安田です。
夏ですね。
受験の天王山と言われる季節がやってきました。
今回は、受験で漢文を使う上で一番需要があると思われる大学入学共通テスト対策について、夏の段階で何を意識しておけばよいかをお伝えしたいと思います。
目次
2021年度大学入学共通テスト[漢文]まとめ
・2つの問題文による出題。また、両方の文章を踏まえて考える設問が2題出題された。
・【問題文Ⅰ】は宋の欧陽脩の五言古詩、【問題文Ⅱ】は『韓非子』の散文。
・2020年度センター試験と比べて、設問数は変化なし(6題)、マーク数は2つ増加(9つ)。字数は76字増加で計176字。
共通テスト[漢文]の出題内容
2021年度共通テストの漢文で出題された【問題文Ⅰ】【問題文Ⅱ】は、どちらの問題文も馬車を操縦する「御術」について書かれたものでした。
イラストも付いていたので、注意深く読めばイメージしやすいと思います。
各設問の内容は以下の通りです。
問1: | 漢字の本文中における意味ともっとも近い意味を持つ漢字を選ぶ問題。従来のセンター試験とほぼ同じタイプ。 |
問2: | 漢字・フレーズの解釈を選ぶ問題。これも従来のセンター試験とほぼ同じタイプ。 |
問3: | 2つの問題文を踏まえて、空欄に当てはまる字を選ぶ問題。共通テストのコンセプトを踏まえた新傾向タイプの設問。 |
問4: | 返り点の付け方と書き下し文の組み合わせとして適当なものを選ぶ問題。従来のセンター試験でも定番のタイプ。 |
問5: | 文の解釈を選ぶ問題。これも定番の形。 |
問6: | 「御術」と御者の説明について最も適当なものを選ぶ問題。全体の内容把握としては定番ながら、問題文2つとも正確に捉えることが必須という点が新しい。 |
共通テスト対策の基本方針
先ほどの内容を見ていただければ分かる通り、共通テスト漢文の出題内容は、基本的には従来のセンター試験漢文と同様と考えていてよいと思います。
基礎知識を身につけ、文章をきちんと読み、設問文と選択肢を入念に読み、最も適したものを選ぶ。
取り組んだ文章は解釈できないところがなくなるまで徹底的に復習する。
どの教科にも通じる王道の勉強が一番効果的です。
複数問題文は片方をヒントにできる
初めての共通テストで漢文は複数の問題文による出題になりました。
2021年度は同じテーマについての漢詩と散文でしたが、他にもいろいろな組み合わせが考えられます。
漢文の文章とそれに対する注釈、漢文の文章とそれを授業で発表するためのレポート、漢詩とその解説文、などなど。
どういうものになるかを予測するのは困難ですが、基本的にはそれぞれの文章が読めて内容が分かればOKです。
特別なことをしなくても大丈夫。
むしろ、全く無関係の文章を組み合わせることはありませんから、どちらかの文章が読みづらくても、もう一方の文章がある程度読めれば内容を汲み取れることがあります。
「片方がヒントにできる」くらい前向きに考えておくと、複数問題文へも抵抗感なく取り組めるようになるでしょう。
共通テスト対策学習は三段階で
[共通テスト対策]
①漢文の基礎力をつける
②知識→文章を読む練習へ
③過去問演習で固める
漢文の基礎力をつける
ここでいう漢文の基礎力とは、語句、返り点・送りがな、返読文字、再読文字、句形といった漢文の知識面です。
これまでの記事で紹介した勉強法が役に立つと思います。
身につけた知識を活用しながら文章を読む練習をする
『漢文早覚え速答法』『漢文ヤマのヤマ』『マーク式基礎問題集(河合出版)』などを使って、身につけた知識を読解に活用していく練習をしていきます。
1周きちんとやりきるだけでもだいぶ力がついてくるはずです。
自分の志望先にかかわらず、共通テストを受験する予定の人は夏終了時点でここまでの学習をしておきましょう。
センター試験・共通テスト過去問の演習で固める
漢文では、センター試験の過去問も十分に共通テスト対策になりますから、実戦型の演習を十分にできる量はあります。
丹念に文章を追い、設問をきちんと読み、選択肢のひとつひとつを吟味する。
解いた後に自力で読み解けるようになるまで解説や現代語訳を駆使して復習する。
これらを守って取り組んで仕上げていきます。
漢文の複数問題文対策は、各予備校作成の共通テスト対策問題集を活用するといいでしょう。
過去問や実戦問題集に取り組む際は、漢文だけでなく国語全体80分で行う
過去問や実戦問題集に取り組む際は、「国語全体で80分通す」というのを意識しておいたほうがいいでしょう。
国語は時間との勝負。
漢文だけピックアップして20分、という取り組み方ではなく、全体80分の中で漢文に対して「どのタイミングで」「どれくらい時間を使えるか」という観点でやってみるべきです。
最低でも週1回は漢文学習を定期的に行う
国公立志望の人は秋~冬にかけては二次試験に向けて学習をしていきますが、理系はもちろん文系でも二次試験で漢文が出題されるという人は限られますから、放っておくと何ヶ月も漢文に触れない……という状況に陥ります。
すると、せっかく身につけた知識もどんどん抜けていきます。
最低でも週1回は問題集(一度やったものでもOK)で知識の確認をしておくと、共通テスト対策が本格化する12~1月に慌てずに済みます。
私立志望で共通テストが必要、という人も基本的には同じスケジュールで進めましょう。
やはり漢文を勉強する時間は限られるでしょうから、曜日時間帯を決めて定期的に触れる、という形にしましょう。
おわりに
共通テスト対策をしていく中で、漢文はどうしても後回しにされがちな科目です。
それは国公立二次試験や私立の一般入試の問題構成・配点から考えるとそうせざるを得ないのかなとも思います。
しかし、高3の夏を過ぎればもう後回しにする時間はありません。
この夏に基礎知識を身につけられるかどうかで秋以降の他の教科の学習にも大きく響いてきます。
ぜひとも頑張ってください。
個別学習塾寺子屋はじめ塾長。
漢文を専門としつつも受験勉強のトータルプロデュースを行い、大学進学後を見据えた指導を行っている。
全国の大学受験生向けに国語のオンライン個別指導も行っており、難関国公立大の国語や医療系小論文の添削指導には特に定評がある。