はい、お疲れ様でございます。
今日ご紹介するのは智積院でございます。
智積院といえば、襖絵、とくに長谷川等伯の楓図なんかが有名ですが、それ以外にもたっぷり見どころ・歴史的背景のあるお寺です。
三十三間堂、京都国立博物館ともほどちかいところにあるお寺さんですので、ぜひコースに組み込んでいただきたいところです。
目次
智積院の歴史
(1130)真言宗の僧覚鑁が高野山に大伝法院を建立
(1140)教義上の対立から高野山→根来山移転
→紀州根来寺の塔頭として智積院建立
→学問所として大いに栄える
(1585)豊臣秀吉と対立→紀州攻め→全山炎上
(1598)豊臣秀吉没
(1601)徳川家康の恩命により智積院再興
(1869)勧学院焼失
(1882)金堂焼失
(1900)智積院を総本山に
(1975)金堂再建
真言宗の開祖、空海の開いた高野山。
この地に1130年、真言宗をつたえるためにもっとも重要なお堂とされる大伝法院を建立したのがのちに「興教大師」とされる覚鑁です。
で、この覚鑁さん、教義上の対立から高野山から同じく和歌山県にある根来山に修行の場を移し、紀州根来寺の塔頭(本寺の境内にある小寺)として智積院を作ったのがはじまりです。
覚鑁没後の智積院
覚鑁没後、智積院は学問所として大いに栄えました。
根来には、学僧の他に寺務などを行う行人と呼ばれる人々が多く住んでいたのですが、彼らは自衛の必要性などから武装し、根来衆と呼ばれていました。
で、これに目を付けたのが豊臣秀吉なんですね。
豊臣秀吉は彼らのもつ軍事力(鉄砲で武装していました)と、信長と敵対していた雑賀衆(浄土真宗本願寺派、つまり一向一揆の拠点)との結びつきを警戒し、1585年、これを襲撃します。「紀州攻め」です。
これにより智積院は伽藍の中心部のみを残して全山炎上したようです。
紀州攻めについて詳細はこちら。
江戸時代以降の智積院
その後、豊臣秀吉没後、徳川の世となりましたが、江戸時代になっても豊臣秀吉は、神格化された上で未だに民衆に絶大な人気を誇っていました。
家康にとっては、そのこと自体警戒すべきことです。
一方、智積院は学徒の増加により新たな寺地を求めていました。
家康としては、秀吉関係の寺社を破却し、秀吉と対立した智積院に寺地を下賜することを考えます。
秀吉を祀った豊国社破却に伴い、秀吉の遺児・鶴松を弔う寺院(祥雲寺という)を下賜し、「都一番の寺」として復活を遂げたのであります。
その後、明治期に2度、大きな火災に見舞われますが、その都度見事に復活し、1900年には智積院を真言宗智山派の総本山とすることとなりました。
【みどころ】収蔵庫・名勝庭園・金堂
収蔵庫
長谷川久蔵「桜図」、長谷川等伯「楓図」
もともと祥雲寺(秀吉の遺児の菩提を弔った寺)の6部屋に渡って紺碧障壁画を描いたもの。
「桜図」→長谷川等伯の息子・久蔵25歳の時の作品 翌年に死去
「楓図」→久蔵死後、等伯が自らを奮い立たせて描き上げた作品 等伯55歳の時の作品
収蔵庫に行きますと、自動音声ガイドつきで至近距離でこれらを眺めることができます。
《Point》濃絵
金箔を貼った上に群青・緑青・朱などの濃彩で描いたもの。
濃絵の障壁画のことを紺碧障壁画という。
上記作品の他に狩野永徳の唐獅子図屏風なども有名。
名勝庭園
「利休好みの庭」と呼ばれる東山随一の庭。秀吉の祥雲寺の庭が原型とも言われいます。
ツツジのさく5月下旬から6月下旬が見ごろです。
金堂
弘法大師(空海)生誕1200年記念事業として1975年に再建されました。
本尊である大日如来を安置しています。
ちなみに再建される前の金堂には徳川綱吉の母桂昌院から資金提供されています。
【周辺スポット】
・三十三間堂
→次回紹介!
・京都国立博物館
こちらの明治古都館の建築にあたったのは片山東熊。
イギリス人コンドルに学んだ建築家です。
・方広寺・豊国神社→「特集・豊臣秀吉」で紹介!
【フカボリ】豊臣秀吉と京都東山
本稿には何度も豊臣秀吉の名前が登場しますが、この京都東山の地は実は豊臣秀吉と関係深いところなのです。
豊臣秀吉は1598年に伏見城でその生涯を閉じると、京都東山の阿弥陀ヶ峰に埋葬されます。
そして「豊国大明神」として祀られ、阿弥陀ヶ峰山頂から大和大路までの広大な社地を占める豊国社がつくられました。
秀吉の7回忌には多くの人が訪れ、その人気に対し家康が脅威を感じたのは先述の通りです。
なるほど、そこで家康は豊国社を破却し、以前秀吉と対立していた智積院に寺地を提供したのですね。
京都東山と秀吉との関係については、次々回の「特集・豊臣秀吉」をお楽しみに!
智積院の基本データ
【基本データ】
アクセス 市バス「東山七条」バス停下車すぐ
京阪電車「七条」駅下車徒歩10分
拝観料 一般500円 中高生300円 小学生200円
拝観時間 9:00~16:00
*新型コロナウイルス流行前の情報です。現在の基本データについては公式HPをご確認ください。
智積院についての解説動画
★智積院についての解説動画はコチラから!
『佐京由悠の中学生からの京都の歩き方~修学旅行を100倍楽しむために~』
「智積院」
〔画像:京都フリー写真素材〕
日本史科予備校講師。学びエイド認定鉄人講師。
首都圏の予備校を中心に出講し、その講義は「するする頭に入ってくる」「勉強しなきゃと意識が変わる」「出てきた土地に興味が湧く」と受験生に高い支持を得ている。
授業のコンセプトは「大学に行くのが楽しみになる授業」。
科目の内容はもちろんのこと、丸暗記のみに頼らない本番での知識の導き方・解き方、現場に足を運んで得た知見などをもとに大学に行っても役に立つ「受験科目」を展開。
受験生におくる言葉は「一生勉強、何のこれしき。」
「佐京由悠の京都の歩き方」第1回 清水寺編第2回 六波羅蜜寺編第3回 八坂神社編
第4回 智積院編