安田です。
「春眠不覚暁」の季節になりましたね。
孟浩然の詠んだこのフレーズは、毎年この時期になると1日10回くらいは呟く定番ですね。
さて、「春眠不覚暁」、読めますか?
おそらく今これを読んでいる人なら「春眠暁を覚えず」と読めると思います。
さて、今回は句形学習を読解につなげる学習についてのお話です。
また、Z会から『漢文道場[基礎編]』という、漢文学習の定番教材になりそうな問題集が発売されましたが、現在の定番と違って新しい問題集に手を出すのは躊躇する人が多いと思いますので、私なりの視点で良い所・もう一歩な所を見てみようと思います。
参考になれば幸いです。
目次
句形を覚える~読解の一歩目~
漢文の句形はいわば「文法」。
正確に読み解くためにはどうしても最低限のルールを押さえておく必要があります。
受験に必要な知識はしっかり取り組めばさほど時間をかけずに習得できるはずです。
大切なのは、文章を読むために句形の知識を習得するという意識を持つこと。
句形を学習したら、定期的に文章読解の中で確認し、繰り返し触れることで塗り固めるように定着させていきましょう。
句形学習の事前準備をしよう
①漢文の基本ルールを押さえよう
どの問題集・参考書を見てもまずは最初はここから始まりますし、普段学校で使っている教科書にもきちんと整理されています。
②古典文法を習得しよう
漢文の訓読というのは、「昔の中国語を、昔の日本人が、日本語の語順で読めるようにする」ためのものです。
つまり、古典文法を使って読もうとしているのですから、送りがなをどう振るのかは古典文法のルールに沿っています。
句形学習から読解へ
①音読
これは英語や古文などでも先生から言われているかもしれませんが、インプットはなるべく五感を働かせた方が効果的です。
特に漢文は音の感覚が独特ですから、何度も音読することで自然とリズムが頭に刻み込まれるはずです。
②例文暗記
英語でも文ごと覚える、という学習方法がありますが、漢文は特に効果が高いと思っています。
「不」は下の動詞から返って読む、というのが一目でわかります。
よくあるフレーズを覚えてしまうことで、句形を覚えるのはもちろん、語彙力の増強も合わせて行えます。
③読解に活用する
句形は理解した、例文も覚えた、それでも実際に皆さんは入試問題で文章を読まなければいけません。
特に、「疑問・反語」は文脈依存の面が大きい上、取り損ねるとあさっての方向に話が進みかねませんから、文章を読んで解釈を考える練習を重ねなければいけません。
また、「読む」という観点からいくと、学校の授業はベストな学習になります。
しかも先生が授業で解説までしてくれる。
日々自分で句形学習をしつつ、学校の授業を最大限に活用することで、他教科に学習時間を融通する余裕も生まれます。
一石三鳥くらいの効果がありますね。
Z会の『漢文道場[基礎編]』
ここまで述べた学習は実は教科書だけでもできるのですが、教科書は「問題を解いて身につける」というのを自分ではやりづらい、また分量が不足しがち、というのはあると思います。
そこで問題集を何か使いたいという人もいるでしょう。
定番教材はこれまで色々と紹介してきたので、今回は2022年3月に発売されたばかりの、Z会の『漢文道場[基礎編]』について、現場指導の目線から見て紹介しておきます。
「読解をベースに基礎をしっかり固める」漢文問題集
『漢文道場』という問題集は昔から発売されていますが、今回は[基礎編]とあるように、その前段階にあたる問題集という位置付けです。
Z会の問題集では、私は『古文上達 基礎編 読解と演習45』が珠玉であると考えていて、古文が必要な受験生にはみんなやってもらうくらいなのですが、雰囲気がとても似ています。
読解をベースに基礎をしっかり固める、という方向性や内容も同系統の問題集と考えていいでしょう。
共通テスト漢文対策にも効果的
この『漢文道場[基礎編]』は共通テストで漢文が必要な人にとって過不足なくまとまっています。
暗記する価値は十分あります。
句形学習は、「書き下し文にする」→「現代語訳する」という形なので、句形学習とともに語彙力をつけることもでき、いくつか学んだところですぐさま読解演習ができるのも便利です。
充実した解説
解答解説がうまく作られているのもポイントです。
書き下し文に対応する形で現代語訳が載せてあるのも学習上では便利です。
本文展開のまとめや選択肢の吟味についてもきちんと全て書かれていて、「なんとなく選んだら合ってた」で済まさないぞ、という意気込みを感じます。
『漢文道場[基礎編]』の注意点
このように、受験生にとってはうまくまとまっていて完成度は高いため、「基礎基本を身につけて過去問演習に入る前の1冊」としてはうってつけなのですが、注意点というか、補足しておきたいこともあります。
また、難関大学の漢文で高得点を確保したいという人にとっては、もう一歩学習を深めたい部分もあります。
そこで、本書の第1章でも述べられている通りに、漢和辞典を引いて調べながら取り組むのがとても効果的でしょう。
当然、このような言葉に対して丁寧な学習をすれば、漢文だけでなく、現代文や古文、英語にもプラスに働くことは確実です。
句法的な知識や、漢詩についてもっと詳しく、という場合は、『漢文必携』『理解しやすい漢文』などの詳しい説明のある参考書を併用するのもありだと思います。
おわりに
漢文の句形は、読解演習を通じて何度も触れることではじめて定着してきます。
例文を覚える、一文解釈の練習を積む、だけでは不足なわけです。
かといって、四六時中漢文を勉強するわけにはいきませんから、問題集に取り組むだけでなく、学校の読解ベースの授業も活用して身につけていく姿勢で臨みましょう。