こんにちは。
数学講師の大塚志喜です。
今回は数学Aの「図形の性質」についてお話しします。
この分野は選択問題になっていて,選択を避ける受験生が多い分野です。
それゆえ「図形の性質」には最初から手をつけず,残りの確率と整数だけ学習を進める受験生も少なくありません。
しかし,それは必ずしもいい結果に結びつくわけではなく,マイナスになってしまう場合もあります。
この記事では,図形の性質を捨ててしまうことによるデメリットと,どう勉強していけばいいかについてお話ししていきます。
数学の選択分野をあらかじめ決めていると,ギャンブル要素が増える
選択分野をあらかじめ確定してしまうと,ギャンブル要素が増えることになります。
数学の試験ではこのような事件がよく起こります。
どうしても分野の間で難易度の偏りがでてきます。
たまたま図形が難しい年に当たればラッキーですが,そうでない場合は地獄を見ることになります。
最終的に図形を選ばないにしても,中盤くらいまでは手が出る程度には勉強を進めておくと十分保険になります。
転んだ時の得点をどん底に落とさず,被害を最小限に食い止める保険は用意しておいて損はありません。
図形問題では「同じ図形に出会う」ことがほぼない
図形問題の一番厄介なところは,「同じ図形に出会うことがほぼない」というところでしょう。
それゆえ,他の分野と同じような「パターンに当てはめる」勉強をしてもなかなか実戦力がつきません。
そして,結果として図形を捨ててしまうということになる受験生が非常に多いと感じられます。
図形分野の勉強の仕方
しかし,「実践力」がつかないのはそもそも勉強の仕方に対する認識を間違えているだけの場合が非常に多いです。
角の二等分線の性質
例えば次の事実についてお話ししてみます。
これは角の二等分線の性質と呼ばれている,非常によく使う事実です。
そんな勉強をしていると,「複雑な図形の中に紛れ込んでいるが,実は特定の技術を使うと簡単に解けてしまう問題」には手も足も出なくなってしまいます。
常に「なぜ」を大切にする
そうならないために,常に「なぜ」を大切にしてください。
そして,その理由を説明できるようになることが,目の前にある提示された事実 (今は角の二等分線の性質) の学習のスタートです。
例えば今回の問題は次のように理由を説明することができます。
角の二等分線の性質が成り立つ理由
図のように,点$\rm{D}$から辺$\rm{AB},\rm{AC}$へ垂線$\rm{DH}_1 ,\rm{DH}_2$を引く。このとき,
・$\angle \rm{H}_1 \rm{AD}=\angle \rm{H}_2 \rm{AD}$
・$\rm{AD}=\rm{AD}$
・$\angle\rm{AH}_1 \rm{D}=\angle \rm{AH}_2\rm{D}=90^\circ$
なので,$\triangle\rm{ADH}_1 \equiv \triangle\rm{ADH}_2$である。よって$$\rm{DH}_1 =\rm{DH}_2$$
となっていることがわかる。
$h=\rm{DH}_1 =\rm{DH}_2$と置くことにする。また,$\triangle\rm{ABC}$の,辺$\rm{BC}$を底辺と見たときの高さを$h′$とし,$\triangle\rm{ABD}$の面積と$\triangle\rm{ACD}$ の面積をそれぞれ$S_1 ,S_2 $と置くことにする。
すると,$$S_1 =\rm{AB}·\textit{h}·\frac{1}{2},\textit{S}_2 =\rm{AC}·\textit{h}·\frac{1}{2}$$であるから,$$S_1:S_2=\rm{AB}·\textit{h}·\frac{1}{2}:\rm{AC}·\textit{h}·\frac{1}{2}=\rm{AB}:\rm{AC}· · · ①$$
である。また,$$S_1 =\rm{DB}·\textit{h′}·\frac{1}{2},\textit{S}_2 =\rm{DC}·\textit{h′}·\frac{1}{2}$$でもあるから,
$$S_1 :S_2 =\rm{DB}·\textit{h′}·\frac{1}{2}:\rm{DC}·\textit{h′}·\frac{1}{2}=\rm{DB}:\rm{DC}· · · ②$$も成り立つ。①, ② より,
$$\rm{AB}:\rm{AC}=\rm{DB}:\rm{DC}$$である。(理由終わり)
事実の理由説明には「学ぶべき要素」が散りばめられている
このように,角の二等分線の性質が成り立つのには理由があります。
※もちろん方針はこれだけではありません。たくさんの方針がある中の一つの方針を述べただけです。
この理由の中にはたくさんの学ぶべき要素が散りばめられています。
次に直角三角形の合同条件。
面積比の利用。
どれも大事な知識です。
このように,事実の理由説明の中には実践でよく見かける大事なポイントがたくさん詰まっています。
それを「使いながら」体験できるのが非常に効率が良いと思いませんか?
図形問題が苦手という皆さんには,結果は知っているけれどもなぜそうなるかわからないという公式がたくさんあるのではないでしょうか。
その穴埋めをしていくだけでもかなり効率よく勉強していくことができますよ。
おわりに
さて,今回の記事はどうだったでしょうか。
しっかりとした勉強法で積み重ねていけば,もしかしたら受験当日には確率や整数よりも得点率が高い分野になっているかもしれませんよ。
今度は,受験生になってから慌てないために,非受験学年の皆さんが図形の学習をどう進めていくと良いのかについてお話ししていこうと思います。
また次回の記事でお会いしましょう。