
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第2章「読解スキル編」補講 | |
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