![[化学]モルの話②](https://sp-ao.shortpixel.ai/client/to_auto,q_glossy,ret_img,w_640,h_453/https://www.educational-lounge.com/wp-content/uploads/2018/11/0f49fd4d131affdcad5376a82b41c82b_s.jpg)

首都圏の予備校・塾・学内予備校に出講中。
講義ではテキトーそうな雰囲気を醸し出しつつ,「なぜそうなるのか?」を一つ一つ丁寧に積み上げる。ごく稀に化学愛をぶちまける。科学史と甘いものとネコが好き。
こんにちは。枡見(マスミ)です。
今回も宿敵「モル」の話をしよう。
どうでもいいけど「mol」という単位は御存知,分子を意味する「molecule」から来ている。
moleculeはラテン語の「mole(塊)」「cula(小さい)」に由来する。
最初にこの単位を使いだしたのは「オストワルト法」でおなじみ,ヴィルヘルム・オストヴァルトだ。
原子量
前回「モルの話①」で新しい質量の基準,
相対質量について説明した。
しかし,それだけでは実際の物質の質量を扱うには不十分だ。
なぜなら,実際には同じ種類の元素であっても,
原子には複数の同位体が含まれるからだ。
例えば,塩素には35Clと37Clの2種類が天然に存在する。
同位体は化学的性質がほとんど等しいので,これらを選り分けるのは容易でない。
なので,実際の実験などで「35Clだけを使う」「37Clだけを使う」なんてのは現実的でないわけだ。
そこで,実際には複数の同位体が混ざった状態で操作を行うわけだから,それらの質量の平均値が必要になる。
塩素の場合,35Cl(相対質量34.97)が75.8%,37Cl(相対質量36.97)が24.2%の割合で存在するため,
相対質量の平均値は以下のように計算される。
M=34.97×0.758+36.97×0.242
M=35.454
この値を塩素の原子量という。原子量とは『各同位体の相対質量の平均値』であるということを,肝に銘じておこう。
ちなみに入試では原子量をいちいち相対質量の平均値から計算するのは面倒&面倒なので,普通は問題文で与えられているぞい!
分子量と式量
さて,次に分子量と式量について説明しよう。
分子量も式量も,「化学式中の原子の原子量の総和」を表す。
例えば,H2Oなら,原子量はH=1.0とO=16であるから,次のように計算される。
M=1.0×2+16=18
また,NaOHなら,H=1.0,O=16,Na=23として,
M=23+16+1.0=40
Al2(SO4)3の場合はO=16,Al=27,S=32として,
M=27×2+(32+16×4)×3=342
また,イオンの場合も,電子の質量は非常に小さく全体の質量に寄与しないので無視してしまってよい。
したがって,Ca2+の場合はCaの原子量40をそのまま相対質量とする。
一般に分子式中の原子量の総和を表す場合は分子量と呼び,
それ以外の化学式(組成式やイオン式など)に対しては式量という言葉を用いる。
これは,分子量は実在する分子の相対質量を表すのに対し,
組成式等で表される物質は明確な構成単位が決められないため,
便宜的に任意の単位(通常は最も簡単な整数比で表される部分=組成式)に相当する相対質量を表現する必要があるからだ。
したがって,H2Oに対する原子量の総和は「分子量」と呼ぶが,
NaOHに対する原子量の総和は「式量」と呼ぶのだ。
ちなみに分子量も式量も,
化学式中に含まれる原子量の総和を表すので,
これらをひっくるめて「化学式量」と呼んだりする。
よし。やっと準備が整ったぞ。次回はいよいよモルの登場だ。