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[古文]高3になる前に準備しておきたい3つのこと

四月から受験生になる、現高校2年生を主な対象として、この2月3月の時期にどんなことを意識して古文の勉強に取り組んでおくべきかについて、お話をしたいと思います。

必要な3つのことーー古文文法・古文単語・古文常識
・古文文法
・古文単語
・古文常識

 

この三つの知識をきちんと身につけることができていて、はじめて古文を読むための下地ができると言えます。このうち、文法と単語はなるべく早い段階で主要なものを身につけるに限ります。古文常識はある程度読む練習を重ねながら、文章ごとに関わる古文常識を身につけていくとよいでしょう。

このあたりのことについての詳細は、私の別の記事でも触れていますので、ぜひご参照ください。

・古文学習事始(古文単語について)

古文学習事始

・古文文法学習の第一歩

古文文法学習の第一歩

古文文法の学習・参考書

今日はこのうち、古文文法の学習について、具体的な参考書も挙げながら説明をします。まず、古文文法については、いきなりすべてを覚えていくことは難しいですし、苦痛です。忘れる度に調べ、文章を読みながら何度も確認する習慣をつけましょう。単調な暗記の部分もありますが、やはりきちんと理解をしたうえで覚えたら定着度が違うはず。

初歩の初歩から説明してくれており、苦手な人の独習にお勧めなのが以下の参考書。

『望月光の古文教室 古典文法編』旺文社

ただし、こちらだけでは理解の部分は十分であっても、練習量が足りなくなってしまいます。そこで、以下の問題集を利用して、何度も繰り返し問題を解いて練習をしましょう。

『ステップアップノート30古典文法基礎ドリル』

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ステップアップノート30 古典文法基礎ドリル 三訂版
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なお、上記の文法練習で満足するのではなく、文章題に取り組みながら、何度も調べ説明を読み返すようにしてください。その際には、学校から配られた文法書がリファレンス用としては非常に優れていますし、時には通読も試みてください。大切なのは実際の用例に触れながら、文法を学ぶことと、何度も調べることです。今のうちにその習慣をつけておきましょう。

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葛西佑也——Yuya KASAI

大手予備校・高校等に出講。

日本古典文学研究と予備校や高校での古典講義を中心に精力的に活動。日本古典文学、中でも中古・中世、歌論、美術史をはじめ、興味関心は多岐にわたる。講義を通して古典に親しみ、その世界観に魅了される生徒は後を絶たない。

古文解釈と主語把握① 述語と助詞への着眼

はじめに

受験生や高校生のみなさんは、「古文は主語の省略が多いので注意しなさい」とどこかで言われたことがあるのではないでしょうか。本稿では、数回に分けて主語の把握についてお話をしたいと考えています。

なんで主語を省略するの?

古文では主語が省略されることが多いと言われますが、それは古文だけではなくて現代日本語でもよく起こっていることです。

「昨日の夜、何食べた?」
「うどん食べた」

という会話では、前者は「あなた」、後者は「私」が省略されています。わかりきっているので、書かなくてもよいわけです。この点からすると、省略というよりは、わかるからもともと書かれていない。それを補うというのが適切かもしれません。
そこで、これから「主語の補訳」とか「主語の補い」と呼ぶことにしたいと思います。

まずは述語に着目してみよう

たとえば、教室で古文の授業が行われているとします。
誰かが教室をのぞきました。
そして一言。

「あ、今古文教えているのか」。

この場合「教えている」とあるので、主語が前に立って教えている人物だとわかります。
しかし、

「あ、今古文受けてるのか」

であれば、
授業を受けているのは生徒たちということになります。

つまり、述語から主語が明らかであれば主語を明示しなくてもよいということなのです。そこで、古文でも、まずは述語をしっかりと捉え、「この動作ならこの人が主語だ」と述語から把握していくことが大切です。

助詞にも着目してみよう

受験参考書でよく見かけるのは、「て、で、つつ」という助詞の前後では主語が変わらないというものです。

確かにそういう事が多いです。現代でも、「私は、家に帰って、ごはんを食べて、宿題をしつつ、テレビを見て、明日のことは考えないで、寝る」であれば、主語はずっと私です。

しかし、必ずしも変わらないというわけではありません。変わるケースも少なくないのです。
そこで、前述のように述語に着目することが大切なのであって、「『て、で、つつ』があったら変わらない!」と決めつけることはとても危険だということになります。

また、「を、に、が、ど、ば」や「を、に、ば」の前後では主語が変わると言われることがありますが、これも変わる可能性があるということで、絶対に変わるという事ではありません。例えば、現代語の次の例を見てみます。

1、私がテストで悪い点数を取れば、怒られるだろう。
2、私がテストで悪い点数を取れば、怒るだろう。


1、の場合は「ば」の前も後も主語は私ですが、
2では「ば」の後では主語が変わっています。
先生なのか、お母さんなのか、それは前後のお話によって様々な可能性がありますので、この一文からはわかりません。

主語把握で結局なにが重要なの?

以上説明してきたことを基に、まとめますと以上のことを意識することが大切です。

 
  1. 登場人物の把握(主人公は?、他に誰が出てきて、どういう関係なのか)
  2. 述語を追う(誰の動作だろう?)
  3. 助詞に着目
    「て、で、つつ」→青信号型。主語が変わらない可能性が高いが、変わることもあるので、注意。
    「を、に、が、ど、ば」→赤信号型。主語が変わる可能性があるので、慎重に。


青信号だからって必ず安全とは限りませんし、車がきてないからと赤信号を無視してはダメですよね。

ちょっと練習してしてみよう
成方(なりかた)といふ笛吹きありけり。御堂入道殿(みだうにゅうどうどの)より大丸といふ笛を賜はりて吹きけり。めでたきものなれば、伏見修理大夫俊綱朝臣(ふしみのすりのだいふとしつなあそん)欲しがりて、 「千石に買はむ」 とありけるを、売らざりければたばかりて使ひをやりて
…以下省略

(『十訓抄』より)

<単語>
○ 賜る…謙譲語、頂く
○ めでたし…すばらしい
○ たばかる…だます

 

傍線部①と②の主語が分かりますか?

まず、登場人物ですが、

・成方
・御堂入道殿
・伏見修理大夫俊綱朝臣


の三人ですが、主人公は「成方」ですね。
御堂入道殿は、成方に大丸という笛をあげた人で、ここでは実際に本人が登場はしていません。伏見修理大夫俊綱朝臣は、成方の大丸を欲しがっている人でした。

伏見修理大夫俊綱朝臣欲しがり《て》、


「て」があるので、
このあとも俊綱が主語の可能性が高そうです。

「千石に買はむ」 とありけるを/、売らざりければ、/たばかりて使ひをやり《て》


「笛を千石で買おう」というのは俊綱です。
「を」があるので、主語が変わるかも。
「笛を売らない」のは成方ですから、①の主語は成方です。

また「ば」があるので、変わるわるかもと思って読むと、
「たばかり=だます」わけです。
だまして笛を手に入れようとするのは、俊綱ですね。
そこで②の主語は俊綱です。

終わりに

本稿では、古文の主語把握について、述語と助詞に着目することについて述べました。他にも様々な着眼点がありますので、次回以降述べていきます。
必ず、各自練習をして、自分のものにしてください。

また、強調しておきたいのは、主語の把握が目的ではなく手段であることです。主語の把握は、古文解釈において重要なことではありますが、全てではありません。主語が分かるから読めるということもあれば、ある程度読めるから主語が分かるということも出てきます。主語が分かればそれで、古文がすべてわかるわけではないことは協調しておきたいと思います。

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葛西佑也——Yuya KASAI

大手予備校・高校等に出講。

日本古典文学研究と予備校や高校での古典講義を中心に精力的に活動。日本古典文学、中でも中古・中世、歌論、美術史をはじめ、興味関心は多岐にわたる。講義を通して古典に親しみ、その世界観に魅了される生徒は後を絶たない。

過去問との付き合い方(古文)② 過去問と向き合う

はじめに

前回は、過去問の意義についてお話をしました。読んでいない方はこちら へ。今回は実際の取り組み方についてお話させていただきます。

過去問へ取り組む
  1. 制限時間内に解いてみる(大学・試験によって違うが20~30分)
  2. 時間を気にせず読んでみる
    この際答えを変える場合、1の時の答えを残したまま、新しい答えを書く。
  3. 答え合わせ
  4. 分析と復習
答え合わせの仕方&分析と復習

単に〇×を付けるのではなく、答えの根拠や、設問の意図を確認しながら答え合わせをする。この問題はこの単語がポイントだったが着目できていなかったなどの分析が重要であって、〇か×かはそれほど問題ではありません。

また、傍線説明や内容合致では、本文の根拠となったところにマーカーなどを引いておきましょう。そして、そこと対応する現代語訳部分にも同じマーカーを付し、対応が分かるようにしておきます。復習の際には、古文の本文でマーカーを付している部分を中心に自分が自力で意味をとれるか確認をしてみましょう。わからなければ、すぐに対応する訳の部分を見て、もう一度本文の対応部分に目を戻します。
このようにして本文を通読するのを何度か繰り返します。

また、今回は問題になっていなくても、他の大学でこの文章が出たら問題になるかもという単語や文法には、違うマーカーを付しておきましょう。そして、前述のように繰り返し、自力ですぐにわかるか練習をしてみてください。

上記のプロセスでの本文通読を、何度も繰り返すのが復習として大切なことです。

おわりに

今回紹介した過去問の取り組み方は一例です。自分なりに考え、アレンジし、過去問と向き合ってみてください。勉強方法は、絶対これが正しいというものが存在していると私は考えていません。人によって様々あってしかるべきです。
しかし、的外れなものは存在します。

みなさんが的外れな学習で時間を無駄にしないように願いつつ、この記事を書きました。
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葛西佑也——Yuya KASAI

大手予備校・高校等に出講。

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過去問との付き合い方(古文)① 過去問の二つの意義

はじめに

本記事では、古文の過去問の取り組み方を説明していきたいと思います。過去問について、どう取り組むべきか悩んでいるすべての受験生にとってヒントになれば幸いです。
こうするのが正解ということはなく、様々な意見を総合して、自分なりの過去問活用を開発されることを祈っています。

過去問の意義

過去問をいつから解けばよいか、過去問は第何志望までやるべきか…過去問に関する質問は毎年たくさんいただきます。
まず、過去問の意義を整理しておきたいと思います。

  1. 敵を知る(傾向分析のために過去問を解き、出題傾向を知る)
  2. 自分の実力を知る(自分が過去問がどれだけできるか/できないか)

このうち、時期が早ければ早いほど1の意義が重要で、試験が近づけば近づくほど、2が重要になってくるでしょう。
では、具体的にどんなことをしていくべきかをお話します。

敵の知り方

過去問を分析する1の意義の場合には、以下のことに注意してください。

  1. 国語全体の中で、古文の占める割合。時間をどれくらいかけられるのか。
  2. 知識問題の有無。文学史や読みが毎年出ているかなど。
  3. 文法問題の有無。
  4. 設問の種類(主語把握、空欄補充、傍線説明、傍線訳…etc)

これらを分析することで、今後の学習の指針を立てることができます。基本的な単語を含む傍線が多いから単語帳をやり込もうとか、文学史が毎年出ているからやっておこうとか。もっと細かく言えば、出題ジャンルや、文章の年代などの偏りのある大学もあり、過去問の分析によって知ることができます。

己の知り方

できなかった問題があったときには、ただ×だっただけではなく、なぜできなかったのかを追求するようにしましょう。

単語が分からなかった、この文法事項がわからなかったと原因が特定できれば、その穴を埋め、次は間違わないように心がけます。できた問題についても、どいう知識を問おうとしているのか、どういう部分を読み取れているかを確かめるための問題だったのか、などを分析しましょう。

この時には、現代語訳と本文を突き合わせて、考えてみるとよいでしょう。

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葛西佑也——Yuya KASAI

大手予備校・高校等に出講。

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活用を覚えるって?① 活用形について

はじめに

前回の記事では、古文文法を学ぶ上で重要な二つの文法用語=活用と接続、についてお話をしました。
もし、よくわからないよ! ということであれば、前回の記事をお読みください。こちら からそうぞ。

今回は、活用というものについて、もう少し詳しいお話をしていこうかと思います。

本題に入る前にお伝えしておきたいことがあります。
本記事は文法知識そのものわかりやすい説明より、勉強のはじめに知っておくと、あとで効いてくる内容を目指しています。
必ず、ご自身で文法書などで動詞の活用を学んでください。

活用形とは

前回もお話した通り、「書く」に「ず(~ない)」が付くと、「書かない」と形が変わり、これを活用と呼びました。そして、何となく形が変わるのではなく、「ず」が付いたことによって変わるのでした。「ず」の上の形をには、未然形という名前がついています。この「〇〇形」というのを活用形と言います。
古文文法での活用形は六つです。

・未然形…まだそうなっていない形。「ず」(~ナイ)などにつく形。
・連用形…用言(動詞・形容詞・形容動詞)に連なる形。「て」に連なる形。
・終止形…基本形(辞書に載っている形)。「。」の上の形。
・連体形…体言(名詞)に連なる形。
・已然形…すでにそうなっていることを表す形。「ど」などにつく形。
※現代語の仮定形と混同しないように!
・命令形…命令する形。「!」がつくイメージ

 

《例》
書く+ず=書かず 未然形
書く+て=書きて 連用形
書く+。=書く。 終止形
書く+事=書く事 連体形
書く+ば=書けど 已然形
書け+!=書け!(命令) 命令形

 
この時、「書く。」の場合は、「。」で文の終わりなので、終止形と呼び、「書く事」の場合には、「事」という体言を修飾(説明)しているので、連体形と呼びます。見た目は同じ「書く」でも、働きや、下の語の接続によって活用形を決めているので、その語の見た目ではなく下の語に着目する習慣をつけるようにしましょう。

活用形を理解すると何かいいことあるの?

「風立ちぬ」という映画がありましたが、ご存知でしょうか。
これは、どういう意味でしょうか。「風が立った=風が起きた=風が吹いた」ということです。
では、これが「風立たぬ」であれば、どうでしょうか。実は、古文では同じ「ぬ」であっても完了(~た)という意味の場合と、打消(~ない)という意味の場合とがあるのです。これを判別する方法として、「ぬ」の接続、つまり上の活用形に着目するという方法があります。

未然形+ぬ=打消/連用形+ぬ=完了

 
「風立つ」+「ず」なら、「風立たず」ですよね。この「立た」が未然形でした。「風が立つ」+「ます」なら、「風が立ちます」ですね。「ます」など動詞(用言)につく形が連用形でした。以上のことから、「風立ちぬ」の「ぬ」が完了で、「風立たぬ」の「ぬ」は打消とわかります。

もし、この二つの「ぬ」の違いがわからないとすれば、古文の解釈は真逆になってしまう恐れがあるのです。そして、このような判別をスムーズに行うためには、活用形を分かっていることが必要です。このことを意識して、活用形や活用の種類を学習していきましょう。

まとめ
・活用形はその語の形そのものより、下の語の接続に着目
・紛らわしい語の判別に役立つ

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葛西佑也——Yuya KASAI

大手予備校・高校等に出講。

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大学入学共通テスト 試行調査問題(平成29年度実施分)の古文についての所感

【はじめに】

先日、2018年11月10日に、2021年より現センター試験の後継となる大学入学共通テストの試行調査としてプレテストが行われたが、本稿では昨年に行われた試行調査問題の古文について気付いた点を述べる。

問題については、こちらを参照していただきたい。

【出典について】

文章Ⅰ~Ⅲと三つの文章から構成されている点が、現行センター試験と比べての新しい試みである。文章Ⅰと文章Ⅱは『源氏物語』桐壺からの出典ではあるが、本文には違いがある。
受験生はあまり意識しないことかもしれないが、『源氏物語』などの古文の文章は一つとは限らない。そもそも、紫式部(本当に紫式部によるものなのかさえも確実ではないかもしれない)『源氏物語』がそのまま現在に残っているわけではない。印刷技術などもない時代であるから、書き継がれ現在まで残ってきたのである。当然、書き写した人によって差が生じたり、何を基にしたかによって、本文に違いが生じるのである。その書き写されたものは写本と呼ばれるが、『源氏物語』の写本にもいくつかの系統が存在し、それぞれに違いがあるのだ。

この事情は、『源氏物語』に限ったことではなく、『枕草子』など他の古典作品でも同様である。このような事情を踏まえた上で、文章Ⅲが与えられている。文章Ⅲは文章Ⅱのように本文を整えた事情を語っている文章であると、リード文にあるものの、上記のような事情を知らなければ、三つの文章の関係性を理解することは受験生にとっては難しかったかもしれない。

【設問について】

問1~問6までの6問であり、傍線説明や解釈、表現とその効果を問うものなど、様々なバリエーションがあった。詳しくは実際の問題に目を通していただきたいが、現行センター試験に比べると、選択肢が短いため、一見取り組みやすそうに見える。

しかし、重要な単語や文法を暗記し、その知識だけで解答できるような問題はなく、本文の内容、文章Ⅰ~文章Ⅲ(特に文章Ⅱと文章Ⅲの)関連性が理解できていないと、解答は難しい部分があった。

もし、このように複数の文章が与えられる形式が定着するとすれば、なぜ複数の文章が与えられているのか、出題者の狙いを考えて突き止めることが必要になるだろう。一つの文章の大意を把握できているか否かが問われるのとはまた違った難しさがあるように感じた。

【対策について】

前述の通り文章Ⅰ~Ⅲの関連性や、三つの文章が並べられた意図を捉えることが大切ではあるが、一文をしっかりと読めることが出発点となることは変わりない。そのためには文法と単語の知識の習得とその運用、そして古文に読み慣れることだろう。

今回、文法の単独の問題はなかったが、読むために文法が不可欠であることは疑いの余地はない。そういう意味では、今まで言われてきた古文の対策のままで十分に対応できるだろう。日ごろの学校での授業と、予備校や塾に通っていればそこでの予習・復習を大切にし、古文を読む経験を積んで行くことだ。

【教える側が意識すること】

写本や諸本の問題については、古典文学研究を行う際には必ず通る道である。『古典文学の常識を疑う』(勉誠出版)の中の、山中悠希「諸本論は『枕草子』研究を革新できるか」などを一読しておくと、授業を考える際のヒントになるかもしれない。

また、平成27年の明治大学経営学部の過去問では、『十訓抄』から小大進が待賢門院の衣を盗み出した罪を着せられ、北野天満宮に籠り、天神に歌を捧げたことで罪がはれたエピソードが文章Ⅰ、「古今和歌集仮名序」が文章Ⅱとして出題されていた。文章Ⅰの歌徳の根本となる思想を語るのが文章Ⅱである。この例以外にも、複数の文章が出題された例は今までにもあった。

古典世界では、基盤となっている共通の知をもとにしている記述が少なくない。複数の文章が与えられずとも、たとえば注で、引き歌の全体を示したり、漢詩がもとになった記述であることを出題者が教えてくれていたりする。受験指導にせよ、学校現場での国語の授業にせよ、そういった共通の知について、積極的に教えていくことで、古典の世界が積み重ねの上に成り立っていることを生徒に意識させることは重要なのではないだろうか。

【おわりに】

本稿では、29年度の試行調査に限っての所感を述べた。そのため、30年度の試行調査を並べて考えてみた時には、また違ったことを述べることになることもあろうかと思う。また、個々の問題についての詳しい考察までは踏み込んでないため、物足りなく感じる部分もあるだろうが、あくまで全体を見渡しての所感を述べることが目的のため、ご容赦願いたい。

今後も、新テストの古文(機会があれば漢文も)について、考えたことを述べるつもりでいるので、お付き合いいただけたら幸いである。


記事内で紹介した書籍

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葛西佑也——Yuya KASAI

大手予備校・高校等に出講。

日本古典文学研究と予備校や高校での古典講義を中心に精力的に活動。日本古典文学、中でも中古・中世、歌論、美術史をはじめ、興味関心は多岐にわたる。講義を通して古典に親しみ、その世界観に魅了される生徒は後を絶たない。

古文文法学習の第一歩

はじめに

受験科目に古文が必要とわかる。しかし、古文は学校のテスト勉強を、付け焼き刃でしてきただけだ。あるいは、古文なんて大嫌いだし全然わからない……さあ、どうするか。という生徒からの「古文ってなにをやったらいいですか?」という非常に漠然とした質問は毎年少なくありません。

それに対する一般的な答えは、
まずは古文単語と古文文法の習得からということになるでしょうし、このことについて疑いの余地はありません。
もちろんアプローチの仕方やプロセス、読解をどう絡めていくかという問題はあるにはあるのですが。

本項では、この古文のはじめの一歩とも言える古文単語学習と古文文法学習のうち、特に後者について、何からはじめるべきかということへの一つの考えを示したいと思います。

古文文法はなぜ重要か

まず、文法の重要性を、単語と比べて説明したいと思います。

「女御・更衣、あまたさぶらひ給ひける中に」
(訳 女御や更衣が大勢お仕えしていらっしゃった中に)

この『源氏物語』の一節を現代語訳するためには、多くの知識が必要となります。

「女御・更衣」ってなんだろう、「あまた」「さぶらひ」「給ひ」ってどういう意味だろう。

これらは前者は古文常識、後者三つは古文単語という中に括られる知識になります。この例文中の「ける」が過去の助動詞であるという知識が文法の知識に該当し、このことでこれが過去のことであるとか、訳すと「〜た」となるということがわかります。

さて、ここで質問です。

次に新たな古文を読もうと思ったときに、「あまた」という単語に再び出会う確率と、「ける(けり)」という助動詞に再び出会う確率とではどちらの確率が高いと思うでしょうか。

正解は、当然後者です。
単語一語一語に比べると、助動詞一つを理解し、覚えることで、増えていく読める部分というのは格段に多いのです。「あまた」を覚えても、それが次の文章に出てくるかは、わかりませんが、過去をあらわす「けり」、打消(否定)をあらわす「ず」などの助動詞は、含まれない文章を探す方が難しいほどに、よく使われるものだというのは、想像に難くありませんよね。

もちろん、文法学習の重要性を語るとなると、他にも様々な視点があるのですが、ひとまず上記のことだけでも、古文を読むには文法が大切だということを実感できたのではないでしょうか。

はじめにやるべきこと

では、何からはじめるべきなのか。

助動詞を覚える?活用を暗記する?
たしかに、これらは最終的には、覚えなければならないことでしょう。しかし、まずはじめにやっておくべきことは、たった2つの文法用語についてきちんと理解をしておくことだと私は考えています。その2つの文法用語とは、「活用」「接続」という言葉です。

古文学習事始

古文読解に求められる力

古文の文章を読んでいく上でベースとなるのが

①単語
②文法
③古文常識


この3つの土台の上に,文章読解が成り立っていると言えるでしょう。文章読解というものをざっくりと言うならこれらのベースをしっかりと固めた上で、つながりを意識しながら文章の全体像をつかみ,精読していくイメージです。

古文単語のお話。

まず,古文単語。

「古文単語」と一言で言っても,その内実は大きく次の3つに分けられます。

A.古文特有語
B.古今異議語
C.古今同義語

 

それぞれどういうものかというと…

 

古文特有語
「やうやう」のように,現代では通常用いられておらず,古文に特有の語

 

Bの古今異義語とは,

 

古今異義語
「あやし」のように,現代でも同じような言葉自体は用いられているものの,その意味については異なる語

 

そしてCの古文特有語とは,

 

古文特有語
古文でも現代語でも同じように用いる語

 

要はそれぞれ字義通りです。

やはり,古文を読み進めていくために,まずは①②をきちんと習得することを目指していきたいものです(案外③が落とし穴になる場合もありますが,それについてはまたの機会に)。

大学受験においては古文単語の学習を2段階のイメージで捉えると良いかもしれません。つまり,

①単語帳などを使った語義把握
②文章読解時に訳出する訓練

 

この2段階です。
インプットとアウトプットと言い換えても良いでしょう。

さて,ここからは①②のそれぞれについて少し細かく見ていきたいと思います。

単語帳などを使った語義把握

古文の学習,まずは古文特有語・古今異議語をしっかりと理解していくところから始まります。

……理解? 暗記じゃなくて??

そう感じた方は鋭いですね。
そう,いわゆるインプットに当たるこの段階では,古文単語の「理解」が鍵になると考えておくと良いでしょう(もちろん,最終的には覚えないことにはどうにもなりませんが)。