［連載小説］像に溺れる

次の日、四時間目が終わって席を立とうとすると、早川が目の前に現れた。 はじめて話す気がするけれども、早川はとくに身構える様子もなく、淡々とした調子で話しかけてく...

文化祭を十日後に控えたホームルームでは、出し物である脱出ゲームの具体的な中身について、芝原がぬかりなく取り決めを進行していった。 迷路内に仕掛ける罠をめぐるさま...

遠藤はもともと、別の二人の女子とよくつるんでいたはずだ。 白沢柚希と早川香莉奈という、特進クラスにおいては垢抜けた外見をしていて、器用に何でもこなせるタイプであ...

中間テストが終わってしばらくの間、教室には何やら息苦しい空気が充満し続けていた。 一人ひとりがテストの結果を待っているというだけではなくて、結果によってクラス内...

「法学入門」の内容は示唆に富んでいて、現実をどのような切り口から考えればいいか、確かな視座を与えてくれた。 冒頭では「法とは何か」を説明するため、法を成立させる...

家に帰り、買った本を読もうとしたが、それではなんだか古本屋の彼女に執着しているみたいで恰好がつかないように思い、普段通り英文法を勉強することにした。 椅子に座り...

自宅の最寄り駅の古本屋で、法律関係の本を探してみることにした。 ぼくは普段、自主的に本を読むことがなかった。 現代文の教科書に載っている文章や、模試などで出会う...

電車に乗っている間に、ぼくはポジティブな像を一つ作り出そうと思ったのだけれど、ポジティブな人間がよく使う言葉がなかなか思いつかない。 友だち、元気……そうした言...

サイコロを5回続けて振った時、3以上の目が2回以上起きる確率について、数学の後藤先生が解説している。 「こんなことやって何になるんだって思ってるでしょう？」 反...

夕飯を食べにリビングに行くと、950円の牛ステーキ弁当が机に置いてあった。 ぼくは椅子に座り、冷たいままの牛肉を口に運ぶ。 電子レンジが嫌いだった。待っている時...