どうも, みなさんこんにちは。
高橋佳佑です。
今回は\(\cos36°\)の値をいろいろな解法で求めてみようと思います。
この三角比の値はとても有名で数学Ⅰ, Ⅱ, ⅢCそれぞれで求める方法があり, 入試でもよく題材になっています。
難易度が高い問題では, 問題を解いている過程で\(\cos36°\)の値が必要になるということもあります。結果を覚える必要はありませんが, 導出過程は是非理解しておきたいです。
目次
数学Ⅰ「三角比」の知識を使って求める方法
まずは数学Ⅰ「三角比」の知識を使って求めてみましょう。
1辺の長さが1の正五角形を考える
図のような$1$辺の長さが$1$の正五角形$\rm{ABCDE}$を考えます。
正五角形はとてもきれいな図形で, 対角線を引いたときに現れる角度はすべて$36^\circ$の倍数になります。図では黒丸$1$つで$36^\circ$を表しています。
$2$つの対角線$\rm{AD}, \rm{CE}$の交点を$\rm{F}$とおき,
対角線の長さを\(x\)とおけば, $\bigtriangleup \rm{CDF}$と$\bigtriangleup \rm{ACF}$は二等辺三角形なので$\rm{CD}=\rm{CF}=\rm{AF}=1$となるから$\rm{DF}=$\(x-1\)となります。
$\bigtriangleup \rm{ACD}$と$\bigtriangleup \rm{CDF}$はともに頂角$36^\circ$の二等辺三角形となり相似です。
したがって, \(1:(x-1)=x:1\)が成り立つから
\(x(x-1)=1\)
\(x^2-x-1=0\)
\(x=\frac{1\pm\sqrt{5}}{2}\)
\(x>0\)ですから\(x=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)
ここで, $\rm{F}$から$\rm{AC}$に垂線$\rm{FH}$をおろすと, $\bigtriangleup \rm{ACF}$は二等辺三角形なので$\rm{H}$は$\rm{AC}$の中点となります。
$\bigtriangleup \rm{AHF}$に着目すれば
\(\cos36°=\cfrac{\rm AH}{\rm AF}={\rm AH}=\cfrac{\rm AC}{2}=\cfrac{x}{2}=\cfrac{1+\sqrt{5}}{4}\)
となります。
数学Ⅱ「三角関数」の知識を使って求める方法
次に数学ⅡB「三角関数」の知識で\(\cos36°\)の値を求めてみます。
三角関数の公式を用いる
ここでは, 三角関数の公式を使います。
3倍角の公式:\(\sin3\theta=3\sin\theta-4\sin^3\theta\)
これらは加法定理から導けます。結果は覚えることをお勧めします。
また, 次の公式も使います。
これらを使い, 実際に計算してみます。
\(\theta=36°\)とおくと, \(5\theta=180°\)となります。
ここで, $108^\circ =180^\circ -72^\circ$ですから
\(3\theta=180°-2\theta\)
となります。よって,
\(\sin3\theta=\sin(180°-2\theta)=\sin2\theta\)
が成り立ちます。
$2$倍角, $3$倍角の公式から
\(3\sin\theta-4\sin^3\theta=2\sin\theta\cos\theta\)
\(\sin\theta=\sin36°\neq0\)ですから, 両辺\(\sin\theta\)で割ると
\(3-4\sin^2\theta=2\cos\theta\)
\(\sin^2\theta=1-\cos^2\theta\)なので
\(3-4(1-\cos^2\theta)=2\cos\theta\)
\(4\cos^2\theta-2\cos\theta-1=0\)
\(\cos\theta=\cfrac{1\pm\sqrt{5}}{4}\)
\(\cos\theta=\cos36°>0\)ですから
\(\cos\theta=\cfrac{1+\sqrt{5}}{4}\)
と求められます。
数学ⅢC「複素数平面」の知識を使って求める方法
最後は数学ⅢC「複素数平面」の知識で\(\cos36\)°の値を求めてみます。
ド・モアブルの定理を用いる
ここではド・モアブルの定理を使います。
$(\cos\theta+i\sin\theta)^n=\cos n\theta+i\sin n\theta$
が成り立つ。
さらに, 等比数列の和の公式から\(z\neq1\)のとき
\(1-z+z^2-z^3+z^4=\frac{1-z^5}{1-z}\)
となるから,
\(1-z^5=(1-z)(1-z+z^2-z^3+z^4)\)
よって,
\(z^5-1=(z-1)(z^4-z^3+z^2-z+1)\)
と因数分解できることが分かります。結果はよく使うので覚えてもよいでしょう。
4次の相反方程式
また, $\color{red}{a}$$x^4$$+\color{blue}{b}$$x^3 +cx^2 +$$\color{blue}{b}$$x+\color{red}{a}$$=0$のような方程式を$4$次の相反方程式と呼びます。
\(x+\frac{1}{x}=t\)とおくと解けます。
さて, 実際に計算してみましょう。
\(z=\cos36°+i\sin36°\)とおくと,
\(z^5=\cos36°\times5+i\sin36°\times5=\cos360°+i\sin360°=1\)
よって,
\(z^5-1=0\)
\((z-1)(z^4-z^3+z^2-z+1)=0\)
\(z\neq1\)であるから
\(z^4-z^3+z^2-z+1=0\)
\(z=\cos36°+i\sin36°\)であるから両辺\(z^2\)で割ると
\(z^2-z+1-\frac{1}{z}+\frac{1}{z^2}=0\)
\(z^2+\frac{1}{z^2}-\left(z+\frac{1}{z}\right)+1=0\)
\(t=z+\frac{1}{z}\)とおくと\(z^2+\frac{1}{z^2}=t^2-2\)となるから
\(t^2-2-t+1=0\)
\(t^2-t-1=0\)
\(t=\frac{1\pm\sqrt{5}}{2}\)
ここで,
\(t=z+\frac{1}{z}=z+z^{-1}=\cos36°+i\sin36°+\cos(-36°)+i\sin(-36°)=2\cos36°\)
となるから, \(t>0\)なので
\(t=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)
よって, \(2\cos36°=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)から\(\cos36°=\frac{1+\sqrt{5}}{4}\)と求められます。
おわりに
今回はいろいろな解法で\(\cos36°\)の値を求めてみました。
どの解法も頻出テーマでとても大事なポイントが含まれています。導出過程を理解し, 実際に手を動かして求めてみてください。
また, 同様の方法で\(\cos72°\)や\(\sin18°\)の値を計算できます。こちらも是非挑戦してみてください。
それでは,今回はこの辺で!