[連載小説]像に溺れる #39 善の顔をした悪——像に溺れる【ANOTHER STORY —ヤナガワ—】 どっちにせよジゴウジトクは止まらなかった。 タバコは誰かにチクられ停学になった。 暫定パパは私に悪魔の因子が入り込んだといって家には空気清浄機が置かれ、霊験あら... 2021年6月12日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #38 飼育員——像に溺れる【ANOTHER STORY —ヤナガワ—】 片親だとバレたのは高校に入ってすぐだった。 知らないうちに、噂はコバエみたいに増殖して皆の脳を支配していた。 隠すつもりもなかった。 でも黙っていることは隠すこ... 2021年6月5日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #37 ジゴウジトク——像に溺れる【ANOTHER STORY —ヤナガワ—】 いつからか、エレキギターみたいな音が、頭のなかで鳴り続けている。 化石になった脳ミソが、ミキサーにかけられギューン、ギューンと悲鳴をあげる。 私は多分、脳髄をヤ... 2021年5月29日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #36 供え物――像に溺れる 部屋の中でポケットから取り出したヤナガワサンのタバコは、一切ぼくと打ち解ける気がないように見えた。 学習机に置かれた黒いパッケージは、あからさまな異物として周囲... 2021年5月22日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #35 奪われた核――像に溺れる 学校から駅までの商店街を歩いていると、芝原の父と映っていた奇妙な鳥のキャラクターがやたらと目に留まるようになった。 駅のポスターや、街頭フラッグの隅っこに彼らは... 2021年5月15日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #34 疑念――像に溺れる 古く飾り気のないそのホームページは、インターネット普及期に個人がマニュアルのまま作ったような安っぽさを感じさせた。 市議会議員である芝原の父が、学校に対して圧力... 2021年5月8日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #33 外圧――像に溺れる 突然、不快な発見に身体が硬直するのを感じる――ぼくがあそこで声をあげなかったのも、恣意的な選択にほかならないのではないか? 仮に前日、遠藤から嫌な思いをさせられ... 2021年5月1日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #32 恣意的な者――像に溺れる ヤナガワサンにとっては、タバコが見つかり、停学処分を下されることは、彼女の日常的な学校生活の延長上にあるのかもしれない。 けれども遠藤は、教員からの差別的な扱い... 2021年4月24日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #31 差別の黙殺――像に溺れる 矢川先生がヤナガワサンの机のところまでたどり着き、クラスの空気が一気に重くなる。 各々が心拍数を計測されていたとしたら、きっともうこの段階でタバコの存在は明らか... 2021年4月17日 鹿間 羊市
[連載小説]像に溺れる #30 持ち物検査――像に溺れる 校門を出たところに見覚えのある姿があった。 が、それが遠藤であることに気づくまで、妙に長く時間がかかったように思う。 彼女が私服だったから、というのではなかった... 2021年4月10日 鹿間 羊市