「化学」カテゴリーアーカイブ

化学用語を覚えよう②

皆さんこんにちは。枡見(マスミ)です。
前回に引き続き,テーマは「用語の大切さ」。

● 用語のアウトプット

覚えた用語をアウトプットしていく方法を
いくつか紹介しておこう。

① 一問一答
暗記の確認といえば一問一答形式での復習だろう。
代表的な問題集に中経出版の


「化学早わかり 一問一答」と,
東進ブックスの


「化学一問一答【完全版】」がある。

前者はコンパクトなもので,電車の中などでも使いやすい。
友達どうしで問題を出し合うのもいいだろう。
後者は「一問一答」というわりには結構本格的なので,
参考書としても使える。

② 空所補充
次に,空所補充問題に取り組んでみてほしい。
セミナー化学やリードαといった学校傍用の問題集や,
市販の易しめの問題集で十分だ。

入試の過去問なら京都産業大学和歌山大学水産大学校あたりを探せば空所補充がゴロゴロ出てくる。

空所補充問題を解くときは,
答えが当たったか外れたかももちろん重要だが,
それに加えて“その用語がどんな文脈で登場しているか”をよく見ておいてほしい。

「なるほど。この用語とこの用語はこういう風に繋がるのか」
「この言い回しは上手だなぁ」

と感じたフレーズを心に留めておくと,
後々,論述形式の問題の答案を書くときの参考になるのだ。

③ 正誤問題
最後に,正誤問題に取り組んでみよう。
正誤問題のネタはセンター試験の本試や追試の過去問やマーク対策用の問題集が良いだろう。

これも,答えを当てるだけでなく,
「選択肢1つ1つの正誤判定をする」
ということをやってみてほしい。

特に,センター試験は正解の選択肢の判定難易度が最も易しいケースが多いので,そこばかり見てもなかなか力がつかない。
ぜひ不正解の選択肢を見て,それが不正解たる理由を言えるようにしてほしい。
センター試験は不正解の選択肢にこそ発見があると心得よ…ということだ。

そんなわけで,
今回は【化学用語を覚えよう】というお話でした。

あとはぜひ皆さん自身で色々工夫してみて,
化学の勉強法を確立していってほしい。

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枡見康平——Kohei MASUMI

首都圏の予備校・塾・学内予備校に出講中。

講義ではテキトーそうな雰囲気を醸し出しつつ,「なぜそうなるのか?」を一つ一つ丁寧に積み上げる。ごく稀に化学愛をぶちまける。科学史と甘いものとネコが好き。

化学用語を覚えよう①

皆さんこんにちは。枡見(マスミ)です。

今回は化学初学者向けの話をしますね。
テーマは「用語の大切さ」。

突然ですが皆さん,英語を勉強するときってどうしてますか?
僕は英語は全然できないんですけど,安藤先生の記事にあるように「単語と熟語」「構文」を覚えて「文法」を理解して…という風に勉強するのが王道なんじゃないかと思います。
ちなみに高校生の頃のマスミ青年は,授業で「単語の意味が分からなくても前後の文脈から補完できるぜ!」ということを教えてもらって「SUGEEE…!!」と思っていたんですが,実際に英文を読んでみると,前後の文脈すら読み取れておらず誤訳のオンパレード,珍解答るつぼのような答案を書いていました(苦笑)。

で,化学も同じなんですね。まず用語や化学式を正しく覚えるところから勉強を始めてほしい。特に用語。これがいい加減だと非常に困ります。ではどうやって覚えるか?

● 用語のインプット

例えば,

「同素体」と「同位体」,
「イオン化エネルギー」と「イオン化傾向」,
「電子親和力」と「電気陰性度」

…このあたりの混同しやすい用語は,
きちんと教科書の記述を確認しましょう。

その上で,ノートに書くなり唱えるなりして覚えてほしい。
記憶に残ればどんな覚え方でも構わないけれど,個人的には“用語の字面と意味をセットにしてしまう”のがオススメだ。例えば,「同素体」なら「じ元からなる単で,構造や性質が異なるもの」,といった具合だ。

有機化合物なんかは語源から攻めると覚えやすいかもしれない。「アルデヒド」は「aldehyde」と書く。
つまり
alcohole(アルコール)dehydrogenation(脱水素)」
→「アルコールから水素を除いたもの」
という意味だ。「おぉ!だからアルコールからH原子が2個とれるとアルデヒドになるのか!」と思ってもらえただろうか。
こうすれば,単調で辛く苦しい丸暗記作業から脱却できる。ある程度インプットが完了したと思ったら,アウトプットに移ろう。

アウトプットについてはまた次回。

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モルの話①

こんにちは。枡見(マスミ)です。

今回は化学講師になって過去2兆回ほど聞いたフレーズ「モル計算が分からない」について書きましょうね。

 

「1molとはアボガドロ数個の集団のことです。アボガドロ数はおよそ6.02×1023です。だから1molとはおよそ6.02×1023個のことです。以上です。」

 

 

 

……おお,読者の怒りが画面から噴き出てくるようだ。
神よ,許したまえ。アーメン,ラーメン,ソーメン,ヒヤムギ…。

冗談はさておき,
上に書いてあることは別に何にも間違ってなくて,
1molって6.0×1023個のことなんですよ。
2molは12×1023個のことだし,
3molは18×1023個のことだ。
(面倒なので有効数字は2桁にしますね。)

で,「モル計算が分からない」という人が分かってないのは,
「いや,だから6.0×1023って数字はなんやねん(怒)」ってところだと思うんですね。たぶん。

これを説明するために「相対質量」の話からいきましょう。
今回から全3回,長くなるけど“ちゃんと”説明するから,
よーーーく読んで理解してくださいね。

● スケールの違い

まず,原子というのはとても小さい。
これはいいね?

陽子や中性子は1個で約1.67×10-24g,
0を並べて書くと
0.00000000000000000000000167gとなる。

これらが集まった原子の質量もおよそ10-24~10-23gのスケールだ。

これに対して,我々が実際に日常生活で扱う質量のスケールはどれくらいだろう?
食事1回なら大体ご飯200g,おかず100g,お茶150g…そんな世界で我々は生きている。

コップ一杯の水100gには何個の水分子が含まれているだろうか。
水分子1個の質量をおよそ3×10-23gとすると100g÷(3×10-23g/個)≒3.3×1024個となる。
水分子3.3×1024個がコップの中で動き回っているところを想像してほしい。

………………たぶん,想像できない。
そう,原子の世界と我々の日常の世界ではあまりにも数値のスケールが違いすぎて,さっぱりイメージできないのだ。
そこで,「新しい質量」と「新しい個数」の基準を作ろうぜ,という話になる。

● 相対質量

まず,科学者たちは質量に対して新しい基準を作ることにした。
これを相対質量と呼ぶ。
相対質量の基準を決めるにあたっては色々と紆余曲折はあったけど,現在では「質量数12の炭素原子1個の質量を基準に12とする」と定められている。
12C 1個分の質量は1.993×10-23gなので,
これを「今日からお前の質量は『12』じゃ!」としてしまったのだ。
そうすれば他の原子の質量も比で表すことができる。

例えば,塩素原子35Cl 1個の質量は5.808×10-23gである。
したがって,35Clの相対質量をMClとすると以下の式で表すことができる。

12Cの質量:35Clの質量=12(基準):35Clの相対質量 』

数値を代入してみよう。
1.993×10-23:5.808×10-23=12:MCl よって MCl=34.97
このように他の原子についても,同じように計算すれば相対質量を求めることができる。
何か1つの原子の質量を基準にしてしまえば,全ての原子の質量は比で表せるのだ(ドヤ顔)。

 

※ 上の文章を読んでよく分からない人は,もうちょっと数値を簡単にしよう。
例えば,マスミの体重60kgを今日から質量の基準『12マスミ』としよう。すると,マスミの嫁さんの体重は45kgなので,マスミの体重の3/4倍だ。したがって,嫁さんの体重は『12×3/4=9マスミ』ということになる。(実際には相対質量には単位は無いぞ!)

※ ところで,相対質量を12C=12と定めると,35Clの相対質量も35Cl≒35となる。23Naの相対質量はほぼ23だし,27Alの相対質量はほぼ27だ。元素記号の左上の数値は「質量数」という値だった。なぜこれが相対質量の値とほぼ一致するのだろう。
ここから先は読者の皆さんがよく考えてほしい。

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枡見康平——Kohei MASUMI

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11月の学習指針(受験生)

受験生の皆さんこんにちは。化学担当の枡見(マスミ)です。

肌寒い季節になってきましたね。
受験シーズンまであと4カ月ほど。
学校でも塾・予備校でも化学のカリキュラムは終盤の高分子化合物に差し掛かった頃か,少し進度が速いところならもう一通り終わった頃でしょうか。

そこで,「とりあえず一周終わったけど,ここからの受験勉強どうしたらいいの!?」という迷える受験生のために,
ザックリではあるけれど,勉強の方針をいくつかのパターンに分けて提示していきたいと思います。

最難関国公立を目指す人向け

東大・京大・東工大を目指す人たちへ。

日本を代表する難関大を目指す諸君に必要なのは,
「基本事項のもう一歩深い理解」だ。

例えば,

「水分子はなぜ折れ線型か?」「電気陰性度はどのように定義されているか?」「無水硫酸銅(Ⅱ)は白色なのに硫酸銅(Ⅱ)水溶液はなぜ青色なのか?」「フェノールはなぜベンゼンよりも置換反応が起こりやすいのか?」

…こういった質問に君は答えられるだろうか?
最難関の大学は「だってそういう風に覚えたから」では通用しない問題が多く出る。

では,こういった理解を深めるにはどうすればよいのか。

まずは,参考書と問題集を1冊ずつ用意してほしい。
三省堂の「化学の新研究」「化学の新演習」だ。
定番なので既に知っている,持っている人も多いかもしれない。

やり方は普通の問題集と同じように
「解く」→「解答解説」
という順番で良いが,
解答解説を見た後に「ふーん。そうなんだぁ…」ではなく,
必ず「新研究」で関連事項のページを開いてみてほしい。

ほとんどのケースで「初めて知った」という話が出てくるんじゃないだろうか。
そういう話は必ずきちんと読んで記憶に残しておいてほしい。
一度読んで分からなければ二度,三度,手と頭をグチャグチャ動かして腑に落ちるまで考えてほしい。
何度読んでもよく分からなければ,とりあえずメモを取っておいて,信頼できる先生に聞いてもよい。

難関大受験生には釈迦に説法かもしれないが,
「綺麗なノートを取り,問題の解法をたくさんインプットする」なんて“お勉強”は賢い人のすることではない。
自分の頭で考えて,苦労して,脳味噌をアップグレードさせることが最難関大への最大の近道だ。
中には難しい話もあるけれど,東大・京大を相手に「知りすぎる」なんてことはないのだ。どんどん読んで,理解を深めてほしい。

その他難関大を目指す人向け

さて,次に東北大や北海道大,筑波大,千葉大…といった難関国公立大,早慶や上智,理科大,MARCH…といった難関私大を目指す人向けの話をしよう。

このレベルの大学を受ける人に必要なのは
「典型問題をきちんと網羅する」
「教科書の知識で初見の問題をやりくりする」
という能力だ。

用意するのは

数研出版「化学重要問題集」

か,


駿台文庫「化学頻出!スタンダード問題230選」

のどちらかが良い。
これらの問題集は典型問題を網羅に最適だ。
特に後者は,予備校講師選りすぐりの良問が掲載されているし,解説も懇切丁寧だ。

そして,もう一冊……「教科書」を使おう。

「えぇー!」と思った人もいるかもしれない。
化学の勉強で教科書を使っている受験生は非常に少ない。

理由は単純で,教科書は初学者には何が重要な話で何がそうでないのかが分かりづらく,扱いが難しいのだ。
だから,学校の先生や塾予備校の先生は,オリジナルのプリントを使って授業する人がとても多い。
僕もそうだ。
ただ,各先生が作るプリントは,大抵は教科書の中で入試問題を解く際に重要な箇所をまとめたものだ。
当然,まとめる際に教科書から削ぎ落される内容もあるのだ。

そこで,一度,学校や塾・予備校の先生の講義を受けた君たちは,もう一度教科書を読んでみて欲しい。
初学者のときは無味乾燥に見えた記述も,
一度講義を受けた君たちが読めば
「あのとき先生の説明してたやつだ!」
「へぇー!初めて知った!」
という内容がたくさんあるはずだ。
この「自分で読んで納得する」という経験が非常に重要だ。

よく,「問題集〇〇周やったけどできるようになりません!」
という人がいるが,よく理解しないままがむしゃらに何周やっても意味がない。

大事なことは,
問題の中身をよく理解して,
もう一度同じ問題が出たときに,
冷静に対処できるようにすることだ。

センター重視の人向け

最後に,センターでしか化学を使わないor志望大の出題がセンターレベルである人向けに。

現状でマーク模試で偏差値50を超えない人は
センター試験云々以前に根本的に理解不足なので,
「セミナー化学」「リードα」「ニューグローバル」
といった教科書傍用問題集や,


数研出版「リードライトノート」
といった標準的な問題集をきちんとやり込んでほしい。

もう少しレベルアップしたい人は,
過去問に取り組んで良い頃だろう。

「え?もう過去問?」という人もいるかもしれないが,
センター試験ほど過去問と同じ問題が出る試験は他にない。
少し調べれば分かることだが,
中和滴定の滴定曲線問題なんかは
毎年ほとんど同じことを聞かれる。
10年分も過去問を解き込んで,
「分からない内容は教科書で調べる」を繰り返せば,
十分得点力がつくだろう。

…で,終わりにしたいところなのだけど,
一つ落とし穴が。
それは

「気体」「溶液」「反応速度と化学平衡」「高分子化合物」

…といった旧課程【化学Ⅱ】に該当する単元は
過去問が現行課程になってからしかないのだ。
このあたりは大変悩ましいが,
次善の策として,
各予備校が出しているセンター対策問題集や,
マーク形式の私大で演習量を積むしかないだろう。

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枡見康平——Kohei MASUMI

首都圏の予備校・塾・学内予備校に出講中。

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化学の計算力

皆さんこんにちは。枡見(マスミ)です。

今回のテーマはズバリ「化学の計算力」。

化学の問題を解いていると,
小数の計算や分数の計算,指数,対数の計算をグチャグチャやらなければいけない場面にたくさん遭遇しますね。
これが世の化学嫌いを増やしている一因でもある気がするんですが,そうは言っても自然界は人間が計算しやすいように都合よく成り立っているわけでもないのでしかたない。

予備校で小テストの解答中の様子や答案を見ていると,
成績が振るわない人ほど計算が遅い。
そしてよく間違える。

もちろん全ての人に当てはまるわけではないけれど,
成績と計算スピードにはかなりの相関がある…

というのは
かなりの割合の指導者に頷いてもらえるんじゃないだろうか。

そこで,計算スピードに関わる話をいくつかの要素に切り取って書いていきたい。

● 計算の工夫と知識

計算が遅い人はなんでも力技で解決する傾向がある。

数学の話だけれど,例えば2次方程式の解の公式,
これを教わるときに

b’=b/2

とおいて計算する方法ありますよね。
これ,計算スピードを重視するならどう考えても使った方が速いわけですが,計算が遅い人はこういうのを使うのを嫌う。

あとは,
「知っている(覚えている)から速く解ける」ということも多い。

例えば,化学だと
気体定数8.3×103Pa・L/(K・mol)に
300Kをかけることが多いけれど,
これを

24.9×105 ≒ 25×105

と近似してしまえば計算が途端にラクになる…
なんて知識は,
スピード重視の私大医学部入試なんかではかなり活きるはずだ。(もちろん有効数字は気にしてくださいね。)

計算が遅くて悩んでいる人ほど,
こういったことを知らない…のではなく,
「知っているのに活用しない」ふしがある。

せっかく日々の授業やインターネット,参考書に色んな工夫や知識が転がっているんだから,普段の勉強からぜひ色々試してみてほしいのだ。

● 計算の容量(メモリ)

「計算ミスするくらいならゆっくり丁寧に計算しましょう」というのは,一見するとごもっともに見えるのだけど,
計算が遅い子を見ていると

「ゆっくり丁寧にと言っても限度があるよ!!」

という気持ちになることも多い。

そして,これは筆者の私見だけど,
計算が遅い人ほど計算ミスも多い。

例えば「1/2を小数に直せ」と言われたら,
さすがに暗算で0.5に直せるだろう。

では3/40ならどうか。
0.63/126ならばどうだ。
3860/96500ならどうだろう。

入試化学の計算に慣れている人なら全部暗算で出せるだろう。

3/40なら「3/4=0.75だから小数点1つずらして0.075だなぁ」とか,0.63/126なら「63/126で0.5だからこれも小数点2つずらして0.005だな」

と頭の中で考えればいいだけだ。

最後の3860/96500だけど,
こういう計算は化学ではファラデー定数が96500 C/molで与えられるのでよく出てくる。
これの暗算は,
先ほどの“知っている”から速くできるの応用技だ。

僕は19300/96500=1/5と“知っている”ので,
「1930/96500=1/50で3860/96500=2/50=0.04かぁ」
と計算できる。

もちろんこういったことは,
直接的には化学の理解とはあまり関係がないが,
頭の中で処理できる量が多いに越したことはない。

計算が遅い人はとにかく暗算ができない。
ゆっくり丁寧にやって答えが出れば良いと思っている。
そしていつまでたっても,
自分のゆっくりとしたやり方を変えようとしない。
そのわりに「計算が遅い」「解き終わらない」とこぼす。

違うのだ。

計算が速い人は努力しているのだ。
「これくらいの分量は暗算でいってみよう!」というチャレンジをしているのだ。

頭を使うようにチャレンジしなければ
頭の中の容量(メモリ)は広がらない。
そして,メモリが広がって計算に余裕が出てくれば,
その余裕を他の思考に充てられるのだ。
もちろん,チャレンジして,計算を間違えることもある。

でも,間違えたっていいじゃないか。
練習なんだから。
日々の勉強の目的は,頭の中をアップグレードさせることにあるのだから。

● 書くスピード

予備校で授業をやっていると,メモをとる,板書を写すのが他の人よりワンテンポ遅い人が必ずいる。

原因は色々あると思うが,
大雑把に分けると

「筆圧が強すぎる」
「字が大きすぎる」
「字が丁寧すぎる」

のいずれかが多い。
このうち,特に計算が遅い人は「字が丁寧すぎる」人とかなり重なるように思う。
書くスピードはそのまま計算スピードに直結する。

この「字が丁寧すぎる」というのは,
字が綺麗・汚いという話とは少し異なる。

とめ・はね・はらい…など,しっかり書きすぎなのだ。

「正しい字を書くこと」と
「読みやすい字を書くこと」は別なのだ。

例えば【化】という字の右下のはねなど無くても,
普通は【化】と認識できるものだ。

文字というのは意思疎通のためのツールなのだから,
丁寧に正しい字を書くことに集中しすぎている人は,
「通じるためなら“文字としての正しさ”などは二の次だ」くらいで丁度いい。(もちろん誤字はダメだが…。)

また,高校生でも稀に筆算するときにわざわざ定規を持ち出して線をひく人がいるが,
そこまでして綺麗に書きたいなら,
フリーハンドで真っすぐ線をひけるように練習するべきだ。
速く書けるようになりたいなら,
少しずつ自分の筆跡をカスタマイズして,
「速く書けて,読みやすい字」を追求していってほしい。

計算スピードは,頭の良し悪しではない。
楽をするために苦労して考えた末に身に着けられるものなのだ。

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過去問の使い方

皆さんこんにちは。枡見(マスミ)です。
冬期に向けて,毎年この時期になるといろんな受験生から聞かれます。

「そろそろ過去問やった方がいいですか?」
「過去問って新しいのからやった方がいいですか?古いのからやった方がいいですか?」
「赤本(教学社)と青本(駿台文庫)どっちがいいですか?」

本当によく聞かれます。
予備校なんかでも,
今まで一言も言葉を交わしたことのない受講生から突然,

「カコモンやったほうがイイッスか?」

って聞かれるもんだから,

「(お…おぅ…この子たしか普段一番後ろの方に座ってる子やん…名前なんだっけ?っていうか今まで質問とか来たことあったっけ…?)………まずは現状と志望校を教えてもらおうか!!!!(ついでに名前も!!)」

ってところから会話が始まったりするわけですよ。

正直なところ,過去問をやるべき時期なのか否かは人によって事情がずいぶん違ってくるので一概には言えません。
一般論としては,普段の講義を一通り復習して,問題集なりを一通り終えているなら,過去問に取り掛かってもよいでしょう。

ところで,これは他の学習についても言えることですが,
より重要なのは,
「何をやるか」ではなく「どうやるか」だと思います。
漠然と過去問演習に取り組み,

「過去問を解いてみた。あまりできなかった」
「思ってたよりできた!うれしい!」

と感想を並び立てても,あまり意味がありません。
そういうのは日記に書きましょうね。

で,やり方なんですけど,
「時間を計る」「採点する」「弱点を克服する」
は必ず実行しましょう。

● 時間を計る

試験時間は必ず事前に調べて,
時間内にどれくらい解き終わるのかを確認しましょう。
当たり前ですけど,入試には制限時間があります。
制限時間が60分の試験を2倍も3倍も時間をかけて満点とってもダメなんです。

制限時間の中でどこまで解けるのか。
時間が足りないなら原因は何か。
どの問題から解くと高得点を出しやすいのか。

そういったことを汲み取ってください。

● 採点する

各大学の過去問には小問ごとの配点の記載が無いケースがほとんどですが,自分である程度は配点を決めるか,信頼できる身近な先生に聞いてみましょう。
採点が終わったら,(公表している場合は)「合格最低点」と見比べてみてください。

自分が合格までにあと何点必要なのか,
足を引っ張っている科目・単元は何か…

を見極めてください。

● 弱点を克服する

これが一番重要なのですが,
失点した問題は必ず次に出たときに正答できるようにしてください。

「○○大の二段滴定の問題ができませんでした」

という人は,次回,

「△△大の過去問で,また二段滴定の問題ができませんでした…」

とならないように。
復習の際は,必ず教科書や参考書の力を借りましょう。
解説をざっと見て赤ペンで正解を写しても意味がありません。
その問題を解くために,
自分に不足していた部分を見極め,調べて,
想定され得る変化球(類題)を打ち返せるようになるかどうかが,合格の鍵なんです。

大問を解く順番を変えたり,
合格最低点との差が分かっても,学力自体は上がりません。
(逆に言えば,合格ラインを大幅に超えるパワーがあれば些末な戦略などいらないんです。)

地道に弱点を克服し,
“勝てる分野”を増やしていくのが,
合格への一番の近道なんじゃないでしょうか。

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モルの話③

こんにちは。枡見(マスミ)です。

今回で宿敵モルシリーズは最終回だ。

ボス戦ですよ?
準備はいいですか?
装備は整ってますか?
回復アイテムは大丈夫?
トイレは済ませましたか?

● モルの定義

まず初めに定義を確認しておこう。

『1molとは6.02×1023個のことである』

これについては「モルの話①」で説明した。
科学者は面倒臭がりだ。
12個のことを1ダースと呼ぶように,
6.02×1023個を「ろくてんぜろにかけるじゅーのにじゅーさんじょうこ」と呼ぶのが面倒くさいから,略して1molと呼ぶだけだ。
1molが6.02×1023個なのだから,
2molは12.04×1023個だし,
3molは18.06×1023個,
0.5molは3.01×1023個だ。

● アボガドロ数

さて,では6.02×1023個という数字はどこから出てきたのか…
という話だった。
これは,12Cがちょうどピッタリ12gになるときの個数なのだ。

確認してみよう。

12C 1個の質量は1.993×10-23gなので,電卓をピピッと弾くと,

1.993×10-23g/個 × 6.02×1023個 = 11.997g ≒ 12g

おお,ほぼピッタリだ。
(ちょっとずれたのは有効数字のせいだ。本当に12gピッタリのときの個数は6.02×1023よりも,もう少し多いのだ。)

もう一度書こう。
12C 6.02×1023個でちょうど12gである。
では35Cl (1個で5.808×10-23g)が6.02×1023個ではどうだろうか。
5.808×10-23g/個 × 6.02×1023個 = ……これを計算するのは面倒くさい。

ここで,相対質量の話を思い出してほしい。
12Cと35Clの質量比は

1.993×10-23g:5.808×10-23g=12:34.97

だった。
個数が同じなら質量比も変わらないはずだ。
したがって,
5.808×10-23g/個 × 6.02×1023個 をわざわざゴリゴリ計算しなくても,
なんと34.97gと出てしまう。これは楽チン。

12C 35Cl
相対質量 12 34.97
1個あたりの質量 1.993×10-23g 5.808×10-23g
6.02×1023個あたりの質量 1.993×6.02g 5.808×6.02g
1molあたりの質量 12g 34.97g

相対質量12の12Cが6.02×1023個で12gならば,
相対質量34.97の35Clが6.02×1023個で34.97gだ。
相対質量の和が18のH2Oが6.02×1023個なら18gだし,
相対質量の和が100のCaCO3は6.02×1023個で100gだ。

さらに化学者は面倒くさがりなので
「6.02×1023個」のことを略して「1mol」と呼ぶことにした。
「6.02×1023」という数値をアボガドロ数といい,
「6.02×1023/mol」をアボガドロ定数という。

かくして,
「1個1.993×10-23gの炭素原子が6.02×1023個で12g」を
「相対質量12の炭素原子が1molで12g」と言い換えることに成功した。

少しだけ気をつけてほしいのは,
相対質量や化学式量は,
それ自体はただの数値である無単位数だ。
実際に計算するときは「1molで相対質量gですよ」という意味を込めて単位に(g/mol)をつける。
相対質量に(g/mol)を付けたものをモル質量と呼ぶ。

ここまでの話を理解していればもうモルについては大丈夫だろう。少し例題をやってみよう。

解説は以下の通り。

※ ちなみに,アボガドロ定数の決定に際して,アボガドロ自身は歴史的には何も関与していない。アボガドロ定数を実験的に求める試みに取り組んだのは,オーストリアのロシュミットやフランスのペラン等である。特にペランは高校化学の教科書には登場しないけれど,ブラウン運動から原子の粒子性を示すのに多大な貢献をした科学者である。

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モルの話②

こんにちは。枡見(マスミ)です。

今回も宿敵「モル」の話をしよう。
どうでもいいけど「mol」という単位は御存知,分子を意味する「molecule」から来ている。
moleculeはラテン語の「mole(塊)」「cula(小さい)」に由来する。
最初にこの単位を使いだしたのは「オストワルト法」でおなじみ,ヴィルヘルム・オストヴァルトだ。

● 原子量

前回「モルの話①」で新しい質量の基準,
相対質量について説明した。

しかし,それだけでは実際の物質の質量を扱うには不十分だ。
なぜなら,実際には同じ種類の元素であっても,
原子には複数の同位体が含まれるからだ。

例えば,塩素には35Clと37Clの2種類が天然に存在する。
同位体は化学的性質がほとんど等しいので,これらを選り分けるのは容易でない。
なので,実際の実験などで「35Clだけを使う」「37Clだけを使う」なんてのは現実的でないわけだ。
そこで,実際には複数の同位体が混ざった状態で操作を行うわけだから,それらの質量の平均値が必要になる。

塩素の場合,35Cl(相対質量34.97)が75.8%,37Cl(相対質量36.97)が24.2%の割合で存在するため,
相対質量の平均値は以下のように計算される。

M=34.97×0.758+36.97×0.242
M=35.454

この値を塩素の原子量という。原子量とは『各同位体の相対質量の平均値』であるということを,肝に銘じておこう。

ちなみに入試では原子量をいちいち相対質量の平均値から計算するのは面倒&面倒なので,普通は問題文で与えられているぞい!

● 分子量と式量

さて,次に分子量と式量について説明しよう。

分子量も式量も,「化学式中の原子の原子量の総和」を表す。
例えば,H2Oなら,原子量はH=1.0とO=16であるから,次のように計算される。

M=1.0×2+16=18

また,NaOHなら,H=1.0,O=16,Na=23として,

M=23+16+1.0=40

Al2(SO4)3の場合はO=16,Al=27,S=32として,

M=27×2+(32+16×4)×3=342

また,イオンの場合も,電子の質量は非常に小さく全体の質量に寄与しないので無視してしまってよい。
したがって,Ca2+の場合はCaの原子量40をそのまま相対質量とする。

一般に分子式中の原子量の総和を表す場合は分子量と呼び,
それ以外の化学式(組成式やイオン式など)に対しては式量という言葉を用いる。
これは,分子量は実在する分子の相対質量を表すのに対し,
組成式等で表される物質は明確な構成単位が決められないため,
便宜的に任意の単位(通常は最も簡単な整数比で表される部分=組成式)に相当する相対質量を表現する必要があるからだ。

したがって,H2Oに対する原子量の総和は「分子量」と呼ぶが,
NaOHに対する原子量の総和は「式量」と呼ぶのだ。
ちなみに分子量も式量も,
化学式中に含まれる原子量の総和を表すので,
これらをひっくるめて「化学式量」と呼んだりする。

よし。やっと準備が整ったぞ。次回はいよいよモルの登場だ。

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枡見康平——Kohei MASUMI

首都圏の予備校・塾・学内予備校に出講中。

講義ではテキトーそうな雰囲気を醸し出しつつ,「なぜそうなるのか?」を一つ一つ丁寧に積み上げる。ごく稀に化学愛をぶちまける。科学史と甘いものとネコが好き。