河野哲也『境界の現象学』設問詳細分析(センター試験 2020)

概観

前年と同様、リード文の誘導「『レジリエンス』という概念を紹介し、その現代的意義を論じたものである」と説明し、この「現代的意義」が最終段落14段落に「レジリエンスとは自己のニーズを充足し、生活の基本的条件を維持するために、個人が持たねばならない最低限の回復力である」とあり、最終文で「したがって、ケアする者がなすべきは、さまざまに変化する環境に対応しながら自分のニーズを満たせる力を獲得してもらえるように、本人を支援することである」とある。この結論を念頭に置いて本文冒頭から読み進めていくと、作問意図も把握しやすかっただろうと考えられる。

設問別分析

設問ごとの詳細分析は以下の通り。

設問別分析――問2

例年通りのヒント、得点源問題。
「レジリエンスとは、回復力、サステナビリティと類似の意味合いをもつが、そこにある微妙な意味の違いに注目しなければならない。」とあり、文構造が「○○は/---が、違いに注目」とあり、この構造が次文以降で「回復とは基準に戻ることを意味するが、レジリエンスでは、固定的な原型が想定されていない。絶えず変化する環境に合わせて流動的に自らの姿を変更しつつ、それでも目的を達成するのがレジリエンスである。レジリエンスは、均衡状態に到達するための性質ではなく、発展成長する動的過程を促進するための性質である。」とある。ほぼ結論と直結する内容と言える。選択肢も、「回復力やサステナビリティは戻るべき基準や均衡状態を期待するが、レジリエンスは環境の変化に応じて自らの姿を変えていく」とあり、対比関係がそのまままとめられている素直なものであった。選択肢前半で②と⑤に絞れる。②が答えである。

設問別分析――問3

最終段落の「したがって、ケアする者がなすべきは、さまざまに変化する環境に対応しながら自分のニーズを満たせる力を獲得してもらえるように、本人を支援することである」につながる「対応力/適応力」についてヒントとなるキーワードを取らせる問題。「ここでもレジリエンスにとって重要な意味を持つのが、『脆弱性』である」の言い換えを問うている。2行後以降に「しかし脆弱性は、~~変化や刺激に対する敏感さを意味しており、環境の変化や攪乱、悪化にいち早く気づけるからである。~対応力に富む施設を作り出したいなら、~避難しやすい作りにすることが最善の策となる」とある。これらだで十分解答は可能であった。「被支援者の対応力」「非常時に高い対応力を発揮する施設」でそのまま③になる。ただ傍線Bの次々段落12段落の「以上のように」でここまでをまとめており、「回復力とは~相互作用する過程から生じるものであり、内在的性質ではない。レジリエンスの獲得には、当人や当該システムの能力の開発のみならず、その能力に見合うように環境を選択したり、現在の環境を改変したりすることも求められる。レジリエンスは、~自己を維持するために、環境との相互作用を連続的に変化させながら、環境に柔軟に適応していく過程のことである」とほぼ結論が述べられていた。

設問別分析――問4

今の12段落の内容を受ける「こうした意味での回復力」を条件として、「それをミニマルな福祉の基準として提案できる」とあるので、 ほぼ12段落の内容を13・ 14段落で述べられ、「福祉の基準の提案」となるのは明確だった。該当箇所は、冒頭で述べた14段落に「レジリエンスとは自己のニーズを充足し、生活の基本的条件を維持するために、個人が持たねばならない最低限の回復力である」とあり、最終文で「したがって、ケアする者がなすべきは、さまざまに変化する環境に対応しながら自分のニーズを満たせる力を獲得してもらえるように、本人を支援することである」。13段落でも、「ある人が変転する世界を生きていくには、変化に適切に応じる能力が必要であって、そうした柔軟な適応力を持てるようにすることが、福祉の目的である。」からも取れる。ここから「環境に応じて自己の要求を充足してゆく能力を、福祉における最小の基準とすることができる。~~支援者には被支援者がその能力を身につけるために補助することが求められる」とする②が答えられる。決め手は「補助」であった。

設問別分析――問5

最初に説明した14段落に「レジリエンスとは自己のニーズを充足し、生活の基本的条件を維持するために、個人が持たねばならない最低限の回復力である」ことを確認させ、という「自己を維持するために、環境との相互作用を連続的に変化させながら、環境に柔軟に適応していく過程」のことの12段落「自己を維持するために、環境との相互作用を連続的に変化させながら、環境に柔軟に適応していく過程」も確認させている。だから、「新チームの現状に合うように工夫した」が根拠となった。①③④の「優勝できた」「自由な発想」「今から予想して」とは、解答らしさを持つが、「動的」な「過程」を論じる本文とは合わない。

設問別分析――問6

例年問5までの解答根拠と整合させるが、今回は、ⅰは単なる表現法問題であり、「仮定条件」が分かれば容易だった。ⅱが問4の解答根拠と整合した。本文構成で12段落の内容を13 14段落でも述べられる構成が問4の段階で取れていれば、④が「適切ではない」ことは、明らかだった。

 

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