[連載小説]像に溺れる 母の庇護下に留まることの意味――「像に溺れる」あとがき 10年ほど前に帰省した際、駐車場で実家の車を擦ってしまったことがある。コンクリート壁に仕切られた狭い駐車場で、免許取り立ての頃には苦労したものだが、そのときの私... 2023年2月5日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #110 像に溺れる――像に溺れる【最終話】 短い言葉を残して去っていった彼女の背中を、ぼくはもう追いかけようとは思わなかった。 曇りなく映じた生身の彼女は、ぼくとは交わらない軸の世界で生きようとしている。... 2022年10月29日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #109 君が見せてくれた世界――像に溺れる【最終章】 抱き上げたコーウの体は、私の手よりも少しだけ暖かかった。 世界が自分に害を為すことなどないと、いまだに信じ切っている表情に、大丈夫かこいつと思わずにいない。 成... 2022年10月22日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #108 和合――像に溺れる【最終章】 心臓に巻きつく冷たい鎖が、母の言葉で締めつけられる。 ぼくは管理される子どもにすぎない――自立した人格を備えた人たちのなかで、ぼくだけ未成熟なアメーバのように、... 2022年10月15日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #107 被膜の中で――像に溺れる【第5章】 「薬? 人身売買? いま彼は、そう言ったか?」 小柳はいまにも爆発しそうな感情を抑えつけるように、そうぼくに問いかけた。 あるいはそれは、感情を発露させるための... 2022年10月8日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #106 正義の向かう先――像に溺れる【第5章】 ――なんでアイツが? 急に目の前に飛び出してきた過去。 コーウの方に向かわなければいけない意識が、後ろの方に引っ張られ、どうにもよくない予感がする。 正直、あの... 2022年10月1日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #105 息差――像に溺れる【第5章】 文鳥のようにこぢんまりと軽やかな体に、飢えた豹みたいな、こちらを釘付けにする目つき。 何度も思い描いた姿がいきなり目の前に現れ、ふっと現実への接地感が奪われてし... 2022年9月24日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #104 回帰――像に溺れる【第5章】 バスを降りたぼくたちは、広大な寺院のような敷地に出て、入り口近くの大きなお堂に荷物を置くよう指示された。 お堂の外には折り畳み式のテーブルや食材の入った袋が大量... 2022年9月17日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #103 Re:――像に溺れる【第5章】 ぼくが席についてまもなく、隣に座ったのは同年代と思しき細身の男子だった。 「はじめまして、小柳といいます」 その表情は他の参加者と同様に柔和で、けれども同時に、... 2022年9月10日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #102 3-14D――像に溺れる【第5章】 「福永という人を知りませんか?」 ワークの途中、ぼくにヒマワリの折り方を教えにきた年配の女性に対し、ぼくはそう切り出した。 その質問にはぼくの持ちうる最大限の勇... 2022年9月3日 鹿間 羊市