こんにちは、羽場です。
もはや日常とは切り離せない存在となっているSNS。
前回の記事では、受験生がSNSを情報収集ツールとして活用していく方法について紹介しました。
コミュニケーションツールとしてのSNSは非常に便利ですし、受験生が活用する方法もありますが、その一方で落とし穴も存在します。
今回は、受験生がSNSを活用する際に気を付けておきたい「落とし穴」とその対処法を紹介していきます。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
目次
SNSの落とし穴
前回の記事の中で、SNSの落とし穴として
- 得られる情報は玉石混交である
- 承認欲求を満たすための投稿になりがちである
- 情報が偏りがちである
- 時間の浪費に繋がりかねない
という点を紹介しました。
今回は、その中でもSNSや検索に深く関わる「③情報が偏りがちである」という点を掘り下げてみたいと思います。
フィルターバブルとエコーチェンバー現象
SNSをはじめとしたインターネットの利用に関してよく指摘されるのがこの「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」と呼ばれる現象です。
なお、この2つの現象については総務省の「令和元年版 情報通信白書」第1章の第4節に詳しく説明されています。
少し古い資料ではありますが、興味がある人はこちらもご参照ください。
フィルターバブル
フィルターバブルについて説明する前に、少し実験してみましょう。
- どんなキーワードでも良いのでGoogleなどの検索エンジンで検索をしてみてください。
- 次に、シークレットモード(プライベートモード)で同じ検索エンジンを開き、先ほどと同じキーワードを検索してみましょう。
- 検索した2つの画面を見比べてみてください。
検索結果(順位など)が変わったという人はいませんか?
「最適な」検索結果がもたらすフィルターバブル
これは、アルゴリズムによってユーザーが見たいであろう情報が優先的に表示され、見たくないであろう情報は隠される結果、その人に「最適な」検索結果を表示するような仕組みになっていることによります。
フィルターバブルが引き起こす3つの問題
フィルターバブルにはユーザーと企業(広告主など)の双方にメリットがある一方で、大きな問題点があります。
先ほど紹介した総務省の「令和元年版 情報通信白書」では、フィルターバブルによって引き起こされる問題点が3つ指摘されていました。
- ひとりずつ孤立する
- フィルターバブルは目に見えない
- フィルターバブルの内側にいることをユーザー自身が選んだわけではない
フィルターバブルの中にいるのは自分だけなので、他の人と見ている情報が異なります。
しかも、なぜそのような検索結果が表示されているかはわかりません。
さらには、そうした「フィルター」は自分の知らない間に適用されています。
フィルターバブルによって自分の関心とは異なる情報に触れにくくなるので、他の意見が存在することすら気づかないという事態に陥りかねない
のです。
フィルターバブルへの対処法
では、このフィルターバブルに対して、私たちはどう向き合っていくべきなのでしょうか。
ここでは3つ挙げておきましょう。
- フィルターバブルを常に意識する
- プライベートブラウズの活用
- インターネット以外の情報ソースも参照する
少し詳しく解説します。
①フィルターバブルを常に意識する
「精神論か」と思うかもしれませんが、最も重要です。
しかしながら、その繰り返しによって気づかぬうちに手にする情報が偏っているという状態に陥りがちです。
常にフィルターバブルを意識しておくことで、他の情報にも触れてみる機会を作ることができるかもしれません。
②プライベートブラウズの活用
常にというわけではありませんが、フィルターバブルによる情報の偏りを防ぐためには時折プライベートブラウズを活用して検索・閲覧してみると良いでしょう。
※プライベートブラウズで代表的なのはGoogle Chromeの「シークレットモード」、Safariの「プライベートブラウズモード」などが挙げられます。
したがって、何かを検索したり閲覧したりする際にフィルターバブルの外側にいることができます。
③インターネット以外の情報ソースも参照する
インターネットとフィルターバブルは切っても切れない関係にあるので、フィルターバブルの外側に出たいときは書籍や雑誌、新聞など、インターネット以外の情報に触れることも重要です。
ただし、これら「インターネット以外の情報」についても情報の偏りがないとも限らないので、複数の資料をあたってみることも忘れずに。
エコーチェンバー現象
TwitterやInstagramなどのSNSを使っている人は、自分がフォローしている人やフォロワーを思い出してみてください。
どのような人がそこに集まっていますか?
どのような基準で自分のTL(タイムライン)を作り上げているでしょうか。
おそらく、そこには(多少のしがらみはあるにせよ)自分が興味関心を持つジャンルのユーザーが集っていることが多いでしょう。
興味関心の似た人が集うことで起こりやすい「エコーチェンバー現象」
当然、見ていて不快感を覚えたり、自分とは意見の合わなそうなユーザーはフォローを外したり、ミュートあるいはブロックしたりするということもあり得ます。
これは悪いことではないどころか、適度に換気することは重要なことかもしれません。
SNSをやることは義務ではないですからね。
エコーチェンバー現象の問題点
エコーチェンバー現象の問題点は、多くの人が自分と同じ意見を持っていると感じることで、「その意見が『正しい』ものであり、それ以外は間違っている」と信じ込みがちだということです。
この状況に陥ってしまうと、反対意見に接した際にも客観的な視点が持てなくなってしまいかねません。
実例を挙げるまでもないかもしれません。
この状況は至る所で見られます。
エコーチェンバー現象への対処法
エコーチェンバー現象に対して、どのような対策をするべきでしょうか。
それは、一言で言えば「ネットリテラシー」「メディアリテラシー」を高める努力をすることです。
- 自分の意見を客観視する努力をする
- 情報の発信元を確認する
- 一次情報に当たる
こちらも解説しましょう。
①自分の意見を客観視する努力をする
自分の意見を客観視することは難しいものですが、できる限り客観視・相対視する努力はし続けましょう。
一つの情報に接したら同じテーマを論じている別の媒体を確認してみるなど、普段から多様な意見に接することを意識しておくと良いかもしれません。
②情報の発信元を確認する
通常「誰が言うかよりも何を言うか」が大事だというのは間違いありません。
ただ、インターネット上では「誰が言うか」も見逃せない部分ではあります。
もちろん匿名の情報提供者からも有益な情報を得られることはありますが、やはりある程度信頼度の高い情報源から得られる情報の方を優先したいところです。
TLDを確認する
たとえば、情報の出所となっている媒体のドメインに注目してみるのは一つの手段でしょう。
この部分を「トップレベルドメイン(TLD)」と呼びます。
TLDの中には、取得できる団体が限られているものが存在しており、中でも次のものは信憑性が高い発信元だと考えて良いのではないかと思います。
- .go.jp:政府機関、各省庁間軸研究所、独立行政法人など
- .lg.jp:地方公共団体など
- .ac.jp:高等教育機関、学術研究機関(大学、職業訓練校、高専など)
- .ed.jp:初等中等教育機関(小学校、中学校、高校、専修学校など)
もちろん、他のTLDを使用しているWebページでも信頼度の高いページはたくさんあります。
信頼できるページかどうかの判断は難しいところですが、そのWebページにある「About」「当サイトについて」などの紹介ページを確認してみると、一つの判断基準にはなるでしょう。
③一次情報に当たる
②の「情報の発信元を確認する」とも通じますが、できる限り「一次情報」を探すようにしましょう。
情報が流通する中でさまざまな変化が起こっていきます。
情報に接した際にそれを安易に信じ込んでしまうのではなく、できる限り一時情報を確認していきたいものです。
おわりに
本記事では、受験生が有益な情報を収集する際のリスクとその対処法について紹介しました。
インターネットを上手く活用することは、現代の受験生にとって欠かせないスキルの一つです。
落とし穴には気を付けつつ、インターネットを日々の学習に最大限活用していきましょう。
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