こんにちは、羽場です。
今回は第2章の第9節の短文演習、志賀直哉「流行感冒」の本文を読む際に押さえておきたいポイントを解説します。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
今回の記事は問題を解いた上で、本書の解説と合わせてご覧いただくとより効果的です。
目次
小説文の心情把握は「きっかけ」と「反応」をつなぐ
今回のテーマは「心情把握」です。小説が苦手という人が一番苦戦する部分ですね。
「心情把握」と言われると難しいと感じるかもしれませんが、読解問題において注目するのは「きっかけ」と「反応」の関係性です。
少し細かく見ていきましょう。
心情にまつわる一連の流れ
小説で心情把握問題が出題される場合、基本的には次の流れが存在します。
日常生活では、何の前触れもなく感情が揺れ動いたり、突発的な行動をとることはあるかもしれません。しかし、大学入試の小説で心情把握問題が出題される際は、原則として「きっかけ」が存在します。
したがって、心情説明問題では「事態→心理→行動・反応」の流れをきちんと整理して考えていく必要があります。
心情を説明するときは「事態」と「心理」をセットで
心情を説明する際は「事態」と「心理」をセットで説明します。これは記述解答の場合も、記号選択問題の場合も基本的には変わりません。
「事態+心理」で説明しなければならない理由
どうして、きっかけとなる「事態」と「心理」をセットで説明しなければならないのでしょうか。次の例で考えてみましょう。
- 志望校に合格したので嬉しい。
- 友人に褒められたので嬉しい。
どちらも同じ「嬉しい」という心理が表現されています。しかし、「志望校に合格した」嬉しさと「友人に褒められた」嬉しさは果たして同じなのでしょうか。同等に語ることはできないでしょう。つまり、きっかけによって細かいニュアンスは異なるということです。
そこで、心情を「正確に」説明するために、きっかけとなる事態とセットで説明する必要があるわけです。
【短文演習】志賀直哉「流行感冒」で確認する
それでは、短文演習の問題を見てみましょう。今回は志賀直哉「流行感冒」からの出題です。
リード文から情報を読み取る
まず、リード文に注目してください。リード文に書かれている情報は、読解の上で前提となる情報です。「必要だから書かれている」という意識で向き合いましょう。
とあります。ここから、
- スペイン風邪が猛威を振るっている
- そんな中で女中の「石」が芝居に行ったのではないか
→感染しているのではないかと考えている可能性 - 「石」を「左枝子」から遠ざけようとしている
少々警戒しすぎなきらいもありますが、コロナ禍を経験した我々にも少し理解できる感覚かもしれません。
事態→心理を読み取る
今回は設問にもなっている、傍線部Aまでの流れを確認していきます。
まずは2行目の「馬鹿。……」という「私」のセリフに注目しましょう。このセリフを「私」が「不機嫌を露骨に出し」ながら発しているのはなぜでしょうか。
そう、リード文で書かれていた通り、スペイン風邪が大流行している中で芝居を見に行ったであろう「石」が「左枝子」を抱いていることがきっかけです。
つまり、この場にいる全員が不機嫌/不快な状態であることが把握できます。
そして、このような状況の中で「左枝子」は傍線部Aのような反応を示します。この背景にある事態を捉えましょう。
この部分を整理してみましょう。
このように、小説の問題では「事態」「心理」「行動・反応」それぞれの間を繋ぎながら心情理解を深めていきましょう。
『スマートステップ 現代文』書籍情報
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第2章「読解スキル編」補講 | |
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