こんにちは、羽場です。
今回は第2章の第7節の短文演習、池内了『科学と人間の不協和音』の本文を読む際に押さえておきたいポイントを解説します。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
今回の記事は問題を解いた上で、本書の解説と合わせてご覧いただくとより効果的です。
目次
現代文学習は「読解技術を蓄積していく感覚」が鍵
今回の節テーマは「対比・譲歩の捉え方」でした。
本文中の対比の関係、譲歩の表現に注目しつつ読み進めることがメインテーマです。
早速読み始めてみましょう。
第①段落の読解――現代社会の特徴
第①段落からいきましょう。
まず1文目(大量生産〜奨励されている。)で現代社会の特徴が語られていますね。
そして、続く2文目(そして〜なっている。)では、こうした社会と科学の関係性が述べられています。
このテーマについて知っておきたいことは様々ありますが、それは別の機会に紹介することとします。
ひとまずここでは、モノが大量に作られ、使い捨てられていくような社会をイメージしてみてください。
ここまでの流れはこんな感じですね。
- 現代社会=大量生産・大量消費・大量廃棄社会
- 科学や技術はこの風潮(大量生産など)に動員される
具体と抽象の関係に気づきたい
ここから先の展開に注目してください。
3文目(「役に立つ」〜出ないのだ。)・4文目(大学に〜得ない。)の部分で述べられていることは何でしょう。
そう、第2文で語られていた「科学や技術が大量生産……社会に動員される」ことについて具体的に説明しているんですね。
そして、最終文(物質的欲望〜と言えよう。)で、その内容をまとめています。
「その」文章が読めるだけではなく、他の文章でも「使える」ように
この「抽象→具体→抽象」の流れは、前節(第6節「具体・同義の関係」)で扱いました。
今回も、具体と抽象の関係を丁寧に追いかけていきながら、第1文と最終文の関係性に気づくということが重要だったんですね。
本書の第1章でも触れているように、現代文の学習で重要なのは「自分でできる」状態を目指すことです。
その文章・問題を通して学んだことを他の文章でも「使える」ようになる必要があります。
本書『スマートステップ現代文』の構成は、第2章で一つひとつルールを身につけていく作りになっています。
「これまでに学習したことを目の前の問題で試してみる」姿勢で取り組んでいきましょう。
対比の関係に気づく
第②段落に入りましょう。
第1文(消費社会〜構想がある。)は「消費社会に対して」と始まっていますね。
この「Aに対してB」という表現を見たときに、「対比の関係になるだろうなぁ」と予想できることが大切です。
「Aに対してB」
→AとBが対比の関係で語られる
ここでは、第①段落で述べられていた「消費社会」と「清貧の社会」が対比されることを掴みましょう。
「消費社会」については第①段落で詳しく説明されていました。
ですので、この後で具体的に説明してくれるだろうと期待しつつ読み進めます。
第②段落も具体と抽象の関係を活用する
ここでも、第6節で学んだ「具体・同義の関係」が生きてきます。
続く2・3文目(物質的な〜とも言える。)に注目しましょう。
これが「清貧の社会」というものです。
第①段落と同じように、「抽象→具体」の流れで詳しく説明されていたことを掴んでください。
疑問文(反語文)から次の話題を推測する
この段落の最後の2文は「不可能なのだろうか」「摘まれるのであろうか」という疑問文で終わっています。
ということは、おそらくこの後の段落でこの疑問文について考察されるはずですね。
そんな期待を込めて、続きを見ていきましょう。
譲歩の構造を見抜く
第③段落に進みます。
冒頭に「確かに」とあることに注目してください。
「確かに」という表現が出てきた場合、後ろにどんな表現が来ることが多いでしょうか。
ここでポイントになるのが今回の節テーマの一つ、譲歩の構文です。
「もちろん/たしかにA+逆接+B」
→Aで筆者とは異なる見解に譲歩し、逆接の後で筆者の主張を述べる
したがって「確かに」を見たとき、後ろに逆接の接続表現がくるかもしれないと考えましょう。
特に、今回のように「確かに」の後で筆者の主張と合わない内容が書かれている場合、この構文になる可能性は高いです。
実際、今回は15行目に逆接の「しかしながら」が登場します。
前の段落で筆者が「私はそのような社会を希求している」と述べていたものと一致します。
したがって、この部分が筆者の主張であると判断してチェックしておきましょう。
今回はここで本文が切られていますので、続きはありませんが、実際にはこの後に筆者の主張に関する考察が続くと考えられます。
というわけで、これを踏まえて問題を解いていきます。
『スマートステップ 現代文』書籍情報
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第2章「読解スキル編」補講 | |
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