こんにちは、羽場です。
今回は第2章の第6節の短文演習、久野愛『視覚化する味覚――色を彩る資本主義』の本文を読む際に押さえておきたいポイントを解説します。
現代文学習の第一歩を踏み出そうとしている皆さんに宛てて、2023年3月にZ会から拙著『スマートステップ現代文』が刊行されました。
現代文の学習に悩んでいる受験生、これから現代文学習を始めようと思っている受験生はぜひ手に取ってみてください。
今回の記事は問題を解いた上で、本書の解説と合わせてご覧いただくとより効果的です。
なお、本文は久野愛『視覚化する味覚――色を彩る資本主義』(岩波新書)からの出題です。
目次
具体と抽象の関係を丁寧につなぎながら第①段落を読解する
今回の節テーマは「具体・同義の関係」でした。
本文中の具体と抽象の関係、言い換えの表現に注目しつつ読み進めてみましょう。
まずは「抽象→具体」の流れをとらえる
まずは第1文(「一八七〇年代以降の〜」)と第2文(「例えば〜」)の関係に注目してみましょう。
その上で、続く第2文を見てみると「例えば」と始まっていることに気づきます。
ここでは、直前文で述べられていた生活の変化を具体例を通して説明していることに気づきましょう。
具体例の話題と"まとめ・例から導かれる論"に注目する
さて、具体例が出てきた際に取るべき行動はどのようなものでしょうか。
それは、具体例を読みながら「具体例の話題(=何についての具体例か)」を確認しつつ、具体例をまとめている箇所、具体例から導かれている論に注目していくことです。
今回の箇所で言うなら、まずは
- 話題:科学技術の発展や工業化による人々の生活の変化
をとらえることが重要でした。
ちなみに、「具体例を読み飛ばす」ことは不可能です。
「具体例も細心の注意を払って……」とまでは言いませんが、読み飛ばすことのないようしてください。
繰り返される「(具体→)抽象→具体」の流れをとらえる
続く部分にも注目していきましょう。
第3文(「また、〜」)から第5文(「こうして〜」)の関係に注目します。
この部分では、この「抽象→具体→抽象」の流れをおさえ、
- 話題:主観的感覚が客観的・科学的に扱えるようになった
- 導かれる論:それによって「品質判断基準」や「消費のあり方」も変化した
というつながりをとらえましょう。
"メタ"な視点で全体の「抽象→具体」をとらえる
ここまで、抽象→具体の関係を活用しながら第①段落の読解を進めてきました。
そしてこの時点で、あることに気づいた人もいるでしょう。
第1文から最終文までのつながりを捉えて、第①段落の全体像を掴む
すると、この段落全体(正確には「また、デパートの〜」とはじまる第6文まで)が冒頭で述べられていた【科学技術の発展や工業化による人々の生活の変化】を具体化していることに気づけます。
このように、抽象的な内容を具体化している箇所に遭遇した際の読み方も基本的には具体例と同様でよいでしょう。
このようにして、具体と抽象の関係を丁寧に追いかけていきながら、第1文と最終文の関係性に気づく。
今回はそれが第①段落の内容を把握したり要約したりする上で鍵を握っていました。
第①段落を踏まえて第②段落を読解する
続いて第②段落です。
そして、「こうした」ことを行うシステムが「感覚産業複合体(aesthetic industrial complex)」と呼ばれていることに注目します。
続く文の冒頭「これ」が指すのは前文内容ですね。
これが意味するところは「新しい五感経験」の誕生であると述べられています。
そして、直後の「例えば」から具体例が述べられるという構成になっていました。
文章から「具体」部分を取り除くとどうなるか
ここで、第①段落で確認してきた内容も踏まえて、文章全体の抽象部分だけ抜き出してまとめてみましょう。
今回の文章をものすごく簡単に整理してみると次のようになるはずです。
→五感や環境の認知の仕方への影響
→新しい五感経験の誕生
どうでしょうか。
中心部分は見抜けたと感じるかもしれませんが、これだけだと「わかるような、わからないような……」という印象を抱くのではないでしょうか。
具体(例)は読者の理解を助ける重要な役割を果たしている
抽象的な書き方は端的に筆者の主張を伝える一方で、それだけではうまく伝わらなかったり、誤解が生まれたりしかねません。
繰り返しますが、「具体(例)」部分を読み飛ばすことは避けるべきです。
本文を理解していくためにも、具体例をうまく活用していきましょう。
というわけで、これを踏まえて問題を解いていきます。
『スマートステップ 現代文』書籍情報
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第2章「読解スキル編」補講 | |
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