化学の計算力

皆さんこんにちは。枡見(マスミ)です。

今回のテーマはズバリ「化学の計算力」。

化学の問題を解いていると,
小数の計算や分数の計算,指数,対数の計算をグチャグチャやらなければいけない場面にたくさん遭遇しますね。
これが世の化学嫌いを増やしている一因でもある気がするんですが,そうは言っても自然界は人間が計算しやすいように都合よく成り立っているわけでもないのでしかたない。

予備校で小テストの解答中の様子や答案を見ていると,
成績が振るわない人ほど計算が遅い。
そしてよく間違える。

もちろん全ての人に当てはまるわけではないけれど,
成績と計算スピードにはかなりの相関がある…

というのは
かなりの割合の指導者に頷いてもらえるんじゃないだろうか。

そこで,計算スピードに関わる話をいくつかの要素に切り取って書いていきたい。

● 計算の工夫と知識

計算が遅い人はなんでも力技で解決する傾向がある。

数学の話だけれど,例えば2次方程式の解の公式,
これを教わるときに

b’=b/2

とおいて計算する方法ありますよね。
これ,計算スピードを重視するならどう考えても使った方が速いわけですが,計算が遅い人はこういうのを使うのを嫌う。

あとは,
「知っている(覚えている)から速く解ける」ということも多い。

例えば,化学だと
気体定数8.3×103Pa・L/(K・mol)に
300Kをかけることが多いけれど,
これを

24.9×105 ≒ 25×105

と近似してしまえば計算が途端にラクになる…
なんて知識は,
スピード重視の私大医学部入試なんかではかなり活きるはずだ。(もちろん有効数字は気にしてくださいね。)

計算が遅くて悩んでいる人ほど,
こういったことを知らない…のではなく,
「知っているのに活用しない」ふしがある。

せっかく日々の授業やインターネット,参考書に色んな工夫や知識が転がっているんだから,普段の勉強からぜひ色々試してみてほしいのだ。

● 計算の容量(メモリ)

「計算ミスするくらいならゆっくり丁寧に計算しましょう」というのは,一見するとごもっともに見えるのだけど,
計算が遅い子を見ていると

「ゆっくり丁寧にと言っても限度があるよ!!」

という気持ちになることも多い。

そして,これは筆者の私見だけど,
計算が遅い人ほど計算ミスも多い。

例えば「1/2を小数に直せ」と言われたら,
さすがに暗算で0.5に直せるだろう。

では3/40ならどうか。
0.63/126ならばどうだ。
3860/96500ならどうだろう。

入試化学の計算に慣れている人なら全部暗算で出せるだろう。

3/40なら「3/4=0.75だから小数点1つずらして0.075だなぁ」とか,0.63/126なら「63/126で0.5だからこれも小数点2つずらして0.005だな」

と頭の中で考えればいいだけだ。

最後の3860/96500だけど,
こういう計算は化学ではファラデー定数が96500 C/molで与えられるのでよく出てくる。
これの暗算は,
先ほどの“知っている”から速くできるの応用技だ。

僕は19300/96500=1/5と“知っている”ので,
「1930/96500=1/50で3860/96500=2/50=0.04かぁ」
と計算できる。

もちろんこういったことは,
直接的には化学の理解とはあまり関係がないが,
頭の中で処理できる量が多いに越したことはない。

計算が遅い人はとにかく暗算ができない。
ゆっくり丁寧にやって答えが出れば良いと思っている。
そしていつまでたっても,
自分のゆっくりとしたやり方を変えようとしない。
そのわりに「計算が遅い」「解き終わらない」とこぼす。

違うのだ。

計算が速い人は努力しているのだ。
「これくらいの分量は暗算でいってみよう!」というチャレンジをしているのだ。

頭を使うようにチャレンジしなければ
頭の中の容量(メモリ)は広がらない。
そして,メモリが広がって計算に余裕が出てくれば,
その余裕を他の思考に充てられるのだ。
もちろん,チャレンジして,計算を間違えることもある。

でも,間違えたっていいじゃないか。
練習なんだから。
日々の勉強の目的は,頭の中をアップグレードさせることにあるのだから。

● 書くスピード

予備校で授業をやっていると,メモをとる,板書を写すのが他の人よりワンテンポ遅い人が必ずいる。

原因は色々あると思うが,
大雑把に分けると

「筆圧が強すぎる」
「字が大きすぎる」
「字が丁寧すぎる」

のいずれかが多い。
このうち,特に計算が遅い人は「字が丁寧すぎる」人とかなり重なるように思う。
書くスピードはそのまま計算スピードに直結する。

この「字が丁寧すぎる」というのは,
字が綺麗・汚いという話とは少し異なる。

とめ・はね・はらい…など,しっかり書きすぎなのだ。

「正しい字を書くこと」と
「読みやすい字を書くこと」は別なのだ。

例えば【化】という字の右下のはねなど無くても,
普通は【化】と認識できるものだ。

文字というのは意思疎通のためのツールなのだから,
丁寧に正しい字を書くことに集中しすぎている人は,
「通じるためなら“文字としての正しさ”などは二の次だ」くらいで丁度いい。(もちろん誤字はダメだが…。)

また,高校生でも稀に筆算するときにわざわざ定規を持ち出して線をひく人がいるが,
そこまでして綺麗に書きたいなら,
フリーハンドで真っすぐ線をひけるように練習するべきだ。
速く書けるようになりたいなら,
少しずつ自分の筆跡をカスタマイズして,
「速く書けて,読みやすい字」を追求していってほしい。

計算スピードは,頭の良し悪しではない。
楽をするために苦労して考えた末に身に着けられるものなのだ。

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枡見康平——Kohei MASUMI

首都圏の予備校・塾・学内予備校に出講中。

講義ではテキトーそうな雰囲気を醸し出しつつ,「なぜそうなるのか?」を一つ一つ丁寧に積み上げる。ごく稀に化学愛をぶちまける。科学史と甘いものとネコが好き。