お疲れ様でございます。日本史科の佐京です。
第14回目の今日取り上げるのは、上方、江戸で栄えた元禄文化です!
「元禄」とは、主に徳川綱吉の治世を中心とした元号です。
徳川綱吉は江戸幕府第5代将軍で、一般的には生類憐みの令などを推進した人物として知られていますね。
今日もまずはキホン情報から整理していきましょう!
元禄文化の基本情報
☆キホン情報の整理
時期:江戸時代中期(17世紀後半)
政治史的理解:5代将軍綱吉の時期―幕藩体制安定期
中心人物:徳川綱吉
外交史的理解:いわゆる「鎖国」体制の継続
仏教史的理解:綱吉による仏教の保護
綱吉の治世は「文治政治」期とよばれる時期にあたります。
「文治政治」とは「儒教的徳治主義で治める政治」という意味で、この時期に幕府の公式イデオロギーである儒教、特に朱子学の存在意義は増大しました。この辺は江戸の学問・思想史のところでしっかり扱いましょう。
元禄文化の仏教
綱吉は仏教に対する信仰も厚く、生類憐みの令(1685年より出された動物愛護法令の総称)や母・桂昌院の発願によって護国寺を建立したことでも知られます。
特に犬については細かく規定され、野犬収容のための犬小屋などもつくられた。
綱吉のことを「犬公方」など呼ぶのもこのため。
桂昌院が帰依する亮賢(上野国碓氷八幡宮の別当)を開山に招いた。
所在地は東京都文京区大塚、有楽町線の「護国寺」駅近く。
このほかにも母・桂昌院が寵愛した隆光に与えた護持院なども知られます。
こうした度重なる寺社造営や、東大寺大仏殿の再建などは幕府財政悪化の一因となり、これが元禄金銀につながっていくのも理解できますね。
そのさい、勘定吟味役荻原重秀の献策によって行われた貨幣改鋳でつくられた金銀貨のこと。
幕府の財政難を補うため、特に金貨については慶長金(約84%)の金含有率を大幅に下落させて約57%とした。これにより質の悪い貨幣が横行した。
貨幣価値を下げたことで物価は上がり、人々の生活は困窮した。
元禄文化の美術
元禄期には寛永期の文化を受け継ぎ、さらに洗練された作品が創られました。
ここでは絵画を中心に見ていきましょう。
▼寛永期の文化についての記事はコチラ
浮世絵――現世の風俗を描いた民衆的な絵画
ここでは浮世絵を掘り下げましょう。
浮世絵とは現世の風俗を描いた民衆的な絵画のこと。
浮世絵版画の創始者である菱川師宣はこのころの人物で、彼の肉筆美人画(直接筆で描く美人画)の代表作として、「見返り美人図」が有名ですね。
浮世絵版画はもともと墨摺画といって、単色の版画でした。
小学校の図工の授業をイメージするとよいかもしれません。
これがのちに、彩色を加えた丹絵・紅絵となり、その後、18世紀後半には多色刷りの錦絵となりました。
多色刷りというのは分かりやすくいえばフルカラー印刷のこと!
版画でこれをやるということは、絵師・彫師・摺師の息のぴったり合った連携プレイが必要不可欠となります。
錦絵についてはまた次回、お話ししましょう。
元禄文化の文学
文学は上方の町人文芸が栄えました。
代表的な人物としては井原西鶴・松尾芭蕉・近松門左衛門の3人があげられます。
浮世草子――上方中心に栄えた現実主義的な文学
ここでは浮世草子について詳しくとりあげましょう。
浮世草子は仮名草子のあとをうけて上方中心に栄えた現実主義的な文学で、井原西鶴は好色物・町人物・武家物の3ジャンルを中心にこれを展開しました。
好色物では遊里・町人社会での男女の愛欲を描いた『好色一代男』・『好色一代女』などが有名。
この2作品、名前は似ていますが全然内容が違います。
『好色一代男』の方は、主人公の(浮)世之介の7歳(!)から60歳までの、さまざまな女性との“交流”を描いたもの。
ちなみに7歳から60歳までは54年間でして、これを1年1章で描いているのは『源氏物語』(全54帖)にならっているんです。
芸が細かい!
『好色一代女』は京都の好色庵にすまう老尼の回想が中心。
女性の視点が中心で描かれ、1952年には溝口健二監督によって映画化されて国際的にも高い評価を得ています。
コチラは戦後の文化で取り上げますね!
戯曲については近松門左衛門の世話物(心中・恋愛などを描いた現代劇)・時代物(当時にとっての「時代劇」、つまり近世以前の歴史的事件を題材にしたもの)の2ジャンルを押さえましょう。
また俳諧については西山宗因を中心とする談林派(井原西鶴ももとは談林派の俳人)と松尾芭蕉を中心とする蕉風の二者を比較しながら押さえましょう。
というか本番の極度の緊張状態では混乱して何が何だか分からなくなってしまいます。
本文で触れたもの以外の作品についてもそのジャンルと内容(もちろんあらすじ程度でOK)を結び付けて「理解」しておきましょうね。
以上、元禄文化についてお話しました。
それではまたお会いしましょう!次回もお楽しみに!
▼元禄文化について詳しくはコチラ
日本史科予備校講師。学びエイド認定鉄人講師。
首都圏の予備校を中心に出講し、その講義は「するする頭に入ってくる」「勉強しなきゃと意識が変わる」「出てきた土地に興味が湧く」と受験生に高い支持を得ている。
授業のコンセプトは「大学に行くのが楽しみになる授業」。
科目の内容はもちろんのこと、丸暗記のみに頼らない本番での知識の導き方・解き方、現場に足を運んで得た知見などをもとに大学に行っても役に立つ「受験科目」を展開。
受験生におくる言葉は「一生勉強、何のこれしき。」
「佐京由悠の日本文化史重要ポイント」
第1回 初の仏教文化、飛鳥文化
第2回 国家仏教の形成と白鳳文化
第3回 鎮護国家思想と天平文化
第4回 弘仁・貞観文化
第5回 国風文化(前編)
第6回 国風文化(後編)
第7回 院政期の文化
第8回 鎌倉文化(前編)
第9回 鎌倉文化(後編)
第10回 室町文化(前編)
第11回 室町文化(後編)
第12回 桃山文化
第13回 寛永期の文化
第14回 元禄文化