中学受験生への記述指導(第1回)

自由が丘、三田の中学受験専門塾「スタジオキャンパス」(https://www.studio-campus.com/)代表の矢野耕平先生が、主に国語指導者に向けて発信する新連載「中学受験の現場から」。日頃、自身の指導科目や中学受験生たちと向き合う中で矢野先生はどのようなことを考えているのか――。

初回は「中学受験生への記述指導(第一回)」。

はじめまして

はじめまして。中学受験専門塾スタジオキャンパス代表の矢野耕平と申します。
このたび、Educational Loungeより依頼を受け、国語指導者向けの記事を月1回ペースで公開することになりました。
指導者の皆さんに対して、このわたしが何かを高言するなんておこがましいと尻込みする思いもあるのですが、よく考えれば、わたしは中学受験指導に携わってから25年超。傍目にはすっかりベテラン講師の類に入るのでしょう。そろそろ若い講師の方々に自分の指導スキルを還元するタイミングなのかもしれない。そう思い直し、執筆依頼を受諾しました。
国語指導者の皆さんが気軽に読めて、なおかつ、ためになる記事を目指してまいります。よろしくお願いします。
自己紹介の代わりに、簡単なプロフィールを載せておきます。

《矢野耕平(やの・こうへい)》
大手塾に十数年勤めたのちに、中学受験専門塾スタジオキャンパスを設立。学童保育施設ABI-STAの特別顧問も務める。著書に『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『iPadで教育が変わる』(マイコミ新書)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)。現在次作を執筆中。また、旺文社中高パスナビ、プレジデントOnline、子育てオウチーノにて記事を連載中。

 

中学入試国語は記述問題増加中!

さて、数回に分けて「中学受験生への記述指導」をテーマに執筆してまいります。
ご存じの方が多いと思いますが、来る大学入試改革に備えてなのか、昨今の中学入試の国語入試問題は記述問題が増加しています。中学入試の記述問題といえば、かつては最難関校が「専売特許」のごとく出題していました。しかし、今となってはそれもはるか昔のこと……。昨今は中堅上位校であっても国語入試で記述問題の占める割合が高くなっています。いまや記述問題を出題しない学校を探すほうが難しいほどです。
その一例として下の画像をご覧ください。

解答用紙

左上が鷗友学園女子中学校、右上が芝中学校、下が田園調布学園中学校の国語入試問題で、いずれも今春(2019年度)のものです。
いかがでしょうか? かなりの記述量が中学受験生に求められていることが分かるでしょう。
高校受験や大学受験を中心に指導されている講師の方々はこれを見てびっくりされるかもしれませんね。

早期のうちに「書く作業」を常態化せよ

小学生たちが中学入試本番でこれらの記述問題に挑み、合格点を奪取するためにはかなりの時間をかけて記述指導をおこなう必要があります。
比較的大きな規模の進学塾の国語教材にありがちなのが、たとえば、小学校3年生や4年生の読解問題は「選択肢問題」や「抜き出し問題」中心の問題構成であるのに対し、5年生、6年生と高学年になるに従って徐々に記述問題の量を増やすというカリキュラムを構築していることです。
これだとちゃんと「基礎単元」を踏んでから、記述という「応用単元」に挑めるような気がしますよね。
しかし、わたしはこのようなカリキュラムには大反対です。
結論から言うと、わたしは小学校3年生、あるいは4年生といった中学受験早期の時点から子どもたちには「書く作業」を徹底させたいと考えます。
なぜでしょうか?

記述作業こそ読解の基礎である

簡単に言うと「記述作業」こそ「読解の基礎」になるのです。わたしはそう確信しています。
その理路について、読解における選択肢問題を例に挙げて説明してみましょう。
わたしは選択肢問題を指導する際、子どもたちに「すぐに選択肢を見るな。すべて記述問題と思え」ということばをかけています。
どういうことでしょうか。
たとえば、「傍線部②とはどういう意味でしょうか。次のア~オから適当なものを選び、記号で答えなさい」といった設問があるとしましょう。
先のわたしの指示を適用すると、「傍線部②とはどういう意味かを記述しなさい」と脳内変換することが必要になります。
そして、文章をじっくり読み直しながら頭の中でその記述解答を作成してもらいます。それが完成した時点で子どもたちははじめて選択肢を見、自身の描いた記述解答とどの選択肢が一致しているかをチェックします。

選択肢問題も記述問題も同じ

なぜこのようなステップを踏んで選択肢問題を対処しなければならないのでしょうか。
それは小学生たちの多くは選択肢から入ってしまうと「その選択肢に引っ張られる」ことがよくあるからです。
すなわち、「正解はこの選択肢にちがいない」と一度思い込むと、そのあと文章を見返してその根拠をチェックしようとしても、「自身がセレクトした選択肢」が「正解」となるような「こじつけ」を無意識的にやってしまうのです。
これをもってしても、選択肢問題であれ、記述問題であれ、求められている作業は同じであることに気づくでしょう。

記述問題も同じ

だからこそ、早い段階で「書く作業」を子どもたちが常態化し、記述問題を「高いレベルのもの」「特別な問題」と見なさない学習態度をわたしたちが培うこと。これがとても大切なのです。
「でも、ウチの教材は選択肢や抜き出しばかりだよ」と嘆かれる方もいるかもしれません。
ご心配なく。どんな教材であれ、ちょっとしたプリントを作成するだけで、子どもたちに持続的な記述練習が可能になります。
それでは、次回の記事では小学生の記述練習についてわたしの実践例や自作のプリント教材を紹介したいと思います。どうぞご期待ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
コメントは利用できません。

ページ上部へ戻る