こんにちは、羽場です。
現代文の学習で「文章要約」の重要さが語られた経験はありませんか?
入試でも、一橋大学や慶應義塾大学の文学部をはじめとして、文章要約問題が出題されることもあります。
とはいえ、要約に苦手意識を抱えていたり、どうすれば良いのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
今回は拙著『スマートステップ現代文』第2章の第11節の短文演習、四方田犬彦『世界の凋落を見つめて クロニクル2011-2020』を通して、文章要約との向き合い方を紹介していきたいと思います。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
今回の記事は問題を解いた上で、本書の解説と合わせてご覧いただくとより効果的です。
目次
要旨要約の基本となる「手順」
「要約」と言われると、「文章の縮図を作れば良い」「(形式・意味)段落ごとの話題をつなぎ合わせれば良い」と考えるかもしれません。しかし、その考え方は間違っているとまでは言えませんが、それだけでは不十分なケースも多いものです。
要約する際は次のようなイメージで取り組んでいくと良いでしょう。
- 各要素の関係性を意識しながら全体像をつかむ
- 形式段落(・意味段落)の役割や関係性を確認する
- 結論につながる段落・要素を捉える
- 字数に応じてまとめていく
「要旨要約」の解答を完成させるためには、筆者の論の中心をまとめていくことが必要です。ただ単に形式段落の中心の話題をつなぎ合わせるだけでなく、結論につながるようにきちんと「再構成」することが求められています。
ここからは各段階をもう少し掘り下げていきましょう。
要旨要約の基本①:要素の関係性をおさえる
本題の「要約」について考える前に、確認しておきたいことがあります。
それは次のような「入試に出題される文章の各要素の関係性」です。
文章というのは基本的に、
- 単語・(連)文節
- 文
- 段落(形式段落)
- 意味段落
- 文章(全体)
という流れに沿って、文章というのは作られていると考えて良いでしょう。
私たちも基本的にこの流れに沿って文章を読んで、理解していきます。
要約を支えるのは「基本的な文章読解の力」
文章を要約する際にまず求められるのが基本的な文章読解の力です。
要約が苦手な人の答案では、自分が気になったもの(たとえば対比の箇所とか)だけをまとめているケースがよく見られます。あるいは、単なる具体例に過ぎない部分をまとめているような答案もよく見かけますね。
「具体例は必ず省かなければならない」というわけではありませんが、筆者の論の中心をきちんと述べていなければ適切な要約とは言い難いものです。
要約では、「基本的な文章読解の力」に基づいて文章の内容を適切に理解すると同時に、述べられている事柄の関係性をきちんとつかむことが求められています。
要旨要約の基本②:文同士・段落同士の役割や関係性をつかむ
「述べられている事柄の関係性」をおさえるために意識すべきことは何なのでしょうか。
それは、以下のとおりです。
- 文構造(主述関係など)を把握して一文を理解する
- 文と文の関係性を意識しながら形式段落の内容を把握する
- 形式段落同士の関係性を意識しながら意味段落の内容を把握する
それぞれの段階で、「この部分は筆者の主張にあたる箇所か、その主張を補強する例や説明の箇所か」確認しながら読み進めましょう。
形式段落同士の関係性をつかみながら文章の全体像が把握できれば、ひとまず要旨要約の入り口にたったと考えて良いでしょう。
要旨要約の基本③:結論につながる段落・要素を捉える
それぞれの段落の話題や役割、関係性がつかめたら、「筆者の主張」「論の中心」をまとめる段階に入っていきます。
その際に重視すべきことは次の2つでしょう。
- 文章を通して筆者が提示する「結論」は何か
- 結論を導く「論」にあたる段落・要素はどれか
これらのことを考えていく上で、さきほど把握した「形式段落ごとのつながり」が役に立つでしょう。
段落にも役割がある
文同士が「論」→「例」→「論」の関係になっている場合があるということは、本書『スマートステップ現代文』第2章第6節で解説しています。
これは段落でも同様です。
全ての段落が筆者の「論の中心」とは限らず、前の段落で述べたことを具体的に説明しているに過ぎなかったり、補足しているだけだったりする場合もあります。
要約解答を書く前に、この分類をきちんとしておくことで、筆者の論の展開を整理することができるでしょう。文章全体の中で、筆者が中心として論じたい内容、結論につながる要素をまとめていく意識を持って解答を作り上げていきます。
第2章第11節[短文演習]の場合
さて、これを踏まえて今回の短文演習問題を見てみましょう。詳細は本書を見ていただくとして、この記事では文章の通読は完了した後のポイントを確認していきます。
今回の段落同士の関係性をまとめると次のようになるでしょう。
- 第①・②段落:フォースターの論
- 第③・④段落:現代社会はフォースターと正反対
もう少しだけ詳しく見てみます。
第①・②段落の関係性は「抽象→具体(説明)」
この部分についての説明は不要かもしれません。
第①段落で紹介されている「フォースター」がどのようなことを述べているのか、具体的に説明しているのが第②段落ですね。フォースターの論の中では「情報」と「文学」が対比されていることは押さえておきたいところです。
したがって、第①段落と第②段落は同じ意味段落に属すると考えてよいでしょう。
第③段落の構造に注目する
注目してもらいたいのは第③段落です。
第1文(現代の社会〜進んでいる。)で第②段落までの内容と対比されることが理解できます。とはいえ、「どのように進んでいるか」という点についてはまだわかりません。
そこで、続く文(インターネット〜襲ってくる。)を通して「現代社会がどのような方向に進んでいるのか」が具体的に説明されています。そしてさらに、第3文から最終文まで(どの言葉が〜何だろう。)で、例を交えながら現代社会の特徴を具体的に説明していますね。
第④段落と第③段落の関係性に注目する
先ほど見ていた第③段落では、「現代社会」がフォースターの述べる社会と正反対であることが示されていました。では、第④段落ではどうなっているのでしょうか。
冒頭で「文学はといえば、」と述べられていることに注目しましょう。これは第③段落最終文(もちろん〜何だろう。)に登場する「ネット情報に対しては」と対応した表現です。
この冒頭文(文学はといえば〜ことになる。)の段階で、前段落で言われていたインターネット(情報)と対比されていることが把握できますね。
ただし、話題としては第③段落と同様に、現代社会の特徴です。つまり、第③段落では現代社会の「情報」面、第④段落では現代社会の「文学」面について述べていることがわかります。
要約解答を作成していく
今回の文章では、筆者はどうやら「現代社会の特徴」について論じているようです。そしてそれを、「『フォースターの論』とは違うよね!」という形で述べています。
本書では「100字要約」という形式で要約解答例を示しているので、その字数に合わせて要約してみましょう。
この字数では、多くの要素を盛り込むことはできないので、「フォースターの論」と「筆者の考える現代社会の特徴」を端的に表している部分のみまとめていく形になります。
※pp.170-171の下段でピックアップしている要素に注目していくとイメージが掴めるはずです。
200字要約など、字数が増えた場合、第③・④段落の具体説明部分を要約して盛り込みながら調整していくことになります。
要旨要約をする方法:まとめ
さて、ここまで『スマートステップ現代文』第2章第11節を用いて、要旨要約について解説してきました。
まとめると、
- 各要素の関係性を意識しながら全体像をつかむ
- 形式段落(・意味段落)の役割や関係性を確認する
- 結論につながる段落・要素を捉える
- 字数に応じてまとめていく
入試で要約が出題されるという受験生はもちろん、「文書から情報をまとめる力」は今後も欠かせない能力です。『スマートステップ現代文』では、全ての問題に100字要約例をつけています。
できそうな問題からでも構わないので、要約にも挑戦してみではいかがでしょうか。
『スマートステップ 現代文』書籍情報
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第2章「読解スキル編」補講 | |
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