東寺~新幹線から見えるアノ五重塔~【佐京由悠の京都の歩き方】

さて、今回とりあげるのは教王護国寺、東寺です!
東寺は走行中の新幹線からもその五重塔を見ることができる、まさに京都のランドマーク的な存在でしょう。

ちなみに東海道新幹線で東京方面から京都より先に行く/もしくは新大阪方面から京都へ向かう方で東寺をどうしてもみたい!という方は各車両各列のAの座席をとってくださいね!

さて、今日も歴史から見てまいりましょう。

【歴史】教王護国寺(東寺)の歴史

(794)平安遷都
(8c末)「西寺」とともに創建
(823)嵯峨天皇、空海に東寺を託す
(1233)康勝(運慶の子)により弘法大師の坐像が完成
(1233)西寺は唯一残っていた五重塔が消失→以後復興せず
(1467)応仁・文明の乱
(1486)文明の土一揆→金堂・廻廊・南大門などが消失→(91)金堂再建
(1965)秘仏公開
(1994)「古都京都の文化財」として世界遺産に登録

時は794年、都が平安京に遷されます。
そしてその後、「東寺」「西寺」が国家鎮護のための官寺としてつくられます。

この「東」「西」とは何の東西なのか、というと、羅城門の東西なんです。
羅城門の「羅城」とは古代における都市をかこむ城壁の意味、羅城門とはそこにつくられた門です。

ただ、平安京は古代中国ほど堅固な城壁がつくられたわけではありませんでした。
さて羅城門は、平安京をタテに貫く朱雀大路の南端でもあります。ここを真ん中にして右(東)側に東寺、そして左(西)側に西寺をつくったわけなのですね。

嵯峨天皇の命で空海に託される

さてこの東寺、823年に嵯峨天皇の命で空海に託されます。

空海は真言宗を日本に伝えた通称「弘法大師」。讃岐国生まれで遣唐使に同行して中国で密教を学んできます。
同時期に新たな仏教の風を吹き込んだ僧として最澄がおりますが、彼が伝えたのが天台宗です。

Point 平安新仏教まとめ
天台宗
開祖:最澄(伝教大師)
特色:妙法蓮華経(法華経)を最重視する。俗世間との接触を嫌い、山岳での厳しい修行を求める。
→密教の導入をはかるがも最澄は達成せず、のちに円仁・円珍のころ密教化達成
真言宗
開祖:空海(弘法大師)
特色:密教
→空海は唐で密教を学び、帰国したので真言宗は天台宗と異なり初めから密教である。

密教とは、「悟りを開いた者」にしか会得することのできない「秘密の教え」のこと。密教に対して従来の仏教のことを教えが「あきらか」という意味で顕教といいます。

密教や最澄・空海の動向、そもそもなぜ平安京においてこの二人の僧が重用されたのかについては以前、文化史の連載で書いていますのでこちらもあわせてご覧ください。

弘法大師の坐像

鎌倉時代には1233年に運慶の子、康勝が弘法大師坐の像を完成させます。
康勝、どこかで聞いた名前でしたよね?

・・・

そうそう、六波羅蜜寺の空也上人像をつくった仏師です。

▼六波羅蜜寺についてはコチラ

さらに同じ鎌倉時代、西寺の五重塔が消失し、西寺は以後復興することはなかったのです。

さて、1467年に京都は応仁・文明の乱に見舞われますが、東寺は無事でした。
しかしその10年ほど後におこった文明の土一揆という一揆では、金堂・廻廊・南大門などが焼失し、のちに金堂が再建されます。

教王護国寺(東寺)の見どころ

五重塔

まずはやっぱり五重塔!
そもそも塔とは何か、というと「ストゥーパ」のことです。

ストゥーパてなんやねん! といいますと、「仏塔」のこと、本来は仏陀の遺骨(仏舎利)を納めた塔です。
ですので、東寺の五重塔は空海が唐から持ち帰ったとされる仏舎利を納めたのが最初です。

ちなみに五重塔の「五」はも五大思想、つまり「地・水・火・風・空」を意味しているともいわれています。

講堂

東寺の中心に位置している講堂は、僧が勉強するところ、つまり講義や講習の「講」です。

日本史の文化史では「伽藍配置」を知らなければならないのですが、一つ一つの建物の意味もあわせて理解しておくと知識が定着しやすいです。

また、この講堂は東寺の寺域のほぼ中心にあります。
空海が東寺の中心で表現しようとしたものは何か――。
それは、羯磨曼荼羅(かつままんだら)、いわゆる立体曼荼羅です。

「曼荼羅」とは、仏の世界観を図示したもののこと。
これを立体化した、つまり実際に仏像で表現したのが東寺の講堂なのです。

さまざまな仏像たちが整然と並んでいる様子は圧巻ですよ!

金堂

寺院において、本尊(その寺院において最も中心的な仏像のこと)を安置している建物のことを金堂といいます。

東寺の金堂には【歴史】でも述べた官寺としての役割を担わせるため、特に荘厳な金堂が求められました。
本尊は薬師如来像です。

宝物館

宝物館は春と秋に期間限定で開館される建物です。

中には東寺の寺宝や、兜跋毘沙門天、愛染明王など異国情緒ある仏像も展示されており、落ち着いた雰囲気のなかで、間近にそれらの仏像を「観る」ことができます。

開館時期は公式HPを見ていただければおわかりになりますが、3月~5月と9月~11月です。

【周辺スポット】京都鉄道博物館

2015年に閉館した梅小路機関車館を2016年にリニューアルした、日本最大の展示面積を誇る鉄道博物館です。
230形蒸気機関車233号機やクハネ581形制御寝台車35号車など、マニア感涙の車両たちがそろっています。

教王護国寺(東寺)の基本情報

基本データ
・アクセス:市バス「東寺南門」「東寺東門前」「九条大宮」「東寺西門前」バス停下車すぐ
JR「京都」駅より徒歩15分
近鉄「東寺」駅下車徒歩10分
・拝観料:特別拝観開催などのため時期により異なる
・拝観時間:金堂・講堂   8:00~17:00 (受付は30分前)
宝物館・観智院 9:00~17:00 (受付は30分前)
*新型コロナウイルス流行前の情報です。

▼「東寺」についての解説動画はコチラから!
『佐京由悠の中学生からの京都の歩き方~修学旅行を100倍楽しむために~』

おわりに

佐京由悠の京都の歩き方

さて、19回にわたってお送りしてきた『佐京由悠の京都の歩き方』は、今回が最終回となります。
2019年から連載していたんですね……長かったような短かったような。

シリーズはここでいったん終わりとなりますが、このあともEducational Loungeで引き続きお世話になります!
みなさまと別の企画でお会いできますことを楽しみにしております。

次の連載についてすでに動き出しておりますが、もしご要望などがあれば、TwitterやInstagramなどのメッセージ機能でお聞かせくださいね。

さぁ、京都にはまだまだ紹介しきれていない場所、神社仏閣がたくさんあります。
ぜひ京都を訪れた際には歴史に触れて、考えて、親しみながら、それらのスポットをめぐっていただければなぁと思います。

そして! そのようなスポットは京都だけではなく、全国各地にあります!
歴史を知れば、もっと面白い。その土地その土地の歴史の息遣いを感じるのも、旅の醍醐味のひとつと思います。

長きにわたってお読みいただいたみなさま、本当にありがとうございました。
誰もが楽しく旅することができる世の中に、早くなりますように。
〔画像:京都フリー写真素材


「佐京由悠の京都の歩き方」

第1回 清水寺編
第2回 六波羅蜜寺編
第3回 八坂神社編
第4回 智積院編
第5回 三十三間堂編
第6回  【特集】豊臣秀吉ゆかりの地
第7回 南禅寺編
第8回  【特集】琵琶湖疏水~初めて電車を走らせた京都の電化事業~
第9回 平安神宮編
第10回 金閣寺編
第11回 龍安寺編
第12回 仁和寺編
第13回 銀閣寺編
第14回 広隆寺編
第15回 【特集】嵐山周辺
第16回 【特集】歴史の舞台~応仁の乱・聚楽第・寺田屋・無鄰菴~
第17回 平等院編
第18回 伏見稲荷大社編
最終回 東寺~新幹線から見えるアノ五重塔~

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