はい、お疲れ様でございます。
突然ですが、日本で最初に「電車」が走ったのはどこでしょうか。
1872年、新橋―横浜間でしょ!って、いやそれは「日本最初の鉄道」。
新橋―横浜間を走ったのは蒸気機関車ですよね。
鉄道というのは文字通り、「鉄」の「道」。
レールの上に車両を走らせ人やものを運ぶ交通機関です。
で、その上を走る車両の動力が蒸気なのか電気なのか、はたまたディーゼルエンジンなのかで「蒸気機関車」「電車」「気動車」などといった区別が生まれてきます。
現代においては、蒸気機関車や気動車は少なくなってきまして、都市部の鉄道の中心となっているのは電気で走る「電車」です。
★日本最初の「鉄道」についてはコチラ
おっと、のっけから「鉄」分が濃い目ですみません。
今日は、日本で初めて「電車」が走ったのは、実は京都なんです、という話がしたいのです。
電車を走らせるには「電気」が必要、その電気はどこから来たのでしょう。
そのヒント(というかほぼ解答)となるのが、今日の主役「琵琶湖疏水」なんです。
目次
琵琶湖疏水
疏水とは、他の水源から水を引く目的で造られた水路のこと。
琵琶湖疏水は琵琶湖から京都へ水を引く目的で作られました。
この琵琶湖疏水は京都に灌漑、上下水道用の水を供給するのみならず、その水力を利用した発電にも注目されて造られたものなのです。
まずはその歴史を見てみましょう。
【歴史】琵琶湖疏水の歴史
(幕末~明治)禁門の変・明治維新・東京奠都→人口の減少・産業の衰退
*京都府知事北垣国道が琵琶湖疏水を計画→技師田邉朔郎を起用
(1885)第一疏水着工
(1890)第一疏水完成
(1891)蹴上発電所運転開始 *現在は関西電力の無人発電所として運用
(1895)京都電気鉄道(日本初の電気鉄道、京都―伏見間)→(1918)京都市に買収、京都市電へ
(1912)第二疏水完成
幕末から明治にかけて、京都は歴史的な激動の渦の中にありました。
1864年の禁門の変、68年の明治維新、そして江戸を東京と改称し首都機能を京都からうつす「奠都」。
そうしたなかで京都の人口は減少、産業も衰退していくなかで活気が失われていきました。
そこで当時の京都府知事、北垣国道は琵琶湖疏水を計画したのです。
水力を利用した工場誘致や舟運による活性化を狙ったのです。
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田邉朔郎
そしてその際、技師として起用されたのが田邉朔郎でした。
田邉は工部大学校を卒業したばかりの21歳。大抜擢です。
Point 工部大学校
1877年に開校、85年より文部省所管。86年より東京大学へ吸収。
もとは工部省が創設した技術者養成学校でジョサイア・コンドルなどを教授に迎え、田邉朔郎をはじめ辰野金吾、高峰譲吉などを輩出。
21歳の田邉が起用されたのは他でもない、彼の工部大学校での卒業論文のタイトルが「琵琶湖疏水工事の計画」であり、その内容が非常に優秀であったからです。
この論文は海外雑誌にも掲載され、イギリス土木学会から賞をもらったほどでした。
1890年には第一疏水が完成すると、翌年には蹴上発電所が運転を開始します(みどころ参照)。
この蹴上発電所でつくられた電気によって、京都電気鉄道が1895年に運転を開始するのです。
当初は京都―伏見間での運転でしたが、徐々に延伸され、内国勧業博覧会開催地である岡崎へ到達しました。
★内国勧業博覧会についてはコチラ
のちに京都市に買収されて京都市電となり、さらに市電が全廃されると京都市バスがその機能を担うこととなり現在に至ります。
【みどころ】琵琶湖疏水のみどころ
南禅寺水路閣
前回とりあげた南禅寺境内にある水道橋。
お寺の境内に突如あらわる近代の赤レンガ建築です。
このミスマッチがいいんですよね~
1888年に完成し、これも田邉が設計・デザインしたもの。
市の指定史跡で超有名フォトスポット。
★南禅寺についてはコチラ
琵琶湖疏水記念館
なんと入場無料。
琵琶湖疏水の歴史を伝える資料館で屋外には南禅寺船溜まりがあり、水圧でのみ吹き上がる噴水もおすすめです。
無鄰庵
七代目小川治兵衛により作庭された山県有朋の別邸で、琵琶湖疏水の水を庭園に引き込んだもの。
ちょうど資料館を挟んで南禅寺の反対側に在ります。
詳しくは「【特集】歴史の舞台」でも紹介予定です。
蹴上インクライン
舟を運んだ傾斜鉄道の跡。
まぁ普通、舟というのは水の上を走るわけですが(そりゃそうじゃ)、
実はこの周辺は高低差が大きいため、疏水上を航行してきた舟は一度陸揚げして鉄道によって南禅寺船溜まりまで運んだのです。
現在は桜の名所にもなっており、一部中を歩くこともできるのでお散歩コースのなかにも組み込みたいところ。
「琵琶湖疏水」についての解説動画
★「琵琶湖疏水」についての解説動画はコチラから!
『佐京由悠の中学生からの京都の歩き方~修学旅行を100倍楽しむために~』
〔画像:京都フリー写真素材〕
日本史科予備校講師。学びエイド認定鉄人講師。
首都圏の予備校を中心に出講し、その講義は「するする頭に入ってくる」「勉強しなきゃと意識が変わる」「出てきた土地に興味が湧く」と受験生に高い支持を得ている。
授業のコンセプトは「大学に行くのが楽しみになる授業」。
科目の内容はもちろんのこと、丸暗記のみに頼らない本番での知識の導き方・解き方、現場に足を運んで得た知見などをもとに大学に行っても役に立つ「受験科目」を展開。
受験生におくる言葉は「一生勉強、何のこれしき。」
「佐京由悠の京都の歩き方」第1回 清水寺編第2回 六波羅蜜寺編第3回 八坂神社編第4回 智積院編第5回 三十三間堂編第6回 【特集】豊臣秀吉ゆかりの地第7回 南禅寺編
第8回 【特集】琵琶湖疏水~初めて電車を走らせた京都の電化事業~