お疲れ様でございます。
日本史科の佐京です。
第13回の今日は、江戸時代初期の文化、寛永期の文化を取り上げたいと思います。
「寛永」とは、主に徳川家光の治世を中心とした時期の元号です。
江戸時代の学習においても、文化史のみならずさまざまな部分でこのような「元号」がでてまいりますから、「時の権力者」と積極的に結び付けて「時期判定」できるようにいたしましょう!
「時の権力者」と申したのは、初学のうちは結びつける対象は必ずしも将軍である必要はないからです。
例えば新井白石の行った「正徳の治」などを想起してください。
さて!
今日も前置きが長くなりましたが早速寛永期の文化の基本情報から!
寛永期の文化の基本情報
☆キホン情報の整理
時期:江戸時代初期(17世紀前半)
政治史的理解:3代将軍家光の時期―幕藩体制確立期
中心人物:徳川家康・家光
外交史的理解:「鎖国」政策の進展
仏教史的理解:江戸幕府による仏教統制と行政末端機関化
寛永期の文化は、桃山文化を受け継ぎつつも、新傾向を示し、のちの元禄文化につながる文化です。
まぁこれだけ書くと、「そりゃそうじゃろ!!」という話なのですが、これを具体的に説明しますと、桃山文化における(豪商たちの財力を反映した)豪華さと、元禄文化における上方町人による洗練された文化との中間地点にいると考えて下さい。
▼桃山文化についての記事はコチラ
寛永期の仏教
江戸時代の仏教は、それ以前と比べて大きく変化します。
それは寺院が民衆を檀家として所属させ(所属先の寺院を檀那寺という)、キリシタン・日蓮宗不受不施派のような幕府により禁止された宗教の信者でないことを証明させる制度(=寺請制度)を構築したことです。
これにより幕府は禁教と同時に、戸籍の役割をもつ宗門改帳の管理を行わせることによって行政の末端機関として扱いました。
こうすることで、「日本人は全員仏教徒です=キリスト教徒はいません」というタテマエを貫くことができるのです。
葬式仏教
もちろん、仏教以外の宗教はすべて禁止されたわけではなく、修験道や神道、陰陽道などは仏教に準じて容認されました。
しかし、圧倒的に仏教は有利。
なぜなら定期的に仕事は入ってくる(人は、いつかは必ず命の終わりがきますからね……)ので寺院収入は安定、また行事によって民衆の生活にいやでも定着するわけです。
このような近世の仏教は「葬式仏教」とも呼ばれます。
この「江戸時代の仏教」のお話は厳密には文化史の範囲ではないのですが、大事なことなので少しお話しました!
▼江戸時代の仏教についてはコチラ
寛永期の美術――建築と絵画
美術では主に建築と絵画を取り上げていきましょう。
まずは建築です。
霊廟建築
寛永期の霊廟建築といえば、コレ。日光東照宮(栃木県)。
神格化された徳川家康(=東照大権現)を祭る霊廟建築で、本殿と拝殿を石の間でつないで「エ」の字型につなぐ建築様式(=権現造)を採るものです。
ちなみに東照大権現とは家康の神号、つまり神様としての名前。
1616年に死去した徳川家康は当初静岡県の久能山に祭られましたが、翌年改葬されました。
豪華な装飾をもつ陽明門は圧巻ですよ。
数寄屋造り
つづいてまつy…じゃなくて、数寄屋造りを見てまいりましょう。
代表例は桂離宮と修学院離宮の二つです。
・桂 離 宮: | 後陽成天皇の弟(八条宮智仁親王)の別邸。松琴亭など4つの茶室をもつ。 |
・修学院離宮: | 紫衣事件で退位した後水尾上皇の山荘。 |
狩野派の絵画
つづいて絵画を見ていきましょう。
ここでは、特に狩野派を取り上げます。
東山文化では狩野正信・元信、桃山文化では狩野永徳・山楽をすでに学習した。
さて、この狩野派から狩野探幽が出まして、幕府の御用絵師として形式化していきます。
代表作は大徳寺方丈襖絵です。
また、狩野派から破門されて独自の作風を貫いた久隅守景も取り上げておきましょう。
久隅守景の代表作は夕顔棚納涼図屏風。
農民の生活に根差したほのぼの、穏やかな作風です。
おわりに
以上、寛永期の文化について大まかですがお話ししました。
より詳しく学習されたい方は下記リンクから動画をご覧くださいね。
また、今回取り上げられなかった学問・思想は江戸時代の文化を一通り学習したあとにテーマ史という形で取り上げる予定です。
併せてご期待くださいね!
▼寛永期の文化について詳しくはコチラ
日本史科予備校講師。学びエイド認定鉄人講師。
首都圏の予備校を中心に出講し、その講義は「するする頭に入ってくる」「勉強しなきゃと意識が変わる」「出てきた土地に興味が湧く」と受験生に高い支持を得ている。
授業のコンセプトは「大学に行くのが楽しみになる授業」。
科目の内容はもちろんのこと、丸暗記のみに頼らない本番での知識の導き方・解き方、現場に足を運んで得た知見などをもとに大学に行っても役に立つ「受験科目」を展開。
受験生におくる言葉は「一生勉強、何のこれしき。」
「佐京由悠の日本文化史重要ポイント」
第1回 初の仏教文化、飛鳥文化
第2回 国家仏教の形成と白鳳文化
第3回 鎮護国家思想と天平文化
第4回 弘仁・貞観文化
第5回 国風文化(前編)
第6回 国風文化(後編)
第7回 院政期の文化
第8回 鎌倉文化(前編)
第9回 鎌倉文化(後編)
第10回 室町文化(前編)
第11回 室町文化(後編)
第12回 桃山文化
第13回 寛永期の文化