[数学]場合の数・確率から考える、公式との向き合い方

こんにちは。数学講師の大塚志喜です。
今回は,公式との向き合い方について「場合の数・確率」の分野を通して考えていきたいと思います。

場合の数・確率が苦手な人が多いのは「過剰に」公式に頼りすぎているから


「場合の数・確率」という分野は,その他の分野と比べて特に苦手な学生が多い分野だと感じています。
これは他の分野と比べて「過剰に」公式に頼りきりになっているからではないかと僕は考えています。

「場合の数・確率」の分野で一番厄介なところは,初見の問題を作りやすいということです。
見たことのない設定の問題を簡単に作ることができますから,他の分野よりも見たことのない問題に出会う機会がかなり多くなってきます。

 

大小2つのサイコロを振る試行で考える〝過度なこじつけ〟

するとどんなことが起こるかと言うと,過度な「こじつけ」が始まります。

有名なもので言うと,例えば大小2つのサイコロを振る試行を考えてみましょう。
この試行の結果は全部で36通りですが,この36通りはどのように計算しますか?

ほとんどの人(というかもはや全員?)は,

大のサイコロの目の出方が6通りで,さらに小のサイコロの目の出方が6通りであるから,6×6で36通り!と答えると思います。

 

これで正解なのですが,本当にしっかりと「今何が起こったか」がわかっている学生は非常に少ないと感じています。
今回の記事ではこのことについて深く掘り下げてみようと思います。

 

なぜ掛け算を用いているのかわかっているか

この問題を考えるときに僕がいつも強調して話すことがあります。
それは,

「なぜ掛け算を用いたのかちゃんとわかって掛け算をしているのか?」

 

ということです。

するとよくわかっていない生徒からは大抵このように返ってきます。

「え,同時に起こっているんだから掛けるに決まっているじゃないですか。」

 

この返事を聞くたびに僕は「あ,また大変な思い違いがここにも…」と内心思いながら授業を進めます。
僕はその生徒にすぐ次のような質問をします。

「では,問題が次のようになっていたらどうですか? 大小2つのサイコロがあり,まずは大のサイコロを振り出目を確認し,その後小のサイコロを振り出目を確認する。結果は全部で何通りありますか?」

 

もうこの質問の意図は分かりますよね?
生徒はサイコロを同時に振っていなくても掛けるのです。
答えは36通りですと返ってきます。

「同時じゃないのにどうして掛けたの?」と僕が尋ねると,生徒は大抵「いや,一個一個別々に振っても,同時に全部投げても結局同じことじゃないですか!」と返してきます。

これを僕は「こじつけ」と呼んでいます。

 

間違った考え方を正しい公式だと思い込むことが、苦手になる大きな原因


この考え方の厄介なところは,たまに当たってたまに外れるところにあります。
たまに当たってしまうもんですから自分の考え方は正しいのだと錯覚してしまい,いざ間違えると問題が悪いなどと言い始めます。

そんな博打のようなことを毎回やっていても当然実力などつくわけがありません。
しかし,「自分の考え方が根本的に間違っているのではないか?」という考えになかなか辿りつきません。

 

この分野を苦手に感じる原因はここにあるのではないかと思っています。

この分野が苦手な人は,「大切な技術を正しく身につけること」と「間違った考え方をしっかりと修正すること」を目標に学習を進めていかなければなりません。

 

間違った考え方を正しい公式と自分にインプットしてしまうことこそ,この分野が苦手になる大きな原因なのです。

 

2つのサイコロを振る試行に隠れている「積の法則」

では今回の2つのサイコロを振る試行にはどんな大事な技術が隠れているのかみていきましょう。

ここで大事になってくるのは「積の法則」と呼ばれている考え方です。
これを勘違いしている人が非常に多い印象です。積の法則とは,次のようなものです。

2つの事柄A,Bについて,Aの起こり方がm通りあり,その各々の起こり方に対してBの起こり方がn通りずつあるとき,結果は全部でm×n通りである。

 

教科書によって表記は変わってきますが,大体このようなことが書いてあります。
すると今回のサイコロですが,このように解釈するのが正しい計算の根拠になります。

大のサイコロの目の出方は全部で6通りあり,そのそれぞれに対して(1から6までのどの目が出たとしても)小のサイコロの目の出方が6通りずつあるので,積の法則より,目の出方は全部で6×6の36通りになります。

 

普段使う公式を「本当にわかっているか」

「積の法則」について,文章だけでは分かりにくいでしょうか。
簡単に説明すると,次のような樹形図がイメージできていますか?ということです。

この樹形図の様子を日本語で説明しているだけです。

このように,積の法則は字面通りに当てはめることが重要なのではなく,「樹形図をしっかりイメージして,その樹形図からパターンを数え上げるのを掛け算を用いてラクしているだけなんだ」としっかり理解することにこそ価値があります。

 

樹形図さえしっかりイメージできていれば,それを日本語で説明したものが積の法則なわけですからいちいち文章を覚える必要もないことですし,同時かどうかなんて全く関係がなかったことだとよく分かりますし(笑),樹形図がちゃんと見えている人からすると,掛け算を用いるのか足し算を用いるのか分かりませんでしたなんてことは100%起こりえないわけです。

上の樹形図を見て全部で6+6の12通りありますなんて答える人はいないのではないでしょうか。

これが,普段使う公式を「本当にわかっているか」の入り口なのではないかと思います。

 

考え方や公式を「正しく理解」し積み重ねる


そしてある程度勉強を進めている人はよくわかっていると思いますが,積の法則はここから先かなりの頻度で登場します。

理解が曖昧のまま先に進めばどうなるか,もう分かりますね。こじつけギャンブル大会が始まってしまいます。
こうならないためにも,積の法則だけでなくいろいろな考え方や公式を正しく理解しそれを積み重ねていくことが大切になってくるというわけです。

今回のお話はこのくらいにしておきましょう。次回の記事では「PとCの考え方」についていろいろ考えていこうと思います。また次回一緒にいろいろ考えていきましょう。それではまた次の記事で。

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