安田です。
もう暦の上では夏ですね。
夏の始まりを「立夏」といいます。
春分と夏至のちょうど中間点。これらは二十四節気と呼ばれ、元は中国の戦国時代(紀元前5〜3世紀)頃に考案された区分です。
中国の古典世界が今の日本にも息づいている例ですね。
今回は学校の教科書を用いた漢文の学習法についてお伝えします。
目次
漢文学習に学校の授業を活用する
前回の記事において、受験生は漢文に学習時間を割くのがどうしても後回しになってしまう、ということに少し触れました。
国公立大ではほぼ大学入学共通テストで必須になるものの、二次試験や私大では出題されるところは限られています。
漢文は多くの受験生にとって、受験の主軸になる科目ではありません。
しかし、受験には必要という人が多い科目です。
したがって、普段の学校の授業やテストを最大限に活用しつつ、手持ちの教科書と副教材を用いて学習していくのがベストになってきます。
【1〜3年生】教科書・副教材の使い方(学校の授業編)
現在、学校の授業で漢文を学習している、という人は、その時間を最大限に活用しましょう。
教科書に掲載されている文章(漢詩なども含む)は、高校生にとってとっつきやすいものが多いです。
四字熟語や古事成語の元ネタとなったエピソードであったり、三国志や論語といった、現代の日本でも読者の多い書物から選ばれていたりします。
内容自体も比較的平易で、さらに学習すべき知識(句法や助字)もひと通り網羅されています。
具体的な学習方法
基本的な学習については学校の先生から手ほどきを受けると思いますが、
1. 教科書掲載の文章を音読する
2. 書き下し文にする
3. 漢和辞典を使いながら訳す
この3点を、副教材を使って分からない句法を調べながら授業前の予習として行い、
4. 白文(返り点・送りがなが付いていない文)に自力で返り点と送りがなを振る
ここまでを定期考査の勉強で取り組めると、相当な力がつきます。
いきなり返り点や送りがなを振るのは難しいので、まず教科書の文章を何度も何度も音読します。
合唱コンクールなどで歌を覚えるのと同じ要領です。
文字と睨めっこしていても頭には入りませんから、声に出してリズミカルに、暗誦するくらいまで読み込みます。
ひとつの文章はそれほど長くありませんから、何時間もやらずとも大体頭に残るようになります。
その後、白文に自分で返り点と送りがなを振っていき、教科書と照合させて確認、違うところをチェックして練習し覚える、としていけばいいでしょう。
【3年生】教科書・副教材の使い方(復習編)
高校3年生の人は、これまで1〜2年生の時に学校の授業で扱った教科書の文章をあらためて読んでみましょう。基本的には授業で扱う時の学習と同じく、
1. 教科書掲載の文章を音読する
2. 書き下し文にする
3. 漢和辞典を使いながら訳す
4. 白文(返り点・送りがなが付いていない文)に自力で返り点と送りがなを振る
この順番に取り組み、ワンステップごとに過去のノートやプリントで確認します。
訳しづらい、という部分は、たいてい何かしらの句法であることがほとんどですから、副教材を参照しながら読み方・使い方をチェックしておきましょう。
教科書を活用した学習で身につく力
これでどういう力が身につくのか?
例えば、「使民養生。」という文字の並びを見た時に、これらの学習経験を積んでいると、とりあえず手前の2文字を「民をして〜しむ。」と読むことが容易になります。
「雖」「而已」「苟」などの読み方はどうでしょう?
現代で日常的に使うような文字ではないですから、知らないと答えられません。
これらの文字の読み方や意味がまとめられたものを使って覚えるという手段もありますが、3年間の学校の授業でいずれも教科書を使って触れるものでもあるので、暗誦できて見て分かる、というレベルにあれば、特別な勉強をしなくても身につくのです。
おわりに
漢文はどうしても受験勉強では後回しになりがちです。
受験生の持ち時間は有限です。
国語の中ではどうしても現代文や古文が優先になるでしょうし、英語にも時間を投入しなければなりません。
他の科目も相当な学習量が必要になります。
その中で、漢文という科目を主軸に据える、ということはありません。
また、お金も無限に持っているわけではありませんから、あれもこれも参考書や問題集を買えるわけではありませんし、買っても十二分に取り組めなければ意味がありません。
教科書を使い、学校の授業を最大限に活用する。これが合格に近づくための道です。
個別学習塾寺子屋はじめ塾長。
漢文を専門としつつも受験勉強のトータルプロデュースを行い、大学進学後を見据えた指導を行っている。
全国の大学受験生向けに国語のオンライン個別指導も行っており、難関国公立大の国語や医療系小論文の添削指導には特に定評がある。