[化学]モルの話③


こんにちは。枡見(マスミ)です。

今回で宿敵モルシリーズは最終回だ。

ボス戦ですよ?
準備はいいですか?
装備は整ってますか?
回復アイテムは大丈夫?
トイレは済ませましたか?

 モルの定義

まず初めに定義を確認しておこう。

『1molとは6.02×1023個のことである』

これについては「モルの話①」で説明した。
科学者は面倒臭がりだ。
12個のことを1ダースと呼ぶように,
6.02×1023個を「ろくてんぜろにかけるじゅーのにじゅーさんじょうこ」と呼ぶのが面倒くさいから,略して1molと呼ぶだけだ。
1molが6.02×1023個なのだから,
2molは12.04×1023個だし,
3molは18.06×1023個,
0.5molは3.01×1023個だ。

アボガドロ数

さて,では6.02×1023個という数字はどこから出てきたのか…
という話だった。
これは,12Cがちょうどピッタリ12gになるときの個数なのだ。

確認してみよう。

12C 1個の質量は1.993×10-23gなので,電卓をピピッと弾くと,

1.993×10-23g/個 × 6.02×1023個 = 11.997g ≒ 12g

おお,ほぼピッタリだ。
(ちょっとずれたのは有効数字のせいだ。本当に12gピッタリのときの個数は6.02×1023よりも,もう少し多いのだ。)

もう一度書こう。
12C 6.02×1023個でちょうど12gである。
では35Cl (1個で5.808×10-23g)が6.02×1023個ではどうだろうか。
5.808×10-23g/個 × 6.02×1023個 = ……これを計算するのは面倒くさい。

ここで,相対質量の話を思い出してほしい。
12Cと35Clの質量比は

1.993×10-23g:5.808×10-23g=12:34.97

だった。
個数が同じなら質量比も変わらないはずだ。
したがって,
5.808×10-23g/個 × 6.02×1023個 をわざわざゴリゴリ計算しなくても,
なんと34.97gと出てしまう。これは楽チン。

12C 35Cl
相対質量 12 34.97
1個あたりの質量 1.993×10-23g 5.808×10-23g
6.02×1023個あたりの質量 1.993×6.02g 5.808×6.02g
1molあたりの質量 12g 34.97g

相対質量12の12Cが6.02×1023個で12gならば,
相対質量34.97の35Clが6.02×1023個で34.97gだ。
相対質量の和が18のH2Oが6.02×1023個なら18gだし,
相対質量の和が100のCaCO3は6.02×1023個で100gだ。

さらに化学者は面倒くさがりなので
「6.02×1023個」のことを略して「1mol」と呼ぶことにした。
「6.02×1023」という数値をアボガドロ数といい,
「6.02×1023/mol」をアボガドロ定数という。

かくして,
「1個1.993×10-23gの炭素原子が6.02×1023個で12g」を
「相対質量12の炭素原子が1molで12g」と言い換えることに成功した。

少しだけ気をつけてほしいのは,
相対質量や化学式量は,
それ自体はただの数値である無単位数だ。
実際に計算するときは「1molで相対質量gですよ」という意味を込めて単位に(g/mol)をつける。
相対質量に(g/mol)を付けたものをモル質量と呼ぶ。

ここまでの話を理解していればもうモルについては大丈夫だろう。少し例題をやってみよう。

解説は以下の通り。

※ ちなみに,アボガドロ定数の決定に際して,アボガドロ自身は歴史的には何も関与していない。アボガドロ定数を実験的に求める試みに取り組んだのは,オーストリアのロシュミットやフランスのペラン等である。特にペランは高校化学の教科書には登場しないけれど,ブラウン運動から原子の粒子性を示すのに多大な貢献をした科学者である。

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