
受験生のみなさま、お疲れ様でございます。日本史科の佐京でございます。
今日とりあげるのは平安時代末期、院政期の文化です。
まずはキホン情報の整理から!
目次
院政期の文化の基本情報
☆キホン情報の整理
時期:11世紀~12世紀
政治史的理解:院政期
中心人物:白河上皇・鳥羽上皇・後白河上皇
外交史的理解:平氏による日宋貿易
仏教史的理解:浄土教の地方普及
・中心寺院→中尊寺
今回扱う院政期の文化は、前回の国風文化に引き続き「浄土教」がキーポイントになります。
*国風文化についての記事はコチラ
院政期の文化の概要
院政期の文化は一般的に、
〈武士・庶民の台頭→貴族文化が地方文化をとりいれる→新たな文化の創出〉
と理解されています。
すなわち、古代末期に台頭してきた武士や庶民のもつ地方文化を貴族文化が取り入れ、新たなステージに入るわけですが、その武士・庶民と貴族を結び付けたのが「聖」と呼ばれる僧たちでした。
Point 聖
聖とは、寺院に所属しない民間の布教者。
諸国をめぐって浄土教を広めた。
聖の活動は京都で貴族たちが信仰している浄土教を地方に普及させることとなりました。
そんなわけで、まずは仏教、特に浄土教の動向から見ていきましょう。
院政期の仏教
浄土教
とは、「西方極楽浄土の主である阿弥陀如来を信仰することで、来世には極楽浄土に往生して悟りを得て、苦がなくなることを願う教え」ということは前回の記事でお話ししています。
浄土教は、前節で述べた聖たちによって、各地に普及していきます。
このことがよくわかるのが、各地に建立された阿弥陀堂です。
Point 各地に建立された阿弥陀堂
白水阿弥陀堂(福島県)
中尊寺金色堂(岩手県)
富貴寺大堂(大分県)
白水阿弥陀堂
白水阿弥陀堂
は福島県にある願成寺の阿弥陀堂。
岩城則道の妻で藤原秀衡の妹である徳尼が建立しました。
福島県いわき市ってありますよね。特急ひたち1号いわき行き、みたいな。
ご存知の方は現在の地名と結び付けると覚えやすいですね。
ちなみに「白水」は徳尼の故郷、平泉の「泉」を上下で分けて「白」「水」としたといわれています。
中尊寺金色堂
そんな平泉にある超有名阿弥陀堂が中尊寺金色堂。
藤原清衡が平泉に建立した阿弥陀堂です。
仏像が並ぶ須弥壇の下に清衡・基衡・秀衡の3体のミイラが安置されていることでも知られています。
Point 奥州藤原氏
後三年合戦ののち、平泉を拠点とした豪族。
奥州産の金による経済力を背景に豪華絢爛な平泉文化を現出。
1189年に源頼朝により滅ぼされ、同年に奥州総奉行がおかれた。
清衡による中尊寺、基衡による毛越寺(ただし、両者正確には平安時代の建立、清衡・基衡は大規模な堂塔の造営を行ったとされている)の他、秀衡が平等院を模して建立した無量光院も押さえておきましょう。
奥州藤原氏についてはコチラ
富貴寺大堂
最後は九州最古の木造建築物、富貴寺大堂。
大分県の豊後高田市にあります。ちなみに宇佐八幡宮のある宇佐市の隣です。
宇佐八幡宮神託事件についてはコチラ
そうなんです。
ここ大分県国東半島は神仏習合の信仰形態を持つ宇佐八幡宮と関係の深い土地で、仏教文化も栄えていたところなのです。
このように、時代を横断しながら知識を整理していくと、定着もしやすいですね。
院政期の文化の文学・芸能
文学では、仏教説話集、歴史物語、軍記物語が盛んになります。
軍記物語は武士の台頭と連動して、そして歴史物語についていえば、そんな歴史の転換期にあって過去を振り返ろうという貴族の考えの表れとも言われます。
代表的な歴史物語
『栄華物語』
宇多天皇から堀河天皇までの約200年間を、
藤原道長の栄華を中心に摂関政治の全盛期を無批判に描く。
編年体歴史書風の体裁。
『 大 鏡 』
別称「世継物語」でかな書き史書のはじめとされる。
藤原道長の栄華を中心に摂関政治全盛期を批判的に描く。
紀伝体風の体裁。
*『今鏡』『水鏡』『増鏡』とあわせて四鏡という。
Point 紀伝体と編年体
紀伝体:「本紀」「列伝」「表」などからなり、個々の人物や国についての情報をまとめて紹介する歴史叙述。
編年体:年代を追って出来事を記述する歴史叙述。
芸能の代表格『梁塵秘抄』
芸能の代表格はやはり後白河上皇による『梁塵秘抄』でしょう。
「梁塵」とは、「歌の名人による歌唱で梁の塵も動いた」との故事に由来します。
梁というのはカンタンにいうと横向きの柱。
そこにたまっている塵が名人の歌による振動ではらはら落ちてくるわけです。
うまい人の歌って、空気も心も震えますからね(笑)
さて、この『梁塵秘抄』ですが、タイトルからもわかる通り歌、正確に言えば「今様」が収録されています。
Point 今様
「今様」とは「現代風」の意味。
七五調四句のものがおおく、庶民感情を表現した。
院政期の文化の絵画
絵画は絵巻物と装飾経を押さえましょう。
絵巻物は詞書と絵を交互に連ねて時間の流れを表現する大和絵(詞書のない絵巻物もあります)、装飾経は下絵などに華麗な絵が描かれている経典です。
ここでは、絵巻物を掘り下げてみましょう。
この時期の絵巻物の代表はなんといっても『源氏物語絵巻』。
「吹抜屋台」「引目鉤鼻」の手法を用いています。
「吹抜屋台」とは斜め上のアングルから屋根と天井を「なかったこと」にして描く手法。
私は勝手にシル〇ニアファミリー方式と呼んでいます。
「引目鉤鼻」は人物の顔を切れ長の目と「く」の字型の鼻で描く人物描法です。
人の顔を抽象化し、物語に感情移入しやすいような形で絵が描かれた、と理解しましょう。
そして、忘れてはいけないのは『信貴山縁起絵巻』と『鳥獣戯画』です。
Point 信貴山縁起絵巻と鳥獣戯画
・『信貴山縁起絵巻』
信貴山朝護孫子寺の創始者命蓮に関する説話。
山崎長者の巻、延喜加持の巻、尼君の巻の三巻からなる。
・『鳥獣戯画』
京都高山寺所蔵。彩色なし、詞書なしで全巻墨書きによる。
動物の擬人化によって当時の貴族社会や仏教界を風刺。
この二つはその作風から日本のマンガ・アニメ文化の源流なんて言われたりもします。
鳥獣戯画は最近いろいろなグッズのモチーフとしても見かけますよね。
ぜひ、(今回取り上げられなかった『伴大納言絵巻』も含めて)資料集で写真をチェックしてみてください。
*院政期の文化について詳しくはコチラ

日本史科予備校講師。学びエイド認定鉄人講師。
首都圏の予備校を中心に出講し、その講義は「するする頭に入ってくる」「勉強しなきゃと意識が変わる」「出てきた土地に興味が湧く」と受験生に高い支持を得ている。
授業のコンセプトは「大学に行くのが楽しみになる授業」。
科目の内容はもちろんのこと、丸暗記のみに頼らない本番での知識の導き方・解き方、現場に足を運んで得た知見などをもとに大学に行っても役に立つ「受験科目」を展開。
受験生におくる言葉は「一生勉強、何のこれしき。」
「佐京由悠の日本文化史重要ポイント」
第1回 初の仏教文化、飛鳥文化
第2回 国家仏教の形成と白鳳文化
第3回 鎮護国家思想と天平文化
第4回 弘仁・貞観文化
第5回 国風文化(前編)
第6回 国風文化(後編)
第7回 院政期の文化