単位を考えれば物理がわかる


物理を学ぶ上で大事にすることは「測ること(測定)」と「比べること(比較)」です。そこで重要になってくるのが「単位」です。

例えば、長さを測って比べるために、$\rm{m}$(メートル)という単位をつけていますよね。
今回は、物理では$\rm{s}$(秒)や$\rm{kg}$(キログラム)などの単位を1つ1つ追っていくことによって、式の理解が深まるという話をしていきます。

 

物理は「単位を持つ量」を扱う

一般的に数学では、$x$や$y$に単位をつけずに扱います。数学の$y=ax+b$には、普段単位をつけません(文章題などで単位がつくこともありますが)。一方物理では、$x\rm{[m]}$や$t\rm{[s]}$というように単位を持つ量(物理量:意味付けられた量)を扱います。

 

物理は「単位を持つ量」を扱う――等加速度運動の式


例えば、$v=v_0+at$という等加速度運動の式は、速度$v\rm{[m/s]}$、加速度$a\rm{[m/s^2]}$、時間$t\rm{[s]}$というようにそれぞれに単位がついています。単位込みで式を読んでみると、$v\rm{[m/s]}$$=v_0\rm{[m/s]}$$+a\rm{[m/s^2]}$$×t\rm{[s]}$となります。ここで、単位だけに着目すると、$\rm{[m/s]}=\rm{[m/s]}+\rm{[m/s^2]}×\rm{[s]}$です。

$\rm{[m/s^2]}=\rm{\frac{m}{s^2}}$という意味なので、$\rm{[m/s^2]}×\rm{[s]}$の部分は、$\rm{[\frac{m}{s^2}]}×\rm{[s]}$となります。数学の文字式の計算では、$\frac{a}{b^2}×b=\frac{a}{b}$というように、約分して計算できます。

これと同じように、$\rm{[\frac{m}{s^2}]}×\rm{s}=\rm{[\frac{m}{s}]}$というように単位も約分して計算できます。すると、先ほどの式の単位は、$\rm{[m/s]}=\rm{[m/s]}+\rm{[m/s]}$というようになります。右辺は、$\rm{[m/s]}+\rm{[m/s]}$で、同じ単位を足しています。これは、リンゴが$3個+4個=7個$というのと同じで、同じ単位だから足し算していいということになります。小学生の時に$3個+4人=7個$など、単位が違うものを足してはダメと教わったことがありますね。これで、左辺と右辺の単位が$\rm{[m/s]}$で一致し、物理の式としてはOKということが分かります。

 

物理は「単位を持つ量」を扱う――弦を伝わる波の速さ

他の例を挙げてみます。波の単元で、弦を伝わる波の速さ$v=\sqrt{\frac{T}{\rm{\rho}}}$という式があります。ここで$T$は弦の張力の大きさで$\rm{[N]}$、$\rho$は線密度で$\rm{[kg/m]}$です。速さは$v\rm{[m/s]}$ですが、このままだと単位の計算ができません。

そこで、運動方程式$ma=F$を考えると、$\rm{[kg]}×\rm{[m/s^2]}=\rm{[N]}$です(これは、$\rm{[N]}$という単位が出てくるときや、出したいときにできるようにしておくこと)。

すると、$v=\sqrt{\frac{T}{\rm{\rho}}}$の単位のみ考えると、$v=\sqrt{\rm{\frac{[kg・m/s^2]}{[kg/m]}}}=\sqrt{\rm{\frac{m^2}{s^2}}}=\rm{[m/s]}$となり、速さ$v\rm{[m/s]}$と単位が一致し、OKということです。

 

単位のないものもあるので注意!

最後に、静止摩擦係数$μ$など、単位がないものもあります。これは、単位がないものとして正しく扱って下さい。例えば、力$F\rm{[N]}$、垂直抗力$N\rm{[N]}$を用いた式$F=μN$は、$μ$には単位がないので$\rm{[N]}=\rm{[N]}$となります。

 

 

おわりに――答えの確認にも役立つ「単位」


どんな物理の式でも今回の記事のことが成り立っていますので、1つ1つの式に対して単位の計算(次元解析)をしてみて下さい。

 

問題を解いた答えが正しいものなのかどうかチェックする際にも、ただ解き直すだけでなく、単位が合っているかどうか確かめてみましょう。根気よく続けていると、間違っている式を見ただけで違和感を覚えて、ケアレスミスに気づくことができるようになります。

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