こんにちは。
数学講師の大塚志喜です。
今回の記事では、共通テスト数学 IA に向けた学習法についてお話ししていきたいと思います。
共通テストは始まったばかりの試験ですから、未知数なところが多くあり、不安を感じている受験生も少なくありません。
しかし、共通テストの数学IAで問われているのは受験テクニックや形式への慣れではなく、数学の能力です。
出題形式や傾向に過度な心配をする必要などありません。
共通テストであろうが2次試験であろうが最初の一歩は変わりませんから、やるべきことに向かって正しく努力することに全力を注いでください。
目次
共通テスト数学IA対策は、教科書の完全理解を目指すことから
まずはとにかく教科書です。
そもそも共通テスト数学IAの出題範囲は数学IAの教科書ですから、教科書の徹底が何よりも重要です。
教科書の内容が徹底できていればその後の勉強のハードルが一気に下がります。
過去問や問題集がなかなか解けなくて悩んでいる人は、点数を一旦度外視して、内容の理解に集中しましょう。
「用語を知らない」「定義を知らない」「教科書の例題も解けない、理解できない」というレベルでは、入試問題に挑戦できません。
大切なのは、今の自分を「共通テスト当日に」必要なレベルまで引き上げることです。
「今」点数が取れることではありません。
まずは言葉とその意味をしっかりと覚えましょう。
用語の意味や記号の使い方を確認する
共通テストに限らず最近の入試全体を眺めていると、「用語の意味や記号の使い方」から問いが始まる傾向が非常に強まってきているという印象を受けます。
そこから始まるどころか、それで問題が終わってしまうようなものも見受けられます。
例えば今年の共通テストを見てみると、集合のところでは記号の使い方がそのまま問題になっていたり、7進法がそもそも何かを問うていたり、データの分析ではもうほぼ用語の意味のチェックになっていました。
2次試験でもこの傾向が多く見られます。
今後もこの傾向が引き継がれる保証などどこにもありませんが、このような非常に基本的な問題の並びですら、そこまで平均点が高くないというのが現状です。
「色々な問題を解く前に、せめてこのくらいは覚えておいてほしい」
想像になりますが、「色々な問題を解く前に、せめてこのくらいは覚えておいてほしい」という出題者側の気持ちがどんどん強くなってきているのではないかと思います。
問題を通して出題者が受験生に問いたくなっているほど、基礎が一番大切です。
それでも、かなりの割合の受験生が基礎を軽視して、とにかく問題にたくさん触れ、解き方を理由づけなく覚えようとする傾向にあるように思います。
まずは実践よりもその土台を固めましょう。
これができるのは時間に比較的余裕がある夏が最後です。
夏にしっかりと土台を固めて、2学期以降の実践演習の効果を限りなく高める準備をしましょう。
教科書学習で意識してほしい具体的な目標
「数学IAの学習は、まず教科書をやれ」と言われても、あまりにも漠然としていて何をしたら良いかよくわからないと思います。
そこで、ここからは共通テスト数学IA対策のために具体的に何をするべきかお話ししていきましょう。
まずは他人に伝わるレベルでの「用語の理解」を目指す
共通テスト数学IA対策で、まず取り組むべきなのは「用語の理解」です。
目標は「この用語って何?」と聞かれて「それは〜という意味だよ」と、他人に説明できる状態です。
自分の中で納得するだけでは足りません。
言語化して他人に伝わるレベルを目指しましょう。
「こんな感じ」と曖昧な説明しかできないのであれば、それは全く自分のものにできていないのと変わりません。
大切なのは、他の人が納得できる説明ができることです。
このレベルを目指して意味を理解しましょう。
教科書の計算問題をスムーズに解けるようにする
共通テスト数学IA対策で次に取り組むべきことは「計算」です。
問題文の意味を掴んで正しい計算式を立てられても、そこから最後に向かう計算力がなければ得点に繋がりません。
まずは教科書に載っている計算問題 を、スムーズに解けるようになるのが目標です。
ここでは「スムーズに」というのが大切です。
簡単な計算で悩んでいるようでは、きちんと頭を使わなければならないところに割く時間がなくなってしまいます。
実際、試験時間内に問題が解き終わらない原因のほとんどは、基本的な計算のスピードです。
平方完成や 2 次不等式、三角比の値や相互関係、三角方程式や不等式など、計算自体が練習問題として取り上げられているものは全て淀みなく解ききる計算力を身につけておかなければなりません。
しっかりと計算練習をしましょう。
教科書の例題や練習問題を通して基本定石を習得する
最後に、基本定石の習得です。
用語をしっかりと覚えて、計算技術をある程度身につけたら、あとは使い方です。
しっかりと使う練習をしなければなかなか身に付きません。
この段階で取り組むのは入試問題や実践的な問題ではなく、教科書の例題や練習問題です。
入試問題や実践的な問題だと、計算が煩雑であったり複数の定石が組み合わさっているものが多いので、ひとつのテーマを鍛えようと思ったら実践演習よりも教科書の例題や練習問題の方が効率よく練習できます。
ひとつひとつの定石をしっかりと自分のものにして、その後に実践演習をした方がより印象強く残りやすいものです。
数学IAの基本定石の習得のために問題を実際に解くことは計算練習にもなりますので、計算練習とある程度同時に進めることができます。
この問題演習が、実は計算練習にもなっていることを意識して取り組みましょう。
共通テスト数学ⅠA対策、夏以降の学習方針
夏までにしっかりと土台を固めれば、あとは実践あるのみです。
身につけた技術を実際の入試問題に挑戦することで磨いていきましょう。
序盤は、(時間を測るものの)あまり時間制限を気にせず、解ける問題を全部解きます。
その後、それぞれの問題を「解ける問題」「時間をかければ解ける問題」「全く解けない問題」にグループ分けします。
あとは、「時間内に解ける問題を押し込む」「解けない問題が解ける」ようにする復習が大切です。
問題を解く時間よりも復習の時間の方が長くなることがほとんどだと思いますが、そのじっくりとした学習の積み重ねが最後に必ず効いてきます。
本番までしっかりと積み重ねを作りましょう。
おわりに
今回のお話はどうだったでしょうか。
最近よく「コスパ」という言葉を耳にします。
とにかく楽をして効率よく点数さえ取れればいいと思っている人が多いようです。
でも、それができるのは「そもそも土台がしっかりしている」のが前提です。
準備ができた上で効率を求めるのは悪くないと思いますが、その段階に登っていくのにまずひたむきな努力が前提になっていることを忘れないでください。
正しい方向に進む努力は必ず結果に繋がります。
勉強の成果が出るのはずっと先になることがほとんどですから、結果が出るまで 継続して努力を積み重ねましょう。
今の正しい努力が、のちのコストパフォーマンスに大きな影響を与えることになるのは間違いないと思います。
それではまた次の記事でお会いしましょう。
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