こんにちは、安田です。
今回は、漢文の中に出てくる「置き字」について、大学受験のレベルでどこまで知識として持っておくべきか、学習の中でどのくらいフォーカスを当てるべきかについてお話しします。
目次
そもそも「置き字」とはなにか?
みなさん、置き字についてどう認識しているでしょうか?
多くの人は「読まない字」くらいに捉えているのではないかなと思います。
「読まないくせになんであるんだ!」と思っている人もいるかもしれません。
置き字=訓読したときに読まない助字
正確には、「訓読したときに読まない助字」を「置き字」と呼んでいます。
置き字も、もとの中国語では読まれていたもの
漢文はもともと中国語で、我々が「置き字」と呼んでいるものは、もとの中国語では読まれていたものです。そして、文章を読む上では欠かせない、なんらかの意味を表現しているのです。
それを日本語で訓読した時に、しっくりくる日本語と対応するものがないな、となると、読まないということが起きます(焉、兮など)。
訓読する際、送り仮名にその字の意味を反映させていることもある
また、訓読する際に、送り仮名にその字の意味を反映させていることもあります(而・於など)。
これらはその字の持つ働きや、送り仮名にどう反映されるのかを知識として持っておくと読解の手助けになりますから、知っておくと有利です。特に国公立大学の2次試験や私立大学で漢文を解く予定の人は、主要なものを押さえておきましょう。
代表的な置き字を2パターンに分けて紹介
ここでは、「A.訓読に反映される置き字」と「B.意味を添える置き字」に分けて、それぞれ押さえておきたいものを紹介します。
詳細は、教科書、漢文必携や体系漢文などの学校配布の参考書、漢文道場基礎編などの問題集にまとまっていますから、そちらを参照してください。
A. 訓読に反映される置き字
而・于・於・乎
【而】接続の働きを持ち、前後の文を繋げる助字。
- 順接:~テ、~シテ
〔例〕温故而知新。(故きを温めて新しきを知る) - 逆接:~モ、~ドモ
〔例〕視而不見。(視れども見えず)
【于・於・乎】補語の前に置いて、場所・時間・対象・比較・受身などを表す。
- 場所・時間:~ニ
〔例〕遇於赤壁。(赤壁に遇ふ) - 対象:~ニ、~ヲ
〔例〕吾十有五而志乎学。(吾十有五にして学に志す) - 比較:~ヨリ(モ)
〔例〕苛政猛於虎。(苛政は虎よりも猛なり) - 受身:~ニ…ル(ラル)
〔例〕労力者治於人。(力を労する者は人に治めらる)
B.意味を添える置き字
焉・矣・兮
【焉・矣】断定・強調・疑問・反語
- 断定・強調
〔例〕我常聞之矣。(我常に之を聞く) - 疑問・反語
〔例〕吾不惴焉。(吾惴れざらんや)
※この使い方では送り仮名に「~ンヤ」が付くAパターンになる。
【兮】語調を整える
〔例〕力抜山兮気蓋世。(力は山を抜き気は世を蓋ふ)
同じ字でも、置き字として取る場合もあれば、普通に読む場合もあります。
〔例〕割鶏焉用牛刀。(鶏を割くに焉くんぞ牛刀を用ゐんや)
この場合は、「焉くんぞ」と読んで反語の用法になります。
文の中での位置でおおよそ決まるので、詳細は割愛しますがこれらも教科書や参考書で確認しておくことをお勧めします。
2つのステップで習得する「置き字の効果的な勉強法」
参考書に載っているものを丸暗記する……でも構わないのですが、ただ暗記しただけでは、他の句形と同様、読む際に活用するのは難しいでしょう。
- 置き字をチェックする
- それぞれの意味・用法を教科書の資料ページ・参考書の一覧で確認する
①置き字をチェックする
まず、教科書や問題集、模試などで扱った文章を題材にして、置き字をチェックします。
時々、「読まないから」という理由で置き字にバツ印をつける人もいますが、それはやめましょう。特に、訓読に反映される置き字はこの字があるだけでどう読むかが見えてくることも多いですから、むしろ特別に注目するくらいの意識を持ちましょう。
②それぞれの意味・用法を教科書の資料ページ・参考書の一覧で確認する
チェックしたら、それぞれどういう意味・用法で使われているか、教科書の資料ページや参考書に一覧でまとまっているところを参照して、全部確認しましょう。
地道な方法ですが、このような勉強を数ヶ月やるだけで、意識せずともしっかり内容が取れるようになってくるものです。
おわりに
置き字は特別に習うこともほとんどないでしょうし、問題集を使って勉強している人もあまり着目しないと思います。過去問演習主体の勉強をしている人はなおさらでしょう。
ですが、こういう部分をおろそかにせずに取り組むことで、一字一字に対する意識や理解が高まります。それが「どんな文章が出てきても対応できる力」に繋がります。入試問題は一期一会ですから、初見の文章に対応できる力を身につけないといけません。
特別に大量の時間を割いて取り組む必要はありません。普段の勉強にちょっと意識して確認を組み込む。わずか数分プラスして確認するだけです。これを継続するだけでかなり安定した読解力を身につけられるのですから、これからは置き字にも着目して、受験勉強を進めていきましょう。